中国ではいま、極めてまれな規模の極端気象が続いています。北部では連日の猛暑が観測史上の記録を次々に塗り替え、南部では豪雨による洪水が急速に拡大しています。公式発表によれば、全国で18本の河川が警戒水位を超える洪水を起こしており、被災者は数百万人に上ります。さらに、一部のダムが事前通告なしに放流したことで、住民の不満と行政への不信が高まっています。
6月中旬以降、華北および華東地域は広範囲で高温に見舞われています。北京市、河北省、山東省、上海市などでは高温警報が相次いで発令され、一部地域では気温が過去最高を更新しました。北京市気象台は、6月4日に今年初の高温オレンジ警報を出し、20日にも再発令して熱波の長期化と深刻化を示しました。河北省も6月4日にオレンジ警報を出した後、21日には保定市や廊坊市などで最高気温37〜38度、局地的に39度を超える見込みを発表しています。山東省済南市では22日から26日にかけて40度超えが予想され、同省は複数地域で危険を呼びかけました。
東部沿海も例外ではなく、上海市は6月21日に今年4回目となる高温黄色警報を出し、体感温度が40度前後まで上昇。中国中央気象台は、今後も華北・華東で40度を超える極端高温が続くと警告しています。今回の熱波は「広範囲」「長期間」「高強度」が特徴で、都市部のヒートアイランド現象を悪化させ、住民の健康リスクを高めるとともに、電力需給や交通インフラにも大きな負荷をかけています。
南部と西南部では、連日の豪雨により洪水が深刻化しています。6月18日から21日にかけて、湖南省、広西チワン族自治区、湖北省、重慶市、貴州省などで洪水が相次ぎ、状況は日に日に悪化。中国中央気象台は21日も豪雨オレンジ警報を継続し、西南から江漢・江淮・江南北部にかけて大雨が広い範囲で降り続き、局地的には1時間100ミリを超える非常に激しい雨が観測されました。これにより、洪水や土石流、地滑りなどの二次災害が頻発し、多数の死傷者と大規模な財産損失が発生しています。
水利当局の統計では、6月20日8時から21日8時までの24時間で18本の河川が警戒水位を超え、最大で3.60メートル上回りました。柳江上流の都柳江や支流の馬場河、龍江など複数の中小河川では保証水位を突破。紅水河支流の盤陽河では2005年の観測開始以来最大の洪水が記録されました。広西水文センターは21日に洪水黄色警報を出し、自治区全域で13本の河川、16観測地点が警戒水位を超えたと報告。柳州市融安県の融江区間では水位が115.15メートルに達し、警戒ラインを超えました。現在、江蘇省、浙江省、安徽省、河南省、湖北省、湖南省、広西チワン族自治区、重慶市、貴州省の9省・市・自治区がIV級緊急対応を発動し、防災態勢を強化しています。
とりわけ湖南省の被害は甚大です。6月21日現在、湖南省水利庁は310基のダムで越水が確認されたと発表し、湘西トゥチャ族ミャオ族自治州、張家界市、常徳市など7市州で延べ40万人超が被災しています。張家界市永定区西渓坪村の住民は「複数の郷鎮が完全に水没し、水は2日以上引かない。政府の救援は来ず、住民は自力で高台に避難した」と現地メディアに証言。同区楓香崗村では複数の水力発電所が無通告で一斉放流し、下流域の洪水を悪化させたと住民が訴えています。
西南地域でも被害が続出。重慶市の彭水トゥチャ族ミャオ族自治県や黔江区では降雨量が観測史上の同時期記録を更新し、市内25区県で少なくとも8万4千人が被災しました。浙江省麗水市では蓮都区水東村の幹線道路が最大水深1.7メートルまで冠水し交通が途絶。広東省肇慶市懐集県の綏江では観測所設置以来最大洪水となり、18万人超が影響を受けています。
北部の熱波と南部の洪水が同時進行する今回の極端気象は、中国の社会経済に深刻な影響を与えています。猛暑で電力需要が急増し、送電網はピーク負荷に近づいており、一部地域では計画停電も懸念されています。一方、豪雨は防洪インフラの脆弱性と緊急対応の遅れを浮き彫りにしました。複数のダムが無通告で放流したことや、一部地方政府の救援の遅れが被害を拡大させたとの批判も強まっています。今後、極端気象の頻発が予想される中、政府と地方自治体には防災インフラの強化と迅速な避難体制の整備が急務となっています。
(翻訳・吉原木子)