米カリフォルニア州アーケディア市の前市長、王愛琳(Eileen Wang、本名:李黎)が、中国共産党(以下略称:中共)の違法代理人として活動していた疑いで罪を認めた事件が、米国内で大きな波紋を呼んでいます。

 米連邦検察によると、58歳の王愛琳は「中国政府の違法な代理人として活動した罪」を認めることで合意しました。米国の法律では、この罪は最大で10年の連邦刑務所での禁錮刑が科される可能性があります。事件が公表された当日の朝、王愛琳はアーケディア市政府に辞表を提出しました。

 有罪答弁合意書によると、2020年末から2022年にかけて、王愛琳は元婚約者の孫耀寧(Mike Sun)とともに、中国政府関係者の指示と管理のもとで活動していました。そして米国内の複数の人物と連携しながら、さまざまな形で中国政府の利益拡大に協力していたとされています。その中には、米国内で親北京の宣伝内容を拡散する行為も含まれていました。

 捜査によると、2人は「US News Center(米国ニュースセンター)」というウェブサイトを共同運営していました。このサイトは表向きには華人コミュニティ向けメディアを装っていましたが、実際には中国政府の宣伝プラットフォームとして利用されていたとされています。

 王愛琳と孫耀寧は、中国側の要求に応じて記事を掲載し、内容を修正し、その後、閲覧状況まで中国側へ報告していました。

 司法文書によれば、あるケースでは、中国政府関係者がWeChatを通じて事前に作成したニュース原稿を王愛琳へ送信しました。彼女はそれをそのままサイトへ掲載し、その記事リンクを相手へ送り返していました。

 別のケースでは、王愛琳は指示に従って記事内容を修正した後、更新済みリンクを再び中国側へ送信し、さらに「閲覧数が15128回に達した」と表示されたスクリーンショットまで添付していました。すると相手側は「素晴らしい」と返信し、王愛琳は「ありがとうございます、指導者様」と返答していたとされています。

 孫耀寧は、王愛琳が2022年に市議会議員選挙へ出馬した際、選挙資金責任者も務めていました。彼は2025年10月に罪を認め、2022年から2024年にかけて、米国司法省へ届け出を行わないまま、中国政府の代理人として活動し、米国内で親中国共産党の宣伝を行っていたことを認めています。その後、2026年2月に懲役4年の判決を受けました。

 この事件が表面化した背景には、米司法省から中共の上級情報工作員と認定された陳軍(John Chen)の逮捕が大きく関わっています。

 陳軍は2024年11月、20か月の禁錮刑を言い渡されました。彼は、FBI捜査官が偽装した米国税庁職員に賄賂を渡そうとし、神韻芸術団の非営利法人資格を取り消させようとしていたのです。

 司法文書によると、陳軍が上級組織へ報告していた2人の幹部はいずれも中共の「610弁公室」の関係者でした。「610弁公室」は中共の秘密警察組織であり、司法制度の上に位置するとされ、中国国内外で法輪功や当局が脅威と見なす団体への弾圧を統括しています。

 陳軍は、王愛琳と孫耀寧について「我々のために働くチームメンバー」と表現していました。陳軍の逮捕をきっかけに、王愛琳と孫耀寧も米捜査当局の監視対象となったのです。

 事件の詳細を見ると、この浸透工作は主に3つの分野、すなわち世論宣伝、地域社会への影響、そして草の根レベルの政治的浸透に及んでいました。

 まず世論工作の面では、「US News Center」は華人コミュニティ向けメディアを名乗りながら、長年にわたり中共の公式立場に沿った内容を発信していました。その中には、新疆の人権問題を否定する内容など、極めて敏感なテーマも含まれていました。

 次に、コミュニティへの影響力工作の面では、王愛琳と孫耀寧は長年、南カリフォルニアの華人社会で積極的に活動し、公益イベントや地域活動を通じて高い知名度と信頼関係を築いていました。

 3つ目の地方政治への浸透では、王愛琳は地域コミュニティの人物から地方政界へ進出し、最終的には市長にまで上り詰めました。このため、外国政府の影響力が地方選挙を通じて米国の基層政治へ入り込んでいるのではないかという懸念が広がっています。

 司法文書では、このネットワークが海外にいる反体制派団体に対する「国境を越えた弾圧」活動にも関与していたことが明らかになっています。陳軍は孫耀寧に対し、カリフォルニア州内の法輪功の煉功場所を妨害するよう求めていました。もし「問題を起こせれば」あるいは「関連活動を潰せれば」報酬を与えると伝えていたのです。さらに、孫耀寧は、中国側へ約1200万円(8万ドル)の予算申請も行っていました。その目的は、ワシントンの独立記念日パレード期間中に親中共デモを組織するためだったとされています。

 また、ローズパレードにおいて法輪功のフロート車両が社会的注目を集めることに対抗しようとしていたことも判明しています。さらに『ニューヨーク・ポスト』紙は、選挙資金記録を引用し、王愛琳が2022年に『星島日報』ロサンゼルス支局から約50万円(3300ドル)の政治献金を受け取っていたと報じました。『星島日報』の米国法人は、すでに2021年の時点で「外国代理人登録法」に基づき「外国代理人」として登録されていました。

 この事実によって、中国語メディア、非営利団体、地方政治家の間に存在する関係ネットワークにも、改めて注目が集まっています。法的な側面では、王愛琳事件は主に米国の「外国代理人登録法(FARA)」に基づいて処理されています。この法律では、外国政府を代表して政治活動や宣伝活動を行う人物に対し、米国司法省への登録を義務付けています。

 しかし、批判派からは、この法律は処罰が軽く、主にロビー活動や宣伝活動を対象としているため、近年ますます複雑化する越境的な浸透工作や影響力行使には十分対応できていないとの声も上がっています。現在、米国のいくつかの州では、より厳格な法律整備が進められています。テキサス州ではすでに「越境弾圧法(国境を越えた弾圧に対抗する法律)」が可決しており、米国連邦議会でも同様の法案が議論されています。

 FBI対スパイ部門のローマン・ロジャフスキー副主任は、次のように述べています。
 「王愛琳本人の認めるところによれば、彼女は長年にわたり秘密裏に中国政府のために活動していた」

 これに対し、王愛琳側の弁護士は、「彼女は孫耀寧を信頼し依存していたため、事情を十分理解しないまま活動へ巻き込まれた」と主張しています。

 しかし、司法当局が公開した大量の通信記録からは、2人が長年にわたり中国政府関係者の指示に従って行動していたことが確認されており、偶発的あるいは短期的な行動ではなかったと見られています。

 王愛琳は今後数週間以内に正式な罪状認否のため出廷する見通しですが、裁判所はまだ量刑審理の日程を公表していません。

 今回の王愛琳事件の全面的な発覚により、米国社会では改めて、中共による広範な浸透工作に対し、現在の法制度が十分機能していないのではないかという厳しい議論が広がっています。現在、テキサス州は全米に先駆けて「越境弾圧法」を成立させており、連邦議会でも、中共による大規模な「代理人浸透」への対抗を目的とした連邦レベルの法整備が進められています。

(翻訳・藍彧)