12月15日、中国・杭州市にある小米の下沙納車センターで、突発的な交通事故が発生しました。事故を起こしたのは、納車を終えたばかりの小米SU7 Maxで、車両はまだ公道に出る前の段階にもかかわらず、納車センターの敷地内で現場の作業員1人をはねたとされています。

 新車を受け取るという本来は節目となるはずの瞬間が、わずか数分のうちに警察が関与する交通事故へと一変しました。

 インターネット上で広まっている情報によると、運転していたのは初めて同車を受け取った新規ユーザーで、はねられた夏某は中升グループの従業員でした。事故当時、夏某は納車センター内の壁際付近でしゃがんで作業をしていたとされています。

 中国のSNS「微博」に投稿された動画には、スーツ姿の男性が車の前に倒れ、周囲の人々が緊迫した様子で心肺蘇生を行う場面が映っており、強い衝撃を与えました。

 その後、澎湃新闻は小米関係者の話として、事故発生時、車両は自動運転や運転支援機能を使用しておらず、完全に人が運転している状態だったと報じました。ハンドル操作、アクセル、ブレーキはいずれも運転者本人が操作していたとされています。

 狭い通路で後退する際、運転者がブレーキとアクセルを踏み間違え、アクセルを強く踏み込んだことで車両が急加速し、後方にいた作業員に衝突したと説明されています。

 救急車が現場に到着し、負傷者は直ちに病院へ搬送されました。事故については現在も調査が続けられており、被害者がその場で死亡したかどうかについては、公式な確認は取れていません。

 現時点で明らかになっている情報から判断すると、この事故は人為的な操作ミスによるものと見られています。しかし、騒動はすぐには沈静化しませんでした。

 というのも、小米の自動車事業はここ最近、複数の事故や安全性をめぐる議論によって、すでに世論の注目を集めていたためです。そうした状況の中で、納車センター内、しかも納車直後というタイミングで起きた今回の事故は、より大きな文脈の中で語られるようになりました。

 事故の映像や情報が拡散するにつれ、世論の焦点も次第に変化していきました。単なる一人の運転ミスとして捉えるのではなく、小米車全体の安全性や技術の成熟度、企業として安全をどのように位置づけているのかといった点にまで、議論が広がっていったのです。

 実際、2025年3月29日には、安徽省銅陵市で小米SU7が爆発炎上する事故が発生しました。また同年10月13日未明には、成都市の天府大道で高速走行中の小米車両が炎上し、運転者が死亡する事故も起きています。これらの事故はいずれも大きな社会的関心を集めました。

 この2件の事故について、一部では小米車の安全性に対する警鐘と受け止められています。公開情報によれば、いずれの事故でも運転支援機能の使用や作動不良が指摘されており、さらに衝突後に車のドアが正常に開かなかったという点も共通しています。成都の事故では、消防隊が専用機材を用いて車体を切断し、救助を行う様子がインターネット上で広く共有されました。

 こうした問題は、重大事故の場面に限ったものではありません。最近では、TikTokに投稿された動画が注目を集めました。動画を投稿した小米車のオーナーは、通常の道路で右折中、走行中にもかかわらず片側のドアが完全に閉まらなくなったと訴えています。

 映像では、ドアが半開きの状態で走行しており、運転者が片手でハンドルを握り、もう一方の手でドアを押さえ続ける様子が確認できます。

 さらに、小米車をめぐる議論は個別の事故にとどまりません。報道によれば、小米SU7の一部モデルでは、駐車支援などの機能が特定の環境下で不安定な挙動を示すことがあり、メーカーが遠隔によるソフトウェア更新で修正を行ったケースもあります。

 また、実際の利用者からは、運転支援機能を有効にした際、障害物の認識や減速のタイミング、運転者に操作を引き継ぐよう促す警告が必ずしも安定していないとの声も聞かれます。事故に直結した事例ばかりではありませんが、こうした体験談が積み重なることで、緊急時に本当に信頼できるのかという疑問が広がっています。

 加えて、電子制御システム以外の部分、つまり車体構造や機械的な信頼性についても注目が集まっています。事故後にドアが開かなかったケースや、走行中にドアが閉まらなくなった事例のほか、日常使用の中でドアのロックや密閉性、構造上の細部に違和感を覚えたという報告もあります。多くは深刻な結果には至っていないものの、高速走行時や複雑な状況下で発生すれば、大きな危険につながる可能性は否定できません。

(翻訳・吉原木子)