2026年3月、カナダ・トロントのフォーシーズンズ・センター・フォー・ザ・パフォーミング・アーツで、神韻(シェンユン)の公演に爆破予告が出され、ほぼ満席に近かった公演が急きょ中止に追い込まれました。一方、昨年11月には、海を隔てた上海で、日本の歌姫・浜崎あゆみも「不可抗力」による公演中止という、あまりにもやるせない事態を経験しています。まったく無関係に見える二つの華やかな舞台が、なぜ同じ時期に似たような運命をたどったのでしょうか。
2026年3月29日午後、カナダ・トロント中心部のフォーシーズンズ・センター・フォー・ザ・パフォーミング・アーツでは、本来であれば、ほぼ完売に近い神韻芸術団の公演が行われるはずでした。ところが、開演を目前にして、劇場内に爆弾が仕掛けられているとする脅迫メールが突然届き、会場には警報が鳴り響き、観客は緊急避難を余儀なくされました。建物全体も封鎖され、最終的に安全面を考慮して、公演は中止となりました。1000人を超える観客が、驚きと落胆の中で会場を後にしたのです。これは、神韻の2026年カナダ巡回公演において、安全上の脅威によって全面中止となった初めての公演でした。
その後、トロント警察が現場に駆けつけて捜査を行い、初期調査の結果、この脅迫は「まったく根拠のないもの」だったことが分かりました。明らかに、意図的に混乱と恐怖を引き起こし、公演を妨害しようとした悪質な行為だったのです。トロント法輪大法協会の報道官ジョエル・チプカーはこれに対し、当日の観客の中には数時間かけて車で来た人も多く、中にはオーストラリアからわざわざトロントまで飛んできた夫婦までいたと語りました。こうした卑劣な脅迫の狙いは、劇場側に圧力をかけることで、中国の伝統文化を伝えるこの公演を黙らせ、舞台から消し去ろうとする点にあったのです。
こうした人気公演を狙った「強制的な中断」は、今回だけの例ではありません。振り返れば、昨年11月末に日本のポップス界の歌姫・浜崎あゆみが上海で経験した出来事も、同じように息苦しい圧力を感じさせるものでした。
当時、上海東方体育センターには、待ちわびていた14000人のファンが集まるはずでした。ところが開演直前になって、主催者側はあいまいな「不可抗力」を理由に、突如として公演中止を発表したのです。自然災害が起きたわけでもなく、公共の安全を脅かす事故があったわけでもないのに、ステージは突然止められました。
外部に強い衝撃を与えたのが、その後の浜崎あゆみの姿でした。誰もいない劇場で、冷たく並ぶ空席を前にしながらも、彼女は華やかな衣装に身を包み、たった一人で最後まで全曲を歌い切ったのです。これはファンへの慰めであると同時に、権力が芸術に介入することへの、静かで力強い抵抗でもありました。
一見すると背景が異なるこの二つの公演中止事件ですが、実はその背後には、驚くほどよく似た構図が浮かび上がっています。まず共通しているのは、世界的に非常に高い知名度を持つ神韻芸術団も、アジアで圧倒的な存在感を持つポップスターの浜崎あゆみも、卓越した芸術性を備え、世界中に多くの観客とファンを抱えているということです。
さらに、どちらもチケットがすでに完売し、多くの人が心待ちにしていたその瞬間に、突然中断へと追い込まれました。それは観客にとっても、劇場にとっても、そして主催側にとっても、非常に大きな痛手となりました。何より核心にある共通点は、こうした「突発的な中止」の背後に、中国共産党(中共)政権の影が見えてくることです。上海では、日本文化に対する中共当局の「日本制限令」と、政治的な萎縮効果が働いていました。トロントでは、中共が自らの弾圧の手法を、海外の自由社会にまで持ち込んでいたのです。
神韻芸術団が中共にとって目の上のたんこぶとなっているのは、その特別な成り立ちと使命にあります。神韻は2006年、ニューヨークで、法輪功を修煉する芸術家たちによって創設されました。法輪功は「真・善・忍」を核心精神とする修練法であり、1999年以来、中国では中共によって27年にわたる残酷な迫害を受け続けています。今もなお、中国各地の刑務所や洗脳施設では、ごく普通の中国国民である法輪功学習者たちが拘束され、飢えさせられ、拷問を受けているのです。
神韻の舞台は、単に高度な中国古典舞踊を披露するだけのものではありません。そこには、五千年にわたる神伝文化の精髄が再現されており、同時に、中共による信仰団体への迫害の実態も、勇気をもって描き出されています。その中には、想像を絶する生体臓器収奪の罪も含まれています。多くの神韻の芸術家たちは、自らが背負ってきた苦しみの記憶を、他者に希望と啓発を届ける力へと昇華させているのです。
元神韻のリードダンサー、王旋(スティーブン・ワン)の家族は、法輪功を修煉していたことを理由に、長年にわたって迫害を受けてきました。父親は2009年、凄惨な拷問を受けた末に命を落とし、母親も何度も拘束され、投獄されています。王旋は神韻のリードダンサーとして、自らの実体験を舞台の上で胸を打つ物語へと変え、不屈の精神と揺るがぬ信念を観客に伝えてきました。
もう一人のリードダンサー、饒徳如(エリー・ラオ)は、4歳のとき、警察に自宅へ踏み込まれ、父親を連れ去られました。父親は法輪功を修煉していたために中共に拘束され、拷問の末に命を奪われました。饒徳如は9歳のときに中国を離れ、その後、神韻芸術団に加わりました。今ではリードダンサーとなった彼女は、この胸に深く刻まれた記憶を、人々に希望を届ける使命へと昇華させています。父親の物語、そして父親と同じように苦難の中でも信念を曲げなかった無数の魂の物語を、世界各地の舞台へと運び続けているのです。
中共にとって、神韻が舞台で描き出す「共産主義以前の中国」は、自らの共産主義支配と真っ向から対立する存在です。しかも、その公演が世界の主流社会で大きな成功を収めていることで、中共が隠し通したい人権犯罪も、もはや覆い隠せなくなっています。そのため中共は、長年にわたってあらゆる手段で神韻の妨害を続けてきました。外交ルートを通じて各国政府や劇場に圧力をかけるだけでなく、スパイを使って公演バスのタイヤを切り裂いたり、虚偽の爆破予告を送りつけて恐怖をあおったり、さらにはオーストラリアなどの政府首脳を脅迫したことさえありました。
カナダのヨーク・センター選出の連邦議会議員ローマン・ババーが語ったように、自由国家で公然と行われるこうした脅しは、「極めて悪質な」越境的な弾圧にほかなりません。
脅迫が相次ぐ中でも、神韻芸術団と世界各地の支持者たちは、決してひるみませんでした。トロントでの爆破予告も、上海での「不可抗力」による中止も、こうした人為的につくられた妨害は、かえって人々の「本当のことを知りたい」という思いを強めていったのです。
実際、現場にいたある観客も、「中共が妨害すればするほど、人々はこの公演の真実をもっと知りたくなる」と語っています。芸術のしなやかな強さと、伝統文化が持つ生命力は、強権の影が濃くなるほど、むしろいっそう鮮やかに輝いて見えるのです。
(翻訳・藍彧)
