近年、中国ではいわゆる「手抜き工事(豆腐渣工程)」の問題がたびたび明るみに出ており、建築の品質や監督体制に対する国民の不信感が根強く続いています。建設工事は本来、人々の命や安全に直結する重大なもののはずですが、相次ぐ事故が国民の不安を呼び起こし、再び世論の注目を集めています。
最近では、河北省の建設現場で「作業員が鉄筋を素手で折る」様子を撮影した動画がインターネット上で拡散し、大きな話題になりました。2025年6月に浪潮新聞が報じたところによると、河北省覇州市にある「国蕴城二区」プロジェクトで、粗悪な鉄筋が使用されている疑いが浮上しているそうです。このプロジェクトは、国有企業の中冶天工集団有限公司の傘下にある工程技術総院が施工を担当し、総建築面積はおよそ28万平方メートルにのぼります。
動画には、中冶天工の作業服を着た50代の作業員が、直径16ミリの異形棒鋼をわずか十数秒の間に4本も連続で折る様子が映っていました。そのうち2本は完全に折れており、残りの2本も大きく曲がっていたそうです。年配の作業員が簡単に鉄筋を折る様子は、多くの人々に大きな衝撃を与えました。
この動画を撮影した紀氏は、かつて同プロジェクトの下請業者で現場監督を務めていた人物です。彼によると、すでに2024年の施工段階で、使われている鉄筋の材質が異常に脆いことに気づいていたといいます。「直径16ミリの異形棒鋼は、本来、素手で曲げることすら非常に難しいはずです。それなのに作業員が簡単に折ってしまった」と紀氏は話し、長年建設業に携わってきた中でも、こうした状況は初めてだと語っています。紀氏によれば、この鉄筋の品質にはばらつきがあり、中には簡単に折れてしまうものがある一方で、多少はしっかりしたものもあったものの、全体として深刻な危険があるということです。
紀氏は、何度も住宅都市建設局に問題を訴えましたが、改善されず、やむを得ずインターネット上で告発し、より上層部の関心を引こうとしたそうです。
これに対し、覇州市の住建局は2025年4月に通達を出し、2024年10月と2025年4月の2回にわたって当該プロジェクトの鉄筋を抜き取り検査した結果、いずれも「設計および規範に適合している」と報告しました。また、紀氏について「工期の遅れや施工品質が基準を満たさなかったため、元請け業者から解雇された」と述べ、元請け業者とのトラブルが原因で動画を撮影した可能性があるとも指摘しています。
しかし、こうした公式な説明にもかかわらず、世間の疑念は収まっていません。多くのネットユーザーが、検査報告書が本当に現場で使われている資材を反映しているのか疑問視しています。現場で20年近く働いてきたというネットユーザーの一人は、「施工業者が検査に提出するサンプルと、現場で実際に使っている鉄筋はしばしば別物です。検査機関は送られてきたサンプルだけを検査することが多く、現場で無作為に抜き取り検査を行うことはほとんどありません。多くの検査報告は形式的なものに過ぎない」と指摘しています。
こうした問題は決して珍しいことではありません。中国の建設業界では「送検品と現物が一致しない」という現象が広く存在しています。例えば、2023年には江蘇省塩城市で、ある建設プロジェクトが検査に提出した鉄筋サンプルは合格したものの、現場で実際に測定したところ引張強度が大幅に不足していたことが発覚しました。また、2022年に中国住宅・都市農村建設部が発表した通達によると、全国の建設工事品質監督の抜き取り検査で、鉄筋・セメント・コンクリートなど主要資材の品質問題が依然として深刻であり、一部の鉄筋の実測降伏強度が設計基準を20%以上下回るケースもあり、建物の安全を大きく脅かしているそうです。
建設業界は、多重下請け構造や厳しい価格競争の影響で、施工業者の利益が圧迫されやすい状況にあります。そのため、一部の企業がコスト削減のために手抜きを行い、粗悪な建材を使用するケースが後を絶ちません。こうした構造こそが、「手抜き工事」の問題がなかなか根絶されない大きな要因だとされており、これまでもたびたび当局やメディアによって指摘されてきました。
こうした手抜き工事による事故も相次いでいます。2023年11月18日には、中国吉林省白城市で、総工費5,000万元をかけて建設されたスケートリンクの屋根が午前7時35分ごろに突然崩落しました。鋼構造で支えられていた屋根の半分以上が崩れ落ち、現場は数百メートル先からでも見えるほど粉じんに包まれたといいます。中国公式メディアによると、初期調査の結果、屋根の鋼構造が変形しており、施工品質に問題があった可能性が指摘されています。同じく11月15日には、雲南省で開業したばかりのスーパーマーケットで床が崩落し、買い物客が下の河川に転落する事故も起きました。事故の状況は異なりますが、いずれも建築の安全性や監督体制の脆弱さが浮き彫りになりました。
こうした建設の問題は、中国だけの話ではありません。海外でも施工不良による深刻な被害が起きています。2025年3月28日には、ミャンマーで発生したマグニチュード7.7の大地震によって、2,000人以上が犠牲となり、隣国のタイでも被害が及びました。特にバンコク市内では、建設中だった30階建ての政府庁舎ビルがわずか数秒で崩壊し、瓦礫の山と化しました。この事故で少なくとも13人が死亡し、9人が負傷したとのことです。バンコクには多くの高層ビルが立ち並んでいますが、倒壊したのはこの建設中のビルだけで、周辺の建物には大きな被害がなかったため、「なぜこのビルだけが崩壊したのか」という疑問の声が強まっています。施工不良や設計上の欠陥があった可能性も指摘されています。
いずれにせよ、建設工事の安全は、中国でも海外でも単なる経済の問題にとどまらず、多くの人々の命や財産に直結する、社会の根幹をなす重要な問題です。建設業界の関係者の多くは、こうした事故を徹底的に調査し、手抜き工事や粗悪な建材の使用、さらには虚偽の検査報告に関わった企業や個人を厳しく処罰する必要があると訴えています。そうしなければ、「手抜き工事」という深刻な問題は根絶されず、今後も多くの人々の命や安全を脅かし続けるでしょう。
(翻訳・吉原木子)