6月3日、中国山西省太原市にある太山博物館で建物の一部が突然崩壊し、現場は一瞬にして土煙(つちけむり)に包まれました。この様子を収めた動画がネット上で拡散しました。同日夜、太山博物館は「地質災害の発生により、観光エリアを即日閉鎖する。再開時期は追って通知する」と発表しました。

 崩壊した建物は近年新たに建設されたもので、このニュースは多くのネットユーザーの間で波紋を呼び、「中国共産党政権下では手抜き工事が蔓延している」との批判が噴出しています。

新築建物がまさかの倒壊

 公開資料によると、太山博物館は太原市の南西約20キロに位置する風峪溝(ふうよくこう)内にあり、総敷地面積は約360万平方メートルに及びます。同館は2013年に中国国務院が発表した第7次全国重点文物保護単位に指定されています。

 6月4日、『極目新聞』の記者が現地を訪れたところ、観光エリア全体はすでに封鎖されており、観光客の姿はほとんど見られず、周辺の商店も営業を停止していました。

 空撮映像からは、太山の山頂にある建築物が深刻な崩壊をしており、近くの山肌には大きな陥没が発生、黄土がむき出しになっている様子が確認できます。全景写真と空撮映像を比較分析した結果、被害を受けた建物には「太山根彫芸術館展覧ホール」や「上院天王殿」などが含まれていました。

 太山博物館の公式WeChatアカウントによると、倒壊した「天王殿」は近年新たに建設された唐代様式の模造建築で、正面は三間取り、奥行き8.6メートル、屋根は歇山式(けつざんしき)構造を採用されています。殿内には唐代風の木彫り「四大天王」像が4体安置されていました。博物館側は「今回の事故で文物の損壊や人的被害は確認されていない」と説明しています。

 しかし、多くのネットユーザーは疑念を示しています。
「新築して数年で崩れる?これは見かけだけ修復しただけなのか、それともただの手抜き工事なのか?施工業者の徹底調査を求む!」
「責任逃れに地質のせいにするなんておかしい。地質は最初からそこにあったはずだ。明らかに手抜き工事であり、背後にある汚職や腐敗構造を暴くべきだ」
「山体がこんなに掘削されていたなんて、建設時に環境評価をどうやって通したのか?」

各地で相次ぐ崩壊事故、「手抜き工事」は一地域にとどまらず

 近年、中国各地で建築物の崩壊事故が相次いでいます。

 2024年5月19日夜、安徽省滁州市(ちょしゅうし)鳳陽県(ほうようけん)の明中都鼓楼(こくろう)の屋根が突然崩壊し、多くの瓦が落下しました。この鼓楼は2023年3月に修繕工事を終え、検査にも合格しており、修繕費用は341万元(約7400万円)に達していました。しかし、わずか2年足らずで屋根が全体的に崩落する深刻な事故が発生したのです。

 2024年11月18日午前7時ごろ、吉林省白城市のスケート場が突如崩落し、屋根全体が崩壊しました。同施設は2019年12月27日に正式オープンしており、事故時点で使用開始からまだ5年も経っていませんでした。

 2024年6月26日未明には、浙江省衢州市(しゅうしゅうし)にある1800年の歴史を持つ「水亭門古城壁」の一部が、大雨により突然崩壊しました。倒壊したのは1995年に修復された新しい部分で、元の城壁は無事でした。この件に対してネット上では、「なぜ古い壁は無事で、新しく修復した壁が崩れたのか」との批判が相次ぎました。

 また、中国の手抜き工事は海外にも輸出されています。今年3月28日、ミャンマーで発生したマグニチュード7.7の大地震は、タイのバンコクにも影響を及ぼしました。このとき、中国国有企業の中鉄十局が建設した33階建てのタイ国家監査庁ビルが倒壊し、バンコクで唯一倒壊した高層建築物となり、タイ社会に衝撃を与えました。この件をきっかけに、中国資本の工事品質に対する広範な疑問の声が巻き起こっています。

強風が暴く「見せかけの繁栄」

 官僚と企業が癒着し、利益が多層的に中抜きされる中国の建設業界では、品質問題が後を絶ちません。今年4月に中国各地で発生した強風も、その脆弱さを露呈しました。以下はいくつかの実例です。

 ネットユーザーの1人は「強風の中でも、手抜き工事は自分の意思を持っているようだ」と揶揄しました。

 別の動画では、ある男性が工事現場を見ていたところ、突然壁が倒れる瞬間に居合わせ、驚きました。

 河南省鄭州市では、風速12級の強風で住宅の壁が崩れる動画がSNSに投稿されました。

 X(旧Twitter)の利用者はこう語っています。「鳥は絶対に手抜き工事をしない。風速10級でも無事。インフラの質では、人間より鳥の方が勝っているかも」

発泡材で建てた高層住宅、豪邸は笑いの種に

 一般的に「発泡材」という言葉は建築材料とは無縁ですが、中国共産党体制下の「手抜き工事」では発泡材が実際に建築資材として使われており、しかもそれは一部ではなく、広範囲に見られる現象です。

 湖南省長沙市の「明発国際城」の住民は自宅を記者に見せながら「中は全部空洞。ここでかくれんぼもできる。こんな住宅に安心感なんてあるはずがない。34階まで全部空洞だ。中身は発泡材だ」と語りました。

 ある建設現場の作業員も動画で「屋上の縁にある低い壁(パラペット)のうち、3分の2は発泡材で作られていて、本物ではない。内側の18センチだけが実際の壁だ。上に上がるときは注意しろ。外側に乗ったら悲劇になるぞ」と警告しています。

 広東省広州市の「新世界雲耀花」団地では、1000万元(約2.2億円)以上を費やして購入した「高級住宅」の壁が、なんと発泡材でできていたことが判明しました。「これは全て発泡材。軽く押すだけで壊れてしまう」と住民が告発しています。

 未完成物件の前で、ある購入者が柱を掘り返しながら「200万元(約4400万円)も払った家が発泡材でできているなんて、誰か説明してくれ」と怒りの声を上げました。

 別の購入者も動画で怒りを爆発。「これがデベロッパーの仕事か?数百万元を払って買った家が手抜き工事なんて。見てくれ、この壁。手で剥がせるのだぞ」

 ネット上には「これ、うちの猫砂よりも脆い」「こんなの怖すぎる。この家、あと何年もつんだ?」といった声もありました。

 また、「社会主義、インフラ大国、集中力で大事を成す」と、皮肉交じりのコメントもありました。

 広東省茂名市の「碧桂園城市花園・水晶湾」団地では、28階建ての住宅ビルが引き渡しからわずか2年で、地下駐車場の68〜79号棟の39本の柱に粉砕性の亀裂が発生しました。床板には複数のひび割れがあり、鉄筋は細く、錆びつき、ほとんどすべての柱で鉄筋が断裂している状態が確認されました。

住宅は「住むもの」から「投資手段」へ、そして悪夢へ

 現在の中国では、住宅は単なる生活空間ではなく、家庭の投資対象としての「必需品」となっています。過去10年以上にわたり不動産価格は上昇を続け、無数の家庭が「六つの財布(両親・祖父母の資金)」をかき集めて数十年のローンを組み、住宅を購入してきました。しかし現在、住宅価格は下落し続け、多くの所有者は毎月の住宅ローンを払い続ける一方で、自分たちの家が「手抜き工事」だったという現実に直面し、深い絶望に陥っています。

(翻訳・藍彧)