5月中旬、中国の主要な果物産地の一つである福建省漳州市で、果実を甘味料や防腐剤に浸す業界の悪習が発覚し、社会に衝撃を与えました。食の安全を根本から揺るがす事態に地元市場は瞬く間に崩壊し、農家は甚大な被害を受けています。当局は関係者の拘束や役人の処分などの措置を講じましたが、失われた消費者の信頼は回復せず、ネット上には「もう二度と食べない」との声が殺到しています。

 5月15日の中国メディアの報道によると、記者が十数か所の買取拠点を潜入取材したところ、色鮮やかな果実の裏側に目を疑う加工の実態が隠されていました。今回問題となったのはヤマモモです。傷みやすく、早生品種は酸味が強いため、薬液に浸す行為は地元の業者の間で以前から常態化していたといいます。ある拠点では、作業員がカゴいっぱいの果実を薬液に直接浸して箱詰めしていましたが、衛生面の対策や分量の管理は一切なく、甘味料の投入も完全に目分量で行われていました。

 関係者によると、薬液には主に2つの物質が添加されていたといいます。鮮度保持のための防腐剤(デヒドロ酢酸ナトリウム)と、「ショ糖の8000倍の甘さ」と表記された複合甘味料です。注目すべきは、この甘味料には成分表示や製造年月日が一切なく、出所不明の違法製品であったことです。ある業者が「酸っぱさが消えて見た目も良くなる。みんなやっている」と語る一方、作業員は「健康被害が怖いから自分たちでは絶対に食べない」と打ち明けました。専門家は、こうした甘味料にはサッカリンナトリウムなどが基準値を超えて含まれる可能性があり、長期摂取による神経系の不調や、重症化すれば肝臓や腎臓への慢性的な損傷を引き起こす恐れがあると警告しています。

 調査の結果、潜入した十数か所の買取拠点すべてで違法行為が存在していました。毎日少なくとも500キロ、最盛期には2.5トンを超える「薬漬けの果実」が出荷され、冷蔵輸送で上海や広東などの卸売市場へ流れ込んでいました。事件発覚後、各地で当該産地の果実は店頭から撤去され価格が暴落。ネット上には、収穫されず枝で腐るがままの果実の動画が出回り、多くの農家がトラックごと廃棄したり家畜の餌にしたりと、為す術のない状況に追い込まれました。

 社会的な批判の高まりを受け、当局も介入に乗り出しました。5月20日夜、地元当局は違法な買取拠点5か所を摘発し、問題の果実225キロと違法添加物を押収して廃棄したほか、5人を拘束したと発表しました。同時に、問題の果実540キロを回収し、最近の検査ではすべて基準を満たしていたと強調しています。続いて24日深夜には、農業や市場監督部門の幹部23人を「監督不十分」として処分しました。

 しかし、当局の対応は世間の怒りを鎮めるどころか、より広範な疑念を招きました。一つは数字上の大きな矛盾です。ネット上では「毎日500キロ以上出荷されていたのに、回収が540キロとは少なすぎる。すでに大量の薬漬け果実が消費者の胃袋に収まった証拠だ」「日常の監督業務はどうなっていたのか」と疑問の声が上がりました。もう一つは処分の甘さに対する不満です。「形だけの処分で中身がない」「ほとぼりが冷めればまた繰り返される」と冷ややかな見方が広がっています。

 利益を追求するあまり消費者の健康を顧みない行為は、一つの産業を破壊しただけでなく、社会のモラル崩壊に対する懸念を呼び起こしています。海外在住の中国人活動家はSNSで、伝統的な果実酒の素晴らしさを振り返りつつ「現在は利益のために人命を危険に晒す行為であり、モラル低下が深刻だ」と嘆きました。海外のソーシャルメディアでも、これは社会の倫理観崩壊と、政府の管理機能がシステム的に機能不全に陥った結果であると厳しく指摘されています。

 懸念すべきは、食の安全に対する危機が一つの果物にとどまらず、他の農産物へと蔓延していることです。今回の騒動が収まらないうちに、福建省の他の農産物でも過剰な化学添加物の使用が相次いで発覚しています。最近、現地のテレビ局が報じた潜入取材では、硬い桃を販売する前に甘味料で浸漬処理を行っている実態が明らかになりました。その分量は手の感覚頼りで、ある業者は「基本どの店もやっている。体に悪いが、甘味料は安価で白砂糖の何倍も甘くなりコストが下がる」と明かしました。化学薬品に浸された桃は、その後堂々と果物店や夜市の屋台へと流れていくのです。

 果物だけでなく、お茶でさえもはや安全ではないという声もあります。ある人物が登山途中に茶畑を通りかかった際、茶の木の下に「茶葉の芽吹きや発育を促す薬品」と書かれた農薬のボトルが山積みになっている様子を動画で撮影してネットに投稿し、見る者に衝撃を与えました。

 「あらゆるものが薬に浸され、誰も安心して食べられない。自分たちでさえ食べるのが怖いものを他人に売るなど、良心はどこにあるのか」。ソーシャルメディア上には、消費者の無力感と怒りに満ちたコメントが溢れています。次々と発覚する食品安全の不祥事は、利益至上主義に駆られた一部の事業者の倫理観の欠如と、監督体制の深刻な機能不全を映し出しています。「食事の量を減らすか、断食をするか。高度に加工された食品を避けてこそ健康に生きられる」。多くのネットユーザーからは、そんな諦め交じりの声すら漏れています。

(翻訳・吉原木子)