2026年5月15日、米ドナルド・トランプ大統領は、中国への電撃訪問を終えて帰国しました。しかし、この外交イベントが幕を閉じたあと、その裏側で行われていた数々の異例の安全対策が徐々に明らかになり始めています。表向きは友好的に見えた首脳会談の裏で、米中双方が抱える深い戦略的不信感が、改めて浮き彫りになったのです。
同行取材していた《ニューヨーク・ポスト》の記者、エミリー・グディン(Emily Goodin)氏は、5月15日の午後、X上で驚くべき内幕を明かしました。
それによると、ホワイトハウスのスタッフたちがエアフォースワンに搭乗する直前、中国で入手したあらゆる物品がまとめて回収されたといいます。中国共産党幹部から配布された入館証や代表団バッジだけでなく、ホワイトハウス側が特別に支給した「使い捨て携帯電話(バーナーフォン)」まで、すべて離陸前にゴミ箱へ廃棄されたのです。
彼女は投稿でこう書いています。
「機内には、中国からの物を一切持ち込むことは禁止されていた」
この投稿は、わずか2日で数万件の「いいね」を集め、約2000件も拡散されました。
FOXニュースも以前、トランプ大統領と同行スタッフの多くが訪中期間中、普段使用している電子機器を完全に封印していたと報じています。代わりに使われたのは、機能を極限まで制限した「クリーン端末」、一時的なノートPC、そして厳格に管理された通信システムでした。
《ニューヨーク・ポスト》によれば、トランプ本人も個人端末の使用を禁止されていたとのことです。その目的は極めて明確でした。中国国内でアメリカ政府関係者が監視、ハッキング、あるいはデータ窃取の標的になるリスクを、可能な限り下げるためです。
元米シークレットサービス隊員で、現在は「セーフヘイブン・セキュリティ・グループ」の警護責任者を務めるビル・ゲイジ氏は、「中国は巨大な監視国家だ」と率直にこう語っています。
彼は、中国へ向かう政府関係者への安全ブリーフィングでは、「中国国内では、あらゆるものが監視されている」と明確に警告されると説明しています。
これは決して誇張ではありません。
2015年6月、米人事管理局(OPM)は大規模なハッキング被害を発表しました。流出した記録は約2210万件に達し、政府職員だけでなく、身辺調査を受けた人々やその家族・知人の情報まで含まれていました。米国側は、この攻撃の背後に中国の情報機関が存在すると断定しています。
2023年5月には、中国政府と関係を持つハッカー集団「Storm-0558」が、マイクロソフトのクラウド環境へ侵入し、米国務省や商務省の高官、さらに複数国の政府関係者や民間ユーザーのクラウドメールにアクセスしていたことが判明しました。
こうした過去の事件が積み重なった結果、米国側の警戒レベルは過去最高水準にまで引き上げられているのです。
実際、この10数年間で、中国製電子機器に隠された監視機能をめぐる実例は、世界各地で次々に発覚しています。その範囲と浸透度は、多くの人が想像する以上でした。
2015年、ドイツのセキュリティ企業G Dataは、小米(シャオミ)、華為(ファーウェイ)、聯想(レノボ)などの少なくとも26種類のAndroid端末に、出荷時点でスパイウェアが組み込まれていたと報告しました。
それらはFacebookやGoogleなどの有名アプリを装っており、システムの深部に潜り込んでいるため、ユーザー側では削除できませんでした。
専門家によると、この種のプリインストール型マルウェアは、ユーザーに気付かれないまま、通話履歴、位置情報、さらにはマイク音声まで収集可能だったといいます。
2019年5月には、台湾在住のカナダ人ITエンジニアが、自身のファーウェイ製タブレットが、許可していないにもかかわらず、中国国内のサーバーへ継続的にデータ送信していたことを発見しました。
しかも関連アプリは無効化できず、表面上は削除しても、バックグラウンドでデータ送信が続いていたとされています。
問題は通信機器だけではありません。
研究者たちは、ウォルマート、Amazon、eBayなどで販売されていた中国製ルーターの一部に、隠されたバックドアが組み込まれていたと報告しています。
対象となったのはJetstreamやWavlinkなどのブランドでした。
攻撃者はこのバックドアを利用することで、ルーターを流れるすべての通信を監視・操作できる状態にありました。閲覧サイト、個人メッセージ、音声データ、映像データまで対象になっていたのです。
まるで、自宅の中に「すべてを見ている監視装置」が設置されているような状態でした。
さらに衝撃的だったのは、一般的な家電製品からも監視機能が見つかったことです。
2013年、ロシア国営テレビ「Rossiya 24」が放送した映像では、中国から輸入されたアイロンを技術者が分解したところ、内部から隠されたチップが発見されました。そのチップには超小型マイクが内蔵されており、周囲200メートル以内の保護されていないWi-Fiネットワークを自動検出。接続に成功すると、対象PCへマルウェアを送り込む仕組みだったとされています。同じロットの電気ケトルからも同様のチップが発見され、すでに数十台がサンクトペテルブルク市内で販売されていたと報じられました。
脅威はエネルギーインフラにも広がっています。
2025年5月、米専門家は、中国メーカー製の太陽光発電インバーターや蓄電システムの中から、製品仕様書には記載されていない秘密の通信モジュールを発見しました。これらの「影の部品」は、ファイアウォールを回避して外部アクセスを可能にする機能を持っていたといいます。
2024年11月には、米国内の太陽光インバーターが、中国側から遠隔停止された事例も発生しました。専門家は、最悪の場合、複数州にまたがる大規模停電を誘発し、数十万人規模に影響を及ぼす可能性があると警告しています。
こうした背景があるからこそ、トランプ訪中時の異常な警戒態勢は、決して大げさなものではなかったのです。
中国側が主催した国宴でも、その緊張感は消えていませんでした。
表向きには和やかな雰囲気だったものの、映像を見ると、習近平のグラスは中国側スタッフが運び、トランプのグラスは米側スタッフが直接手渡していました。
外部では、双方が飲み物や食器への細工を警戒していたのではないかとの見方も出ています。また、指紋やDNAサンプルを残さないため、相手側にグラスへ触れさせない意図もあったと分析されています。
冷戦時代の米ソ首脳会談でも、食事や飲料の独自検査は行われていました。そうした光景が、今の米中首脳会談で再び見られていること自体、非常に象徴的です。
さらに、天壇で行われたイベントでは、中国側の警備担当が、ホワイトハウス記者団に同行していた米シークレットサービス隊員の武器持ち込みを拒否しました。
その場で双方は約30分間にわたり激しく対立し、一時は極度に緊迫した空気になったとされています。最終的には妥協に至ったものの、その後、ホワイトハウス記者団は中国側スタッフによって小部屋へ押し込められたとも報じられました。
トランプ大統領が天壇を離れようとした際、中国側関係者が記者たちを大統領車列へ近づけることを拒否し、再び激しい口論が発生しました。現場はかなり混乱した状態になったといいます。
中国問題の専門家、陳破空氏は今回の訪中について、こう総括しています。
「今回のトランプ訪中で見られた米国側の警備レベルは、これまでにないほど厳重だった。これはつまり、米中双方の間に極度の戦略的不信が存在し、互いに強い潜在的敵意を抱いていることを意味している。今回の会談は、関係改善というより、衝突回避のために行われたにすぎない」
米中の疑念と駆け引きは、たった一度の首脳会談で終わるようなものではないのかもしれません。
(翻訳・藍彧)
