先日、遼寧省大連市にある駐車場で発生した火災が、社会の大きな注目を集めました。5月30日、インターネット上で広く拡散された動画には、駐車場内で激しい炎が上がり、車両が極めて密集して駐車されていたため、短時間で次々と車に引火し、最終的に黒焦げの骨組みだけが焼け残った凄惨な光景が記録されていました。
消防当局および遼寧省警察のその後の発表により、この悲惨な火災の信じ難い原因が明らかになりました。現場は大連市甘井子区の駐車場で、そこには某ブランドのEV自動車(新エネルギー車)などが多数停められていました。
警察の調べによりますと、74歳の男性が、ウォーキングの邪魔になるとして、道路や階段に積もっていたポプラの綿毛にライターで火をつけたのです。しかし、男性の予想に反して当日は風が強く、さらに綿毛自体が非常にふんわりとした立体的な多孔質構造で大量の空気を含んでいたため、酸素と接触して激しく燃え広がりました。綿毛は火気に触れると一瞬で燃え上がり、恐るべき速さで延焼しただけでなく、炎の温度は一気に900℃以上にまで達しました。制御不能となった火の手は隣接する駐車場に瞬く間に回り、最終的に20台の自動車が灰燼に帰しました。現在、火をつけた男性は失火の疑いで、警察に身柄を拘束されています。
このニュースを受け、多くのネットユーザーの心に一つの疑問が浮かびました。いくら綿毛の燃焼温度が高いとはいえ、なぜこれほど短時間で20台もの自動車を全て黒焦げの骨組みにしてしまったのでしょうか。それには、被害に遭った車両が「EV自動車」であったことが大きく関わっています。
通常のガソリン車であれば、外部からの大火に直面しても、これほど短時間で全焼することは珍しいでしょう。しかし、EVの心臓部である駆動用バッテリーは、900℃の高温で炙られれば、まさに「火を点ければ爆発する火薬庫」と化します。実際のところ、駆動用バッテリーの「熱暴走」は、EV火災における世界的な難題となっています。消防の専門家は、従来のガソリン車と比較して、EVのバッテリー火災には「発火が極めて早い」「温度が極めて高い」「消火が極めて困難」という3つの致命的な特徴があると指摘しています。
リチウムイオンバッテリーが熱暴走を起こすと、発煙から車両全体が激しく燃え上がるまで、わずか数十秒しかかからないことも珍しくなく、内部の温度は瞬時に1000℃を突破します。さらに恐ろしいのは、激しい化学反応によって、酸素や水素、メタンなどの可燃性有毒ガスが自ら放出されることです。これはつまり、バッテリーが事実上「自前の燃料と助燃剤」を持って燃焼していることを意味します。空気を遮断する従来の「窒息法」による消火はほぼ無効であり、外部の炎を一時的に鎮圧できたとしても、バッテリー内部の反応が止まらず温度が下がっていない限り、いつでも激しい再燃が起こり得ります。そのため、この種の火災に対処する際、消防隊員は通常のガソリン車火災の数十倍もの大量の水を使い、数時間、場合によっては十数時間にもわたって車両の床下に放水し続け、冷却しなければなりません。これこそが、短時間で20台もの車が完全に燃え上がり、骨組みだけになってしまった最大の理由です。
今回の大連での火災は、単なる想定外の事故にとどまらず、EVの安全性に対する人々の潜在的な不安を再び浮き彫りにしました。特に憂慮すべきは、今回のように外部からのもらい火に晒されるケースだけでなく、日常の走行における激しい衝突や床下への衝撃が、バッテリーの熱暴走を引き起こす「ハイリスクな要因」になり得るという点です。駆動用バッテリーの多くは車両の床下に平らに敷き詰められているため、深刻な交通事故に遭い、バッテリー構造が押し潰されてセルが損傷すると、わずか数秒で内部ショートを引き起こし、大惨事につながる危険性が極めて高いのです。例えば、2024年4月に中国のネット上で大きな注目を集めた山西省運城市での「問界(AITO)M7」の追突事故では、高速道路で前方の路面清掃車、散水車に追突した後、配線が切断され、車両は瞬く間に炎上しました。さらにドアのロック解除も機能せず、最終的に乗員3名が命を落とすという悲劇となりました。
今日の自動車がますます先進的なディスプレイを備え、高度な自動運転へと進化を遂げていることに人々が驚嘆する一方で、この連鎖的な悲劇は、一握りの綿毛から始まったという一つの問いが残ります。火はいつか消え、黒焦げになった20台の新車も片付けられるでしょう。しかし、突如として襲い来る猛火や衝突の際、乗員が無事にドアを開け、脱出するための「数十秒間」をいかに確保するか。それこそが、テクノロジーがもたらすべき真の「究極のラグジュアリー」なのかもしれません。
(翻訳・吉原木子)
