5月13日の夜、北京では日中30度を超える蒸し暑さのあと、突如として激しい対流性の天気に見舞われました。門頭溝、海淀、朝陽、豊台など13の区では、直径3〜5センチ、最大では卵やクルミほどの大きさの雹が相次いで降り注ぎました。
固い地面や車の屋根に激しく叩きつけられた氷塊は「パチパチ」という大きな音を立て、多くの市民は「まるで銃撃戦のようだった」と語り、中には「破裂音が響き渡った」と話す人もいました。わずか十数分の間に、路面のあちこちが「白いクレーター」のような雹痕で覆われました。屋外に駐車していた車のフロントガラスはクモの巣状にひび割れ、車体にも無数のへこみができました。
一部の市民は雹から避難するために車を橋の下やショッピングモールの地下駐車場に移動させた為、一時的に交通渋滞が発生しました。SNSでは「北京の雹が大きすぎる」というワードがWeiboでトレンド入りし、閲覧数は瞬く間に4億回を突破。傘に付着した氷の破片や、雹と卵を比べた写真などが多く投稿され、大きな話題となりました。
北京気象台は当日夜、雷・強風・雹に関する警報を相次いで発表しました。専門家によると、午後からの地表加熱により、湿った暖気が上昇し、それが南下してきた冷気と衝突して「上が冷たく下が熱い」という強い対流環境が形成されたとのことです。強力な上昇気流が水滴を何度も上空に持ち上げて凍らせることで、今回のような大規模な雹嵐につながったと説明しています。実際、このような極端な気象現象は、4月中旬以降、中国各地で相次いで発生しています。
5月9日から10日の夜間にかけては、西安市北部の中古車市場で、直径5センチの雹が降り注ぎ、100台以上の車両が被害を受けました。業者の初期見積もりによれば、損害総額は2,000万元(約4億円)にのぼるとされています。甘粛省の康楽県でも、工場の屋根が破損し、野菜のビニールハウスが広範囲にわたって裂けるなどの被害が出ており、農家は応急修理に追われました。
さらに南方、およそ2,000キロ離れた雲南高原では、5月10日だけで20件を超える雹の警報が発令されました。楚雄、大理などの山間部では、大豆ほどの大きさの雹が暴風雨に交じって降り注ぎました。一部の地域では、35度を超えていた気温が急激に10度以上も下がるなど、まるで「ジェットコースター」のような天候となりました。
4月11日から13日にかけては、広東省の珠江デルタおよび粤北地域が春季としては最も激しい対流性の天候に見舞われました。8〜10級の雷雨とともに雹が激しく降り、多くの地域で短時間に100ミリを超える降雨が観測されました。気象当局は深夜まで雷・強風・雹に関する警報を繰り返し発し、市民に夜間の外出を控えるよう呼びかけました。
4月18日の夜には、重慶市の中心部で激しい雷鳴とともに、団子や卵ほどの大きさの雹が降り、礼嘉や蔡家など両江新区では多くの自家用車の屋根に無数のへこみができました。翌朝、現場を清掃していた市民は「まるで夜中に小石が降ってきたようだった」と語っています。
4月21日には、湖南省の婁底から長沙にかけて、雷雲が急速に発達し、警報レベルは情報(青色)から注意報(黄色)へと引き上げられました。わずか1時間で風力は10級に達し、雹がまるで雨のように降り注ぎ、未熟な梨やツバキの実が大量に地面に落ち、一部の農村では屋根瓦が砕ける被害も出ました。
国家防災減災救災委員会の報告によると、4月だけで全国の風雹災害による被災者数は17万5,000人に達し、倒壊・損壊した住宅は約5,000棟、直接的な経済損失は約2億4,000万元(約48億円)にのぼったとされています。5月上旬に北京、陝西、甘粛、雲南、貴州などで発生した雹による被害については、現在も集計中です。
中国気象局および各地の専門家は、今回の一連の激しい雹災の原因について、「冷暖気の頻繁な衝突」と「地表の熱の不安定性」が複合的に作用した結果と分析しています。南シナ海や西南地域からの暖かく湿った空気が北上し、高層トラフが冷気を南下させることで、江淮地方や華北平原では“ポップコーン”のように対流が爆発的に発生しました。加えて、江淮地方からの気流の形成によって上昇気流がさらに強まり、温暖期における積乱雲の発生範囲が広がり、持続時間も長くなったといいます。
5月中旬に入り、華北や東北地方の地表温度はさらに上昇しており、強い対流性の天気は今後1〜2週間活発に続く見通しです。気象当局は、雷や雹に関する注意報(黄色警報)が発令された際には、屋外での長時間の滞在を避け、車両はできるだけ地下駐車場に入れるか、防雹ネットで保護するよう呼びかけています。
また、農家に対しては、ビニールハウスや遮光ネットの点検、果樹への雹除け対策の設置、農業保険の補償内容の確認を促しています。都市管理部門にも、広告看板や仮設建築物の補強を行い、強風や雹による二次被害の防止を徹底するよう求められています。
(翻訳・吉原木子)