今年5月中旬以降、中国各地では正反対とも言える二つの極端な気象災害が同時に発生しています。北部から中東部では記録的な豪雨が続く一方、江南地域の中南部や華南では猛烈な暑さが広がっています。片方では洪水が命を奪い、もう片方では猛暑に見舞われています。数億人もの一般国民が自然災害の狭間で厳しい生活を強いられています。

 5月中旬以降、中国本土の平均降水量は平年同期を46%も上回りました。5月下旬には今年の雨季入り以降で最も強い広域豪雨に見舞われ、湖北省、安徽省、重慶市、貴州省、江西省などで大雨が相次ぎ、一部では記録的な豪雨となりました。現在までに、山津波や土石流、河川への転落などにより31人が死亡し、さらに少なくとも31人が行方不明となっていることが公式に確認されています。

 湖北省恩施(おんし)市、湖南省常徳市、重慶市永川区などの豪雨被害地域では、1日の降水量が300ミリから500ミリ近くに達しました。各地のダムや貯水池では水位が急上昇し、事前通知のないまま緊急放流が行われるケースも相次ぎました。多くの1階住民や通りに面した店舗の経営者は、深夜や未明に眠っている間に洪水が室内へ流れ込み、家具や商品が泥水に浸かる様子を見守ることしかできませんでした。通信は途絶え、水道や電気も止まりました。

 重慶市永川区では、大橋村と安渓村が土石流や山崩れに襲われました。これまでに9人の死亡と11人の行方不明が確認されており、その多くは移動が困難な高齢者でした。奇跡的に生き延びた地元の高齢者は次のように語っています。「こんな大洪水は1962年以来だと思う。しかし当時は普通の洪水だった。今回のように山全体が崩れ、地域全体に土石流が襲いかかるような恐ろしい光景は見たことがない」

 被害が最も深刻だった時期には、救助活動の現場で信じがたい出来事も起きました。5月28日、河南省の藍天救援隊は厳しい表現の内部通達を発表し、一部の地方支隊による「独断での救援活動」を公然と批判しました。その理由は、これらの支隊が「本部への事前報告や承認を得ずに被災地へ向かった」というものでした。
この情報はネット上で急速に拡散し、大きな議論を呼びました。多くのネットユーザーは怒りをあらわにし、こう問いかけました。「人命救助は一刻を争うものではないのか。洪水の中で人が助けを待っているのに、責任者の出勤や承認印、手続きが終わるまで待たなければならないのか」

 外部の分析では、この出来事の背景には当局による民間の自主的な活動への強い警戒感があると指摘されています。鄭州市で発生した「7・20水害」以降、地方政府が最も恐れているのは、民間の救助隊が独自に被災地へ入り込み、SNSを通じて実際の被害状況を発信することだとされています。その結果、現場には次々と圧力が伝えられ、最終的には最前線で活動するボランティアたちの行動を縛る形となっています。

 洪水が奪うのは命だけではありません。多くの人々の生計も一緒に流されていきます。5月下旬は南部地域で夏の収穫や田植えが行われる重要な時期ですが、収穫直前の麦畑や植えたばかりの苗が広範囲にわたって冠水しました。SNSには涙ながらに被害を訴える農民の動画が数多く投稿されています。彼らにとって失われたのは数か月の努力だけではありません。一家の一年分の生活費そのものが水の泡となったのです。

 この数日、湖北省の府河で発生した「アヒル大流出」がティックトックや快手で大きな話題となりました。5月26日夜から27日にかけて、湖北省上流の貯水池が豪雨のため緊急放流を実施し、府河の水位は数時間で数メートルも上昇しました。養殖業者の黄さんは胸を痛めながらこう語っています。「普通の洪水なら一晩で1~2メートル程度しか水位は上がらないので、アヒルを岸へ追い上げる時間がある。でも今回は水の勢いがあまりにも速すぎて、とても間に合わなかった」

 黄さんは武漢市東西湖区で3万羽のマガモを飼育していました。本来ならあと5~6日で出荷予定で、買い取り業者との手配も終わっていました。しかし洪水によって飼育施設は完全に流されました。黄さんは多くの市民とともに川沿いを捜索しましたが、2日間で回収できたのは2000羽余りだけでした。1万羽以上は今も行方が分かっていません。ネットユーザーは「アヒル農家の後ろ姿を見ると、自然の力の前で無力な庶民の姿そのものだ」と嘆いました。

 一方で、中東部の豪雨と鮮やかな対照をなしているのが、江南中南部や華南を襲う今年最大規模の猛暑です。広東省、広西チワン族自治区、海南省、湖南省、江西省などでは気温が35度を超えました。湿度も非常に高いため、体感温度は実際の気温を大幅に上回っています。広州市や湖南省衡陽市では体感温度が一時45度から47度に達し、東莞市では路面温度が61度に達したとの測定結果も報告されました。住民からは、「道路の上で卵が焼ける」という声も上がっています。5月27日には福州市で気温36.7度、湿度60%を記録し、体感温度は50度に達しました。

 異常な暑さによって電力需要も爆発的に増加しています。広東省、広西チワン族自治区、雲南省、貴州省、海南省を管轄する南方電網の電力負荷は2億7200万キロワットを突破し、連日過去最高を更新しています。例年より1か月以上早い段階でピークを更新したことになります。広東省や広西チワン族自治区のネットユーザーは「外を歩けば、まるで巨大なかまどの中にいるようだ。吸い込む空気まで熱い」と嘆きました。

 体感温度が50度近くに達しても、フードデリバリー配達員、宅配員、建設作業員、清掃員たちは仕事を休むことができません。熱中症や命に関わる重度の熱射病の危険と隣り合わせの状態が続いています。多くの人が、「エアコンの室外機の下で生計を立てている」と語ります。

 今回の猛暑で特に苦しいのは、夜になっても体感温度が30度前後から下がらないことです。まるで24時間営業の巨大サウナのような状態が続いています。都市部の低所得層や高齢者にとって、エアコンをつけなければ暑さで眠れず、つけると電気代が重くのしかかります。この板挟みこそが猛暑下で最も身近な苦しみとなっています。

 異常気象の広がりは今も続いています。5月31日には黒竜江省ハルビン市で珍しい大規模な砂嵐が発生しました。現地のネットユーザーは、「高さ100メートル級の黒い砂の壁が押し寄せ、わずか2分で住宅街全体を飲み込んだ」と投稿しています。最大瞬間風速は12級に達し、木々が折れ、屋根瓦が飛ばされ、交通も麻痺しました。同じ日には吉林省白城市で乳房雲が観測され、雷雨や突風、雹も発生しました。

 6月1日には内モンゴル自治区の根河市や黒竜江省大興安嶺地区で、初夏なのに雪が降り、積雪は3センチから5センチに達しています。大興安嶺の住民はSNSで「6月1日に雪が降った。植えた野菜が全部だめになった」と投稿しました。また別のネットユーザーは、「今年の天気は何かおかしい。本当に大変な一年だ」と書き込んでいます。

 豪雨、猛暑、砂嵐、ひょう、そして6月の雪。この初夏、中国各地の人々はそれぞれ異なる形で、同じ異常気象がもたらす重い代償を背負わされているのです。

(翻訳・藍彧)