中国では新エネルギー車(EVやプラグインハイブリッド車など)の急速な普及により、ガソリン車を前提に成り立ってきた産業が軒並み行き詰まっています。地方の製油所では操業停止が相次ぎ、ガソリンスタンドやディーラー、整備工場も次々と店を閉めています。日本の自動車メーカーも、販売の落ち込みに歯止めがかかりません。11月1日から始まる電子インボイスの新制度は、ガソリンスタンドの廃業にさらに拍車をかけるとみられています。
今年は原油価格が高騰し、中国の新車販売に占める新エネルギー車の割合は65.2%と過去最高を記録しました。民営のガソリンスタンドはこの5年間、年3.68%のペースで減り続け、1日あたり約10か所が姿を消しています。全国に約11万か所あるガソリンスタンドについて、国有石油大手系の研究機関は、2030年ごろまでに約2万か所が閉鎖されると予測しています。ネット上には、ガソリンスタンドが充電ステーションに衣替えした様子を映した動画も出回っています。
河北省でガソリンスタンドを経営する王さんは、こう話します。「もうガソリンスタンドはやっていけないよ。売上は年々落ちてるし、EVの勢いがすごすぎる。家賃が高くて従業員を抱えてるところは、厳しくなる一方だね。夜逃げするやつも後を絶たなくて、ここ2か月は特に多い。北のほうじゃ、福建出身の経営者がかなり引き揚げてるよ。給油機でインボイスを出すようになったのは、本当に影響が大きい」
新制度では、国家税務総局のシステムを通じて取引ごとに電子インボイスが自動で発行され、ガソリンスタンドの売上はすべて当局に把握されることになります。
同じく河北省でガソリンスタンドを営む張さんも、こう明かします。「河北じゃインボイス対応の給油機の設置が義務になって、もう8割は入れ終わってる。締め付けがめちゃくちゃ厳しくて、今は全然儲からない。意地で踏ん張ってるだけだよ。東北の衆誠ってチェーンなんか、もうかなりの店を畳んでる。山東でも今年はいくつものスタンドが営業を止めてるし、今日も一軒逃げた。同郷のやつだよ」
経営者らによると、以前は小さなスタンドでも年に数十万元の利益が出ていましたが、今では10軒のうち9軒が赤字で、年数十万元の賃料も払えなくなっているといいます。張さんは「ブランドに加盟したって意味ないよ。中化(国有大手の中国中化)に加盟すると年10万元取られて、看板を掲げて向こうの燃料を宣伝させられるうえに、仕入れも全部そこからだ。小海豚っていう運営代行に任せると、店長を一人よこして年35万元。小さな町じゃそもそも稼げないのに、みんな必死で値下げ合戦してるんだから」と話します。
原油高で燃料不足もたびたび起きています。最近は軽油の販売制限や販売停止が相次ぎ、大型ディーゼルトラックや船が動けなくなって、運転手や船主は頭を抱えています。王さんは「軽油はずっと値上がりしっぱなしで、今じゃ1トン1万元近い。こんなに高いうえに供給まで絞られてるから、電気の大型トラックがますます売れるんだよ」と話します。実際、中国では今年9月、新エネルギーの大型トラックが初めて販売台数全体の5割を超えました。
ガソリンスタンドに燃料を供給する山東省の地方製油所も、苦境に立たされています。「ティーポット」と呼ばれるこれらの独立系製油所は、今年の原油価格の乱高下に振り回されました。原油価格は上半期に一時1バレル120ドルまで上がり、その後70ドル前後まで下がったため、高値で仕入れた原油を値下がりした燃料として売らざるを得ませんでした。上半期の精製利益は1トンあたり45元の赤字で、7月には7社以上が一斉に操業を止めています。割安なイラン産やベネズエラ産の原油も次第に入らなくなり、燃料にかかる税金も流通の全段階で記録が残る仕組みに改められて、かつてのコスト面の強みは失われました。業界では、新エネルギー車への移行は一時的な波ではなく、構造的な打撃だと受け止められています。山東省は、省内の地方製油所の処理能力を3割ほど減らす目標を掲げています。
川下の自動車ディーラーも、軒並み店を閉めています。業界のデータによると、2025年には全国で4961店の正規ディーラーがメーカーの販売網から外れ、今年上半期にもさらに1800店以上が姿を消しました。8割を超えるディーラーが仕入れ値を下回る価格で車を売る「逆ざや」に陥っています。新エネルギー車は点検の回数がガソリン車の半分以下で、中核部品の整備もメーカーが握っているため、アフターサービスの収入も急減しました。中国最大だったディーラーグループの広匯汽車では、700店近くあった店舗がほぼすべて閉鎖されています。
購入したディーラーを訪ねたらもぬけの殻で、契約書にあった無料点検も受けられなくなったという人も少なくありません。江西省のあるディーラーの経営者は、累積赤字がすでに800万元を超えたものの、廃業すれば債務の清算や税金の追納がのしかかるため、続けるしかないと明かします。
町の整備工場も例外ではありません。中国メディアによると、2023年から2025年までに全国で8万軒を超える整備工場が廃業しました。業界全体のほぼ5分の1にあたります。南京市で20年以上整備工場を営む男性によると、以前は店の前に点検待ちの車が十数台並んでいましたが、今では1日に3、4台ほどで、月の収入は4分の1に減りました。従業員を3人まで減らしても仕事がなく、交代でソファに寝転がって時間をつぶしているといいます。新エネルギー車はもともと壊れにくく、修理もメーカー保証を気にしてディーラーに任せる人が多いため、町の工場には客が回ってきません。
こうした流れは、日本の自動車メーカーにも及んでいます。各社の発表によると、今年上半期の中国での新車販売台数は、トヨタが17.1%、日産が15.0%、ホンダが34.7%、それぞれ前年同期を下回りました。燃料価格の上昇でガソリン車が売れなくなったことが響いたとされます。8月はトヨタが22.8%減、日産が51.9%減、ホンダが49.9%減と落ち込みがさらに広がり、ホンダの中国販売は31か月連続で前年を下回りました。ホンダの中国での年間販売台数は、2020年の162万7000台から2025年には約64万5000台まで縮小しています。ホンダは中国でのガソリン車の生産能力を大幅に削る方針で、東風ホンダの武漢工場も2027年に閉鎖する計画です。
(翻訳・吉原木子)
