インドと中国は何世紀にもわたる貿易と友好の歴史を築いてきた。1962年の国境紛争を除き、両国間で本格的な戦争は発生していない。これは主にヒマラヤが中印間の「壁」として働いていることに起因すると言われている。しかし、技術的進歩で両国が国境に近づくにつれその関係は変化していく。近年、中国領内のインドとの国境付近で、貴重な貴金属の鉱床が発見されたことにより、両国は再び火花を飛ばす事態となった。

ヒマラヤの「ニュー・ゴールドラッシュ」

インドの北東部、アルナチャル・プラデーシュ州付近の鉱山にある貴金属と鉱物は、600億ドルの価値があると推定されている。また、中国は既にこの地域で鉱業を開始しているとの報道がある。

インドは、中国がアルナチャル・プラデシュを自国の領土と主張し、南チベットと命名している事実に注目している。中国がインド国境にあまりにも近い地点で掘削を行っているという事実に対し、世界は中国が紛争の扇動を企図している可能性があると認識している。 エコノミック・タイムズ紙は、中国科学院の測地学・地球物理学研究所で研究員を務めるハオ氏のコメントを次のように紹介した。

「中国が南シナ海で今日達成したことは10年前にはほとんど想像もつかなかった。ヒマラヤで今後起こることについても私は楽観主義的である。なぜなら、習近平国家主席は『南チベットを含み、私たちの土地の1インチも中国から割譲されることはない』と明言しているからだ」

中国は、国内の過疎地域に人を移住させ始めている。中国政府は、アルナチャル・プラデーシュ州で戦争が勃発した場合に備え、軍事的な利益の獲得を企図し、そうした移住を進めていると考えられている。この地域は海抜約13,000フィートもの位置にあるが、中国政府は多くの居住者を引きつけることができると見通しているようだ。

中印戦争が起きる可能性は?

中国とインドの軍は国境で短期間の戦闘を繰り広げているが、両国の戦争の可能性は低いと専門家は指摘する。既にインド側は、中国の軍人との小競り合いを避けるように兵士らに警告している。
セキュリティ専門家のルメール氏は、採掘事業は中国による「心理戦争」の面が大きいと見ている。同氏はSputnik Newsとのインタビューで次のように見解を語った。

「国境近くで実際に大規模な経済活動が行われれば、人口の変化、インフラ整備(軍事目的でも使用可能)、セキュリティ装置の設置などが確認されるだろう。これを防ぐために、監視と防衛に重点を置くことが必要である」

また同氏は、中国による採掘活動が川の汚染を引き起こしていることが証明されない限り、インドはいかなる形の反対も行わないべきであると付け加えている。
「両国とも核保有国であることを踏まえれば、周到に協議を重ね、互い譲歩しあうことが、現時点で両国ができる最善の方法だろう。まずは双方の指導者が話し合いを行うことで、この問題の解決が策が見えてくるはずだ」

(翻訳・今野秀樹)