近年、中国共産党による世論操作やインターネット上の宣伝に煽られ、多くの中国人が「自由傭兵」という名目でロシア軍に志願し、実際にはウクライナの前線に送り込まれている状況です。
ウクライナ側の発表によると、これまでに少なくとも数十人の中国籍の人々がロシア軍に参加していることが確認されており、その中にはウクライナ軍に捕らえられた人も複数いると伝えられています。
最近、ウクライナ側は中国籍のロシア軍兵士、王猛さんの投降映像を公開し、国際的な注目を集めました。
今年6月1日には、ロシア第102自動車化狙撃旅団の兵士が撮影したとみられる動画がインターネット上に流出しました。この映像には、複数の中国人が中国語で自らの氏名や年齢を名乗る様子が映っており、その中の一人が王猛さんだったことが後に判明しています。
6月28日には、ウクライナ軍が王猛さんが捕虜となった映像を正式に公開し、身元を確認するとともに詳しい経緯を明らかにしました。
王猛さんの証言によると、彼は中国から飛行機でモスクワへ渡り、その後ウファの徴兵所へ移送されたといいます。
健康診断を受けた後、他の中国人たちとともに一か月以上も待機を強いられ、その間はスマートフォンを触る事以外、することがなかったと話しています。
やがて彼らはロスコフやウクライナ領内へ送られ、一週間の訓練を受けた後、全員のスマートフォンやパスポート、銀行カードが没収され、そのまま前線に送り込まれたということです。王猛さんは、「本当は後方部隊で雑務をして、両親に仕送りするためのお金を稼ぎたかっただけなのに、事情も知らされないまま前線に送られてしまった」と語っています。
彼自身は「一度も銃を撃ったことがなく」、戦況全体についても全く理解していなかったということです。しかし、指揮官からは繰り返し「突撃しろ」と命じられたそうです。
王猛さんの所属する小隊は前線で補給を断たれ、水も食料も途絶える中、一昼夜何も口にできなかったといいます。「死に行かされるだけだ」と感じた王猛さんは、ウクライナ軍の陣地に近づいた際、自ら投降を決意したと話しています。
一方で、人の送り込みにとどまらず、中国がロシアに対して物資や技術面で支援を行っている実態も次々と明らかになっています。
政治専門誌『Politico』によると、複数の中国企業がロシアに対し、防弾チョッキやヘルメット、ドローン、ナイトビジョンカメラなど、軍用または民生と軍用の双方に使える製品を輸出していると報じられています。特に、上海H Win社がロシア向けに大量出荷を行っている企業の一つとして名指しされています。
さらに、2024年9月にはロイター通信が、ロシアの国防産業大手「アルマズ・アンテイ(Almaz-Antey)」が中国国内の企業と連携し、中国に「Garpiya-3」という遠距離攻撃用ドローンの製造ラインを設立したと報じました。すでに試作機も受領しているとされています。
その後、NATOや複数の西側諸国の情報機関は、ロシア軍が2023年から中国国内でカスタマイズされた軍用ドローンを試験し、すでにウクライナ戦場で使用していることを確認しています。2025年2月には、エストニアの情報機関が「ロシア製ドローンに使われる西側製の重要部品のうち、80%が中国経由でロシアに流入している」と指摘しました。
また同年5月には、ウクライナ国防情報総局のイヴァシチェンコ局長が「ロシア国内の少なくとも20の軍需工場が中国から供給される特殊化学品、火薬、工作機械、電子部品を利用しており、ロシア軍ドローンの主要な電子部品のうち80%が中国製だ」と明らかにしました。
さらに、実際にウクライナの前線で中国籍の兵士が確認される事例も出ています。
2025年4月には、ウクライナのゼレンスキー大統領が「数百人規模の中国国籍者がロシア軍に従軍している」と述べ、中国籍の捕虜がドネツクで確認されたことを明らかにしました。
ウクライナ政府はすでに北京政府に対し、複数の中国企業や個人がロシア軍の作戦や後方支援に関与している証拠を提示しているといいます。
これまでに集まった証拠を総合すると、中国の民間企業や個人が、防弾装備やドローン、電子部品などの軍需物資やデュアルユース技術をロシアに提供しているだけでなく、少数ながら中国人が傭兵や契約兵としてロシア軍に加わり、ウクライナ前線に送り込まれている実態が次第に浮かび上がっています。
中国政府は、こうした軍事支援を公式には否定していますが、西側諸国やウクライナ、エストニアなど各国の情報や分析によると、中国によるロシアへの支援は単なる「通常の貿易」の範囲を超えていると指摘されています。
(翻訳・吉原木子)