世界的に著名な自動車市場調査機関の最新データによれば、中国の新エネルギー車は依然として長期的な信頼性に課題を抱えており、新車における品質トラブルも年々増加傾向にあります。
今週木曜日に正式発表される予定の小米(シャオミ)の新型SUV「YU7」をめぐっても、安全性や信頼性が重視される車載グレードの半導体チップではなく、よりコストの安いコンシューマーグレードのチップがスマートコックピットに採用されていることが判明し、業界内外で注目を集めています。
関係者の間では、「小米はコストパフォーマンスを極限まで追求した結果、性能と信頼性のバランスに苦慮しているのではないか」との見方も出ています。実際、今年に入ってから同社の車両は相次いで品質トラブルを起こしており、たびたび世間の批判を浴びています。
6月25日、小米グループの董事長兼CEOである雷軍(レイ・ジュン)氏は、自身の微博アカウントを通じて、新型車「YU7」の正式発表を翌26日に行うと明らかにしました。5月に報じられたIT之家によると、小米の15周年記念イベントにおいて、YU7にはクアルコム製の第3世代Snapdragon 8モバイルプラットフォーム(4nmプロセス)がスマートコックピット用チップとして搭載されていると紹介されています。このチップは本来スマートフォン向けに設計されたもので、自動車専用の車載グレードではありません。
コンシューマーグレードのチップは一般的に動作温度が0℃〜70℃、設計寿命も3〜4年程度とされますが、車載用のチップは−40℃〜105℃の環境に耐え、15年以上の使用を想定して設計されています。さらに、防水・防塵だけでなく、耐衝撃性、耐熱性、放熱性など、過酷な条件下での信頼性が求められます。今回、小米は当初搭載を予定していたクアルコムの車載向けチップ「Snapdragon 8295」を取りやめ、代わりにスマートフォン用の「Snapdragon 8 Gen3」を採用したことで、チップ単価は約900ドルから約160ドルへと大幅に削減されたといいます。
このような傾向は小米に限らず、比亜迪(BYD)の高級ブランド「方程豹(ファンチャンバオ)」にも見られます。同ブランドでは、業界主流とされるクアルコムのSnapdragon SA8155やSA8295ではなく、自社開発の「BYD9000」スマートコックピットチップが搭載されています。これもコンシューマーグレードとみなされており、専門家の間では「コスト削減の一環」との見方が強まっています。
証券時報が引用した専門家は、「確かにコンシューマーチップは初期コストを抑えられるが、処理性能やソフトウェアアップデートへの対応力には限界があり、長期的にはリスクとなる可能性がある」と指摘しています。過度なコスパ重視が裏目に出る恐れもあるということです。
こうした懸念は現実のトラブルとしても表れています。ネット上には、中国製新エネルギー車に関する不具合の体験談が数多く投稿されています。たとえば、2022年に小鵬(シャオポン)汽車を購入したユーザーは、車検直後にもかかわらず夏場のエアコンが19度に設定されているのに冷風が出ず、車内温度が30度に達したと訴えています。また、わずか270kmしか走っていない車が充電後に電力システム異常を示し、再起動もできず、レッカー車を呼ぶはめになった例もあります。
さらに、メーカーがアピールする最新機能も実際には期待外れであるケースが目立ちます。ある理想汽車(Li Auto)L9のユーザーは、自動駐車システムを何度試しても駐車スペースに入りきらず、最終的には車が道路中央に停まってしまう様子を動画で公開し、注目を集めました。
こうしたトラブルは小米の車にも及んでいます。今年3月29日、安徽省銅陵市の高速道路で小米SU7スタンダード版がガードレールに衝突後に炎上し、乗車していた3人全員が死亡するという痛ましい事故が起きました。また5月には、SU7 Ultraの「穴あきフード」仕様を選んだ一部のオーナーが、約4.2万元(約85万円)もの追加料金を支払って購入したカーボンファイバー製フードが、実際には性能向上とは無関係の装飾品であったことが判明。ネット上では「ボンネット詐欺」と呼ばれる騒動に発展し、数百人のユーザーが返品を求める事態となりました。
6月19日、世界的市場調査会社であるJ.D. Power(君迪)は「2025年中国新エネルギー車長期信頼性調査(NEV-VDS)」の結果を発表しました。この調査では、中国の新エネルギー車は長く乗るほどトラブルが多く、100台あたり244件もの問題が見つかりました。これは、新車を買った直後の不具合の数や、ガソリン車の長期的なトラブル数よりも多いことがわかっています。
特に情報エンターテインメントシステムに関する不満が多く、PP100上位20項目のうち5つがこの分野に集中しています。「音声命令が認識されない」「タッチパネルが反応しない」「音質が悪い」といった問題が顕著で、次いで座席の快適性やブレーキの効きすぎ、ハンドルの重さといった走行面に関する指摘も増えています。外観は豪華でも、実際の使用感は期待を下回るとの声が広がっています。
この調査は、2022年12月から2024年1月にかけて購入された3,644人のユーザーからのフィードバックをもとに実施されたもので、対象は中国の主要12都市における10ブランド18車種に及び、すべてで100件以上の有効サンプルが収集されています。これらのデータと実体験の声は、中国の新エネルギー車業界が表面的な華やかさとは裏腹に、深刻な技術的課題と信頼性の危機に直面していることを浮き彫りにしています。
(翻訳・吉原木子)