中国の陝西省西安市に住む沈さんは13年前、完成前に販売される未完成物件の販売、いわゆるプレビルド方式でマンションの部屋を購入しました。契約書には、購入した物件が34階にあると明記されていました。しかし、引き渡しの通知を受けて現地へ確認に行くと、建物は32階までしか建てられておらず、彼が購入したはずの34階部分はそもそも存在していませんでした。この信じがたい出来事をきっかけに、沈さんは長きにわたる苦難の交渉を強いられることになり、今日に至るまで適切な解決には至っていません。

 現地メディアの報道によると、沈さんは陝西省宝鶏市の出身です。2013年2月、彼は親戚を通じて、西安市内の古い住宅街を再開発するプロジェクトが進行中で、マンションが建設中であることを知りました。現地を視察した際、開発業者の担当者は「現時点では開発に必要な認可が全て揃っているわけではないが、後で必ず取得し、不動産の権利書も問題なく発行される」と約束したといいます。この言葉を信じ、沈さんは同年2月5日に不動産売買契約を結びました。

 契約書によると、沈さんが選んだ物件は「12棟Bユニット34階3401号室」で、面積は88.92平方メートル、総額は約23万5000元(当時のレートで約350万円)でした。頭金とその後の代金を支払った沈さんは、見晴らしの良い高層階の住まいに引っ越す日を心待ちにしていました。

 本来であれば2015年5月までに引き渡される予定でしたが、工事は一向に進まず、完成時期は大幅に遅れました。2017年の夏になってようやく、開発業者から「建物の骨組みが完成したので、残金を支払ってほしい」と電話が入ります。沈さんは、鍵の引き渡し時に一括で支払うと伝えました。数カ月後、ついに引き渡しの連絡が来ましたが、そこで受け入れがたい事実が判明したのです。その建物は最終的に32階までしか建設されておらず、彼が購入した3401号室は幻となっていました。

 途方に暮れた沈さんは、やむを得ず返金を申請しました。何度も交渉を重ねた結果、開発業者は2020年と2022年にそれぞれ2万元と5万元を返金しましたが、その後は一切電話に出なくなり、音信不通になってしまいました。沈さんは西安市の仲裁委員会に訴え出ます。仲裁委員会は開発業者に対し、残りの約7万4000元の返金を命じたものの、この金額や違約金は現在に至るまで支払われていません。その後、裁判所にも強制執行を申し立てましたが、開発業者名義の預金や不動産、車両といった差し押さえ可能な財産が全く残っていないことが判明し、最終的に手続きは打ち切られる結果となりました。

 沈さんのこの目を疑うような体験は、インターネット上で大きな話題になりました。多くの人が監督当局のチェック体制に疑問の声を上げ、「事前の建築計画では34階建てとして申請されていたのに、完成時に突然2階分減っているのは、審査や検査の過程がずさんだと言わざるを得ない」と指摘しています。また、「購入者が支払った資金は一体どこへ消えてしまったのか」と鋭く追及する声も上がっています。

 実は、沈さんのようなケースは、これまでの西安市、ひいては中国全土の不動産市場において決して珍しいことではありません。上の階が消えてしまうというトラブル以上に深刻で悲惨なのが、生涯の蓄えを使い果たした挙句、結局「建設が途中で放棄された未完成マンション」しか手に入らなかった購入者たちの存在です。

 数年前から、西安市などの一部の不動産プロジェクトでは、開発業者の資金繰りの悪化や資金の不正流用などにより、長期にわたって建設がストップする事態が相次ぎました。多くの一般家庭にとって、家を買うことは家族何世代にもわたる貯蓄を全て注ぎ込むことを意味します。マンションが未完成のまま放置された場合、購入者は銀行への高額な住宅ローンを毎月返済し続けなければならないだけでなく、現在の住まいの家賃も二重に負担しなければなりません。こうした経済的な重圧から、多くの購入者が苦渋の決断を迫られました。それは、内装が全く施されていない、コンクリートむき出しの部屋に住み込むという選択でした。

 中国メディアの過去の現地取材によると、西安市内にある複数の未完成マンションでは、数百世帯の購入者が集団で建設現場に移り住むという異様な光景が実際に広がっていました。そこには生活インフラが全くありません。水道も電気も通っておらず、エレベーターも動きません。中には窓ガラスすら取り付けられていない部屋もありました。

 購入者たちは、むき出しの鉄筋コンクリートの中で過酷なサバイバル生活を送っていました。最低限の明かりを確保するため、ソーラーパネルとバッテリーが生活の必需品となります。飲み水を得るために、高齢者や仕事終わりの若者たちが重い水バケツを提げ、自力で十数階、時には二、三十階もの階段を上らなければなりませんでした。ベッドがないため床に数枚の板を敷き、キッチンがないため落ちているレンガを拾い集めて簡易的なかまどを作りました。厳しい冬の時期には、窓ガラスがないため冷たい風が部屋に直接吹き込み、家族全員が分厚い布団にくるまって寒さを凌ぐしかありませんでした。

 幻となった沈さんの34階の部屋も、未完成マンションの購入者たちが暮らす水も電気もないコンクリートの部屋も、その根底にあるのは「安心して平穏に暮らしたい」という庶民のささやかな願いが、現実によって無残に打ち砕かれた悲しみです。これらは単なる個人の不運ではなく、マンション販売における資金管理のあり方の脆さを浮き彫りにしています。住宅購入者の基本的な生活をどのように保障し、過去の負の遺産をどう解決していくのか。中国の不動産市場が抱える深い闇と課題の重さを、今もなお静かに物語っています。

(翻訳・吉原木子)