近年、中国各地では極端な気象現象が頻発しており、その深刻さと広がりは年々増しています。2024年から2025年にかけては、南部の豪雨、北部の竜巻、東北地方の雷雨と雹、そして華北地域の異常高温といった災害的な天候が重なるように発生し、全国的に強い社会的・経済的影響を及ぼしています。
2025年6月2日から、広東省では新たな大規模な降雨に見舞われ、省内広範囲に深刻な影響を与えました。中新社および『南方日報』によれば、2日から3日にかけてのわずか24時間以内に、広東省内277の鎮・街道で豪雨または大豪雨が観測されました。3日午前7時41分の時点で、龍門県、博羅県、四会市、徳慶県、東源県、鬱南県、端州区、鼎湖区、高要区などでは暴雨紅色警報が発令され、省全体で16の暴雨橙色警報、19の暴雨黄色警報も追加されるなど、観測史上でも例を見ないほどの広域で同時多発的な激しい雨被害となりました。
広州市は特に深刻な被害を受けました。珠江デルタに位置するこの都市は本来水系が発達しているものの、都市化の進行により地表の排水能力が限界に達しており、今回のような集中豪雨には脆弱な面があります。街の多くが冠水し、地下鉄一部区間で一時的な運行停止も発生。道路は川のように変貌し、多くの自動車がエンジン停止状態で放置され、被害車両の数は数千台にのぼると推定されています。
ある市民は「一晩で景色がまるで変わっていた」と語り、SNSでは「家の中にまで水が入り、食器棚が浮いていた」「救助ボートが自宅前まで来た」という報告も相次ぎました。とくに増城区や白雲区、天河区では住宅地の排水が追いつかず、マンションの地下駐車場が完全に水没するなどの被害が集中しました。
広東省気象水文モニタリングの公式データによれば、2日午前8時から3日午前8時までの間に、78の鎮・街道が100ミリ以上の大豪雨、199の鎮・街道が50〜100ミリの豪雨、252の鎮・街道が25〜50ミリの強い雨を記録しました。中でも、恵州市龍門県龍華鎮は171.4ミリ、広州市増城区派潭鎮は166.1ミリと突出した降水量となりました。さらに、肇慶市高要区蓮塘鎮では、わずか1時間で107.1ミリという猛烈な集中豪雨が確認されました。
このような状況を受けて、肇慶市の端州区、鼎湖区、高要区、四会市にあるすべての托育施設、幼稚園、小中学校、中等職業学校が臨時休校となりました。恵州市博羅県も県全域で休校措置を決定し、約10万人以上の児童・生徒が自宅待機となりました。一部の学校ではオンライン授業に切り替えられたものの、インフラや通信環境が整っていない地域では混乱が続きました。
一方、6月2日午後、吉林省松原市前郭県長山鎮では突如として巨大な竜巻が発生し、地元住民を恐怖に陥れました。吉林はもともと比較的穏やかな内陸性気候で知られていますが、近年は対流活動の活発化により、春から初夏にかけて突発的な竜巻や雹の報告が増加しています。
村民が撮影した映像では、幅の広い竜巻が農地を横断し、空高くまで水しぶきと塵を巻き上げながら前進していく様子が確認されました。まるで空と地をつなぐ巨大な柱のようで、周囲には激しい風と低くうなる音が響いていたといいます。現地では「生まれて初めて見る光景」「映画のようだ」といった声が相次ぎました。
当局によると、北部の四克基村と新立村では一部の家屋の屋根が吹き飛ばされ、飛散した部材が送電線に直撃し、200世帯以上が一時的に停電しました。幸いにも死傷者は報告されていません。松原市政府は3日朝に緊急対応チームを現地に派遣し、被害状況の調査および電力復旧作業を進めています。
また、中央気象台は6月2日18時、強対流天気に関する青色警報を発令。2日夜から3日にかけて、吉林省および遼寧省では雷暴風や雹を伴う最大10級以上の突風が予測されるとして、住民に厳重な警戒を呼びかけました。東北地方の複数地域では、3日朝以降も断続的な雨と雷雨が続いており、農業にも悪影響が懸念されています。
中国気象網によれば、東北地方では今後3日間、主に小雨ややや強い雨が断続的に続く見通しで、局地的には大雨、さらには雷雨や雹を伴う激しい天候が再び発生する恐れがあります。長山鎮のような低地では排水能力が乏しく、二次災害(道路崩落・送電障害)への懸念も高まっています。
一方、晴天となっている華北や黄淮地域では、逆に高温への注意が必要です。中国中央気象台は、6月4日から8日にかけて、北京市、天津市、河北省などの地域で今年初の35℃超えが予測されており、一部地域では最高気温が40℃近くに達する可能性もあると発表しています。こうした高温は、電力需要の急増や都市部でのヒートアイランド現象を助長し、社会生活や高齢者・子どもへの健康リスクが高まると懸念されています。
中国気象局は、「極端気象の頻度と強度は気候変動と密接な関連がある」としており、今後も季節ごとの災害リスクの「常態化」が進行すると予測しています。また、政府は早期警報システムの精度向上とともに、地域ごとの避難訓練の実施や都市排水インフラの強化など、中長期的な対策も急務であると指摘されています。
このように、2025年6月の中国は、広東の豪雨災害、吉林の竜巻、東北の雷雹被害、そして華北の酷暑という、気候帯を超えた複合的な異常気象に同時に直面しています。これらの現象はすべて偶発的な出来事ではなく、地球規模の気候変動のもとで「新たな常態」となりつつあることを示しています。今後、社会全体として防災意識の向上と体制強化が求められています。
(翻訳・吉原木子)