2026年サッカー・ワールドカップ北中米大会が、いよいよ6月11日に開幕します。このサッカーの祭典が近づくにつれ、ファンの熱狂が高まるだけでなく、世界的なユニフォームの売上も爆発的な増加を見せています。しかし、これは偽造業者にも付け入る隙を与えており、中国や東南アジアで生産された大量の偽造ユニフォームが世界各地の市場に出回り始めています。先日、フランスの『ル・フィガロ』紙は、フランス税関がパリ近郊で約2300着の偽造ユニフォームを押収したと報じました。しかし、これは巨大な地下偽造産業ネットワークの氷山の一角に過ぎません。大規模なスポーツイベントを取り巻く模倣品市場は、かつてないほど巧妙になり、水面下で拡大を続けています。
現在の偽造ユニフォームのサプライチェーンは、初期の低品質なプリントが行われていた時代から進化を遂げており、極めて効率的な仕組みとなっています。偽造業者は公式スポンサーが新デザインを発表した直後、あるいはリーク画像が出回ったわずか数日後には、3Dモデリングから生地の模倣、大量生産までの全工程を完了させてしまいます。偽造技術は日々精巧になっており、多くの模倣品は本物と見分けがつかないレベルに達しています。本物か偽物かは、内側の洗濯表示タグや特定箇所の縫い目の密度といった非常に細かい仕様の差を見て判断するしかありません。
各国税関の厳しい検査に対し、偽造グループの物流手段もさらに巧妙化しています。今回フランス税関が押収した数千着の服を積んだコンテナは、それだけでも相当な量ですが、より多くの偽物は、少量の荷物に小分けして郵送する小口ルートを通じてヨーロッパ市場に行き渡っています。偽造業者は海外向けのネット通販方法を行っている販売側が在庫を持たず、注文が入ってから仕入先が直接、顧客に商品を送るドロップシッピングの手法を利用し、単品のユニフォームを「個人的な贈り物」や「ノーブランドの古着」として虚偽の申告を行います。小包はサイズが小さく、申告価格も現地の免税範囲を下回ることが多いため、膨大な数の国際小包を前に税関職員の対応が追いつかず、全面的な開封検査を行うのは困難な状況にあります。
また、販売の最前線でも、偽造ユニフォームのマーケティング手法に変化が見られています。偽造業者はTikTokやInstagramなどのSNSを大々的に利用して顧客を誘導しています。インフルエンサーを起用し、安価な類似品「Dupe」と呼ばれるユニフォームのレビュー動画を配信させるのです。そして、トレンドを追いたいという若いファンの心理に付け込み、瞬く間にヒット商品を生み出します。公式プラットフォーム側による摘発を逃れるため、こうした取引にはしばしば隠語が使われます。売り手はSNS上で商品の画像一覧を掲載し、外部の暗号化チャットアプリに消費者を誘導して交渉を行います。最後に、金属部品や無地Tシャツを販売しているように見せかけたダミーのリンクを送信し、そこで支払いをさせます。取引の全過程は、外からは見えにくい形で進められているのです。
このような不透明なサプライチェーンがこれほどまでに蔓延する根本的な理由は、驚異的な利益率と正規品との大きな価格差にあります。偽造ユニフォームの価格は、多くの場合、正規品のわずか10分の1程度です。例えば、模倣品の販売価格が約12ユーロであるのに対し、同じモデルの正規品は約110ユーロにもなります。フランスのスポーツ・自転車企業連合(UNION Sport et Cycles)の代表であるヴィルジル・カイエ氏は、模倣品がこれほど低価格を維持できるのは、正規品が負担せざるを得ない巨額の隠れたコストを生産者が完全に回避しているからだと指摘しています。これには、高額な付加価値税、大会やクラブへのライセンス料、グローバルなブランドマーケティング、正規販売ルートの維持費などが含まれます。
これらの出所不明な偽造ユニフォームは、深刻な知的財産権の侵害や市場秩序の混乱を引き起こします。更に、無視できない健康上のリスクもはらんでいます。生産工程の大部分が規制の目が届かない場所で行われているため、フランス税関・(DGDDI)間接税総局の幹部も強い警告を発しています。同局によれば、これらの製品の生産プロセスは極めて不透明です。粗悪な染料に含まれる基準値超えの化学物質や、厳格な安全性テストを経ていない生地や縫い糸が使用されている可能性があり、その成分が国際的な健康・安全基準を満たしているか確認することは不可能です。消費者が素肌に直接着用すれば、皮膚アレルギーなどの健康問題を引き起こす危険性が非常に高いと指摘されています。
アメリカ、メキシコ、カナダが共同開催する今大会のワールドカップは、7月19日まで続きます。過去の大会と比較して今大会はかつてない規模となりました。出場チームは初めて32カ国から48カ国に拡大され、総試合数も64試合から104試合へと激増します。この歴史的な観戦ブームの影響により、世界的なユニフォーム需要がさらに高まることは、容易に想像できます。。偽造業者の日々進化する生産技術、小口化された物流戦略、そして巧妙なSNSでのマーケティング。今後、絶えず進化するこの不正なサプライチェーンにどのように対処していくかが、大会関連市場や規制当局が直面する大きな課題となっています。
(翻訳・吉原木子)
