お金を払ったのに、燃料を入れてもらえません。説明を求めても応じず、警察さえ相手にしません。追い詰められ、長江に身を投げた人までいます。給油所の従業員は、ただこう言い放ちました。「うちの社長は上層部にコネがある。あんたたちにはどうにもできない」。これは、南京の長江沿いで実際に起きている出来事です。

 大紀元の報道によると、今年9月末から、南京の長江沿いで燃料代を前払いしていた数十人の船主が、お金を払ったにもかかわらず、船に給油してもらえなくなりました。被害を受けた船主たちの推計では、被害者は40~80人、被害総額は約7050万円(300万元近く)に上り、最も多い人で約1692万円(72万元)に達しています。現在も返金や燃料の供給について具体的な対応は示されず、解決を求めるなかで、長江に身を投げて命を絶とうとする人が何人も出ています。

 取材を受けた船主が提供した契約書によると、星河能源投資南京有限公司(以下、星河社)と江蘇正儲能源有限公司(以下、正儲社)は、燃料の保管に関する契約と補足契約を結び、長江の南京市内の区間にある船舶向けサービス拠点で、燃料の保管と給油の事業を行っていました。簡単に言えば、燃料は星河社のもので、正儲社は仲介業者として船主とのやり取りや販売を担当していました。補足契約には、燃料の搬入·搬出、引き渡し、給油の指示はすべて正儲社が担当し、星河社は関与せず、あらゆるリスクは正儲社が負うと記されています。

 問題は、まさにこの関係にありました。船主たちは燃料を買う際、給油所に直接支払うのではなく、WeChatで販売担当者に連絡していました。担当者たちはアカウント名に「星河給油所」という名前を入れ、給油所を代表して燃料を販売していると名乗り、振込先の口座を指定していました。被害を受けた船主の周建宏(しゅう・けんこう)さんは、2年以上にわたり、何度もこの方法で代金を前払いし、その後に給油してもらっていたといいます。毎回問題なく燃料を受け取れていたため、次第に相手を信用するようになりました。

 別の被害者、孫麗華(そん・れいか)は、9月14日に約353万円(15万元余り)を前払いし、約18トンの燃料を購入する予定でした。「給油に行ったら、相手は『うちにはお金が振り込まれていない。別の人に振り込んだんだろう』と言った」。孫さんによると、2社の間でトラブルが起き、船主たちの前払い金にも影響が及んだということです。問題となっている支払いは9月14日から30日に集中しています。9月30日にも支払っていた船主がいましたが、給油に向かうと、すでに燃料はないと告げられました。

 しかし、船主たちが何より納得できないのは、燃料がないことだけではありませんでした。

 周さんによると、星河社側は、8月末から9月初めにはすでに正儲社の経営が行き詰まり、契約どおりに取引できなくなっていることを把握していたと説明したそうです。ところが、問題が表面化すると、販売担当者とも正儲社とも関係がないと言い出しました。周さんは、早くから問題に気づいていたのなら、なぜ船主たちに支払いをやめるよう知らせなかったのかと問いただしています。「2年以上も燃料を売っておいて、今さらこの人たちを知らないと言うのは、筋が通らない」。また、軽油を16トン注文し、請求書まで発行されていたのに、6トンしか給油してもらえず、残りを受け取れなくなった船主もいるといいます。

 「燃料を渡すか、お金を返してほしい。そちらの間でどんな事情があるかは関係ない。こちらは約束どおりに燃料を買いに来ただけだ」と周さんは訴えています。さらに燃料価格も大幅に上昇し、船主たちは前払いしたお金を取り戻せないうえ、以前の価格で燃料を買うこともできず、損失がさらに膨らんでいます。

 10月初めから、一部の船主が相次いで警察に相談しました。関係機関は何度も話し合いの場を設けましたが、解決には至っていません。周さんによると、あるときは警察が被害者とともに2社の責任者が来るのを待ちましたが、昼から深夜まで待っても、相手は姿を見せなかったといいます。「彼らは警察さえ相手にしない」。警察が正式に事件として捜査を始めたのかどうかについても、被害者たちは明確な回答を得られていません。

 長い間お金を取り戻せず、精神的に限界まで追い詰められた船主もいます。孫さんはこう話しています。「昨日は船主が川に飛び込んだ。今日も、ずっとお金を返してもらえずに取り乱し、川に飛び込もうとした人がいた。その後、救助された」。周さんの弟も川に飛び込みました。それを目撃した周さんは感情を抑えられなくなり、関係者ともみ合いになったといいます。

 一企業が、なぜ警察さえ無視できるのでしょうか。その背景をうかがわせる証言が出てきました。

 孫さんによると、現場の従業員は、問題の企業の社長には莫大な資産があり、「後ろ盾が強すぎる」ため、解決は難しいと話したそうです。周さんも、給油所の従業員から、社長には数百億円(10数億元)の資産があり、上層部にコネがあるので、あなたたちには「どうにもできない」と言われたと証言しています。中国メディアの記者が現場に取材に来たこともありましたが、すぐに立ち去ったといいます。

 このトラブルは、折しも河川の貨物輸送が非常に厳しい状況にあるなかで起きました。周さんによると、ここ数年は貨物輸送の需要が落ち込み、運賃収入では経費を賄いきれなくなっています。燃料価格は1トン当たり約21万1500円(9000元)まで上昇しており、周さんはイランでの戦争が関係しているのかもしれないと考えています。周さん自身も約1億8800万円(800万元)の船のローンを抱えています。「船には燃料が必要だし、船のローンも返さなければならない。従業員の給料も払わなければならない」。前払いしたお金を取り戻せず、船に給油することもできないなか、いつ資金が尽きてもおかしくない状況です。

 現在、被害を受けた船主たちは、行政に対し、お金の流れや販売担当者と2社の関係、燃料の供給が止まった本当の理由を早急に調べ、返金か燃料供給について具体的な対応を示すよう求めています。

 契約書の条文を見る限り、星河社は補足契約によってすべてのリスクを正儲社に負わせ、自分たちは責任を免れるかのように見えます。しかし、2年以上にわたり、「星河給油所」の名を掲げた販売担当者たちが、星河社の埠頭で代金を受け取り、星河社のタンクから燃料を引き渡していたのに、星河社は本当に何も知らなかったのでしょうか。8月末には正儲社の問題に気づいていながら、その後も半月にわたって船主たちが支払いを続けるのを放置していたとすれば、どう考えても説明がつきません。

 星河社の背後にどのようなつながりがあるのかは、今のところ明らかではありません。しかし、地元警察による仲介さえ無視できること自体、何か事情があるのではないかと思わせます。中国では、民間企業が警察を無視できる場合、その背後には、さらに上の立場にいる強力な後ろ盾が存在することが少なくありません。従業員が口にした「上層部にコネがある」という言葉も、単なる強がりではないのかもしれません。

 中国では、大企業の経営者が、高官に代わって表に立ち、資産管理や取引を担う隠れみのになっていたり、高官と複雑な私的関係で結ばれていたりすることがあります。一般の人々はこうした現象を、役人と企業が結びつく「官商癒着」と呼びますが、これこそ本当の意味での犯罪組織といえるのではないでしょうか。こうした経営者たちは、商売の倫理や信用を無視し、役人の権力を頼みに横暴に振る舞い、問題が起きると権力の陰に隠れて、地元の捜査機関が手を出せないようにします。そのしわ寄せを受けるのは、長江の船主たちのように、権力も後ろ盾もなく、自分の労働と信用だけを頼りに暮らす普通の人々です。

 汗水流して稼いだ数百万円から2000万円余り(数十万元)が消え、返してほしいと訴えても、応じてもらえません。川岸に立ち、燃料を入れてもらえない船を見つめる船主たちは、この先、どこへ向かえばよいのでしょうか。

(翻訳・藍彧)