2026年3月23日、中国共産党の中央規律検査委員会と国家監察委員会は、中国三峡建工(集団)有限公司の一級顧問である陳文夫(ちん・ぶんふ)が、重大な規律違反および違法行為の疑いで調査を受けていると発表しました。

 公開資料によると、陳文夫は1966年12月生まれで、長年にわたり大型水力発電プロジェクトの建設に携わってきました。これまでに三峡プロジェクト第2期発電所の建設や、第3期プロジェクトダムの温度管理を主導した人物とされています。

 中国三峡建工は1992年11月30日に設立され、中国長江三峡集団有限公司が100%出資する国有企業です。公式サイトによると、主な業務は水力発電工事の建設管理や各種建設工事の施工で、三峡、白鶴灘(はくかくたん)、渓洛渡(けいらくと)、向家壩(こうかは)など、世界有数の巨大水力発電プロジェクトの建設管理を担ってきました。

 陳文夫が調査対象となったその日、中国最大の検索えんじん「百度(バイドゥ)」に、中国国内メディアの記事が掲載されました。その記事では、三峡ダムの完成からすでに30年近くが経過しているとしたうえで、長年水に浸かり続けてきたダムのコンクリートが、いったいあとどれほど耐えられるのかと疑問を投げかけています。中国の一般的なコンクリートの寿命はおよそ50年とされており、水中という環境はその寿命をさらに縮める可能性があると指摘しています。

 三峡プロジェクトは着工以来、さまざまな問題が次々と表面化してきました。2019年7月には、三峡ダムの変形をめぐるうわさが大きな注目を集めたこともあります。中国当局による三峡プロジェクトの説明も、2003年には「三峡ダムは一万年に一度の洪水にも耐えられる」としていたのが、2007年には「千年に一度の洪水を防げる」、2008年には「百年に一度の大洪水に耐えられる」と変わり、2010年にはついに「三峡ダムだけに希望を託してはならない」という言い方にまで後退しました。

 三峡ダムの建設計画が持ち上がった当初から、著名な水利専門家で清華大学の黄万里(こう・ばんり)教授は、この計画に強く反対していました。黄教授は当時の中国共産党トップだった江沢民と、当時の李鵬首相に対し、6回にわたって書簡を送り、問題点を訴えています。そこでは、地質、環境、生態系、さらには軍事面に至るまで、三峡プロジェクトがもたらす深刻な危険性を具体的に指摘していました。

 黄教授は、三峡ダムが貯水を始めれば砂や石が堆積して川の流れが悪くなり、重慶市や四川省で水害が起きる可能性が高まること、莫大な工事費が国に重い負担を与えること、さらに大規模な住民移転が将来必ず大きな禍根を残すことを警告していました。また、もし三峡のような巨大ダムを本当に建設すれば、最後には爆破して取り壊さざるを得なくなるとまで予言していたのです。

 しかし、1989年に「六四天安門事件」で流された学生たちの血の上を踏みしめて権力の座に就いたばかりの江沢民は、李鵬との同盟を急ぎ、自身の指導的地位を固めるため、自ら前面に立って三峡プロジェクトの議案を強力に押し進め、中国人民代表大会で可決させたのです。

 2026年2月27日、中国の大手ポータルサイト「搜狐網」は、杜宇彤による「三峡ダムの完成はどれほど大変だったのか。完成までに実に36年を要したが、あとどれだけ持つのか」と題する記事を掲載しました。

 その記事によると、三峡ダムは最上位に分類される貯水建築物にあたり、設計寿命はおよそ150年とされています。この基準で見れば、2006年の完成から計算して、三峡ダムの役目を終える時期は2156年ごろになることになります。しかし、これはその時まで何の問題もなく動き続けられるという意味ではありません。もし長江の水文環境に大きな変化が起きれば、150年という設計寿命があっても、実際の使用可能期間はそれより短くなるおそれがあります。そうなれば、三峡ダムの撤去は避けられないことになります。

 しかも、三峡ダムを取り壊した場合に生じる影響は、極めて深刻だと、記事は指摘しています。ダムにため込まれてきた大量の水と土砂が、いったん下流へ押し流されれば、さらに大きな災害を引き起こす可能性があり、最悪の場合は長江の流れそのものが変わってしまうおそれもあるとしています。そのうえ、三峡ダムの撤去は発電量の大幅な減少にも直結し、電力供給にも大きな打撃を与えることになります。

 記事はまた、松花江にある豊満ダムの更新を例に挙げています。ひとつのダムが耐用年数の限界に達した場合、国は新しいダムを建設してそれに置き換えるという流れになるというのです。豊満ダムでも、使用限界が近づいた段階で新ダムの計画が進められ、新しいダムの完成後、旧ダムは速やかに撤去されました。そのため将来、もし三峡ダムが本当に限界を迎える日が来た場合でも、国は計画に沿って新たなダムを建設し、それに置き換えることになるだろうと記事は述べています。

 三峡ダムをめぐっては、技術面での不安だけでなく、三峡集団の幹部らに深刻な汚職問題があったことも明らかになっています。

 2014年2月17日、中国共産党中央が派遣した巡視組は、三峡集団への監査の中で数多くの問題を指摘しました。三峡集団の経営陣の親族や関係者が工事に介入していたこと、入札が裏で操作されていたこと、建設プロジェクトの再委託が深刻な状態にあったこと、さらに重大事項の意思決定が不透明だったことなど、次々と実態が表に出たのです。そして2014年3月24日には、三峡集団の董事長だった曹広晶(そう・こうしょう)と、総経理だった陳飛(ちん・ひ)がそろって解任されました。

 さらに2024年2月27日、中国メディア「時代週報」は、かつて三峡プロジェクトの入札に関わった複数の関係者に取材し、三峡集団の入札過程に潜んでいた衝撃的な汚職の実態を報じました。

 関係者の一人はこう証言しています。
 「三峡集団が毎年発注する工事の総額は、少なくとも約2000億円(100億元)を超えていた。2014年以前、その大半は正式な入札手続きを経ていなかった。裏取引というのはまだ控えめな表現で、実際には全部が『表で堂々と行われる出来レース』だった」

 2015年6月28日、中国の監査署は、三峡集団の2013年度財務監査報告を公表しました。その内容から浮かび上がったのは、三峡集団の内部に汚職の深い闇が広がり、管理体制も大きく乱れていたという実態でした。

 監査で明らかになった問題には、工事入札の過程で違反行為が行われていたことが含まれています。2010年から2014年3月までの間に、問題が確認された契約は434件、総額は約2500億円(122億6700万元)に上っていました。また、2014年1月までの間に、利益がおよそ200億円(9億9100万元)少なく計上されていたことも判明しています。さらに、工事施工や商業活動における不適切な対応によって、大きな経済的損失が出ていたことも指摘されました。

 その後も、三峡集団をめぐる汚職問題は尾を引いています。2022年2月には、三峡集団の元董事長で、その後は湖北省の副省長を務めていた曹広晶(そう・こうしょう)が失脚しました。そして2024年5月、無期懲役の判決を受けています。

 曹広晶は、2004年から2022年にかけて、長江三峡工程開発総公司の副総経理、長江三峡集団公司の副総経理および董事長、さらに湖北省副省長などの立場を利用し、総額で約43億円(2億1600万元)を超える財物を不正に受け取っていたと認定されました。

(翻訳・藍彧)