米大使、中国共産党のシーパワーに警鐘 「政治的威圧に利用」.
パナマ運河(Image by artes2franco from Pixabay,Pixabay license)

 ウォーレン・スティーブンス駐イギリス米国大使は7月8日、ロンドンで開かれた国際海事機関(IMO)理事会の会合で、中国共産党(CCP)が港湾投資や造船、海運サプライチェーンを利用して海洋分野での影響力を着実に拡大しており、シーパワーを他国に政治的圧力をかけるための手段として利用していると警鐘を鳴らした。「これは無視する余裕のない課題だ」と同氏は語った。米紙『ニューヨーク・ポスト』が報じた。

 国際海運を担当する国連の専門機関であるIMOは、海上安全保障、サイバーセキュリティー、重要インフラの保護について協議するため、理事会を招集した。会合で演説したスティーブンス氏は、米国は国際海事問題における単なる傍観者ではなく、世界の海洋経済を構成する重要な一員であると強調した。公式データを引用し、米国の海上輸送システムは年間約5兆4,000億ドルの経済活動と約3,000万人の雇用を支えていると指摘した。そのため、海上安全保障と航行の自由を守ることは、米国だけでなく世界全体の利益に関わる問題であると述べた。 

 スティーブンス氏によると、中国共産党は近年、世界各地の港湾の運営権を取得し、ターミナルや物流インフラに投資することによって、世界的な港湾ネットワークを拡大し続けている。同時に、造船能力も劇的に増強している。同氏は、中国が現在、世界で新たに建造される船舶の半数以上を建造しており、岸壁用ガントリークレーン、コンテナ製造、主要な海運サプライチェーンなどの分野で圧倒的な地位を占めていると指摘した。こうした能力は商業的価値を持つだけでなく、政治的および戦略的にも重大な意味を持つと同氏は述べた。 

 同氏は、北京による海外港湾への投資は、通常の商業的行為の範疇をはるかに超えていると主張した。中国共産党はむしろ、港湾、海運、物流、サプライチェーンを地政学的な影響力を持つ道具へと変え、他国に政治的圧力をかけるために利用しようとしているという。会合後に同氏は自身のSNSで、国際社会は「海洋力を政治的威圧の手段として利用しようとする中国の組織的な取り組み」を無視することはできないと述べた。 

 スティーブンス氏は、重要な海洋インフラが外国の支配下に置かれることに伴うリスクの一例として、最近パナマで発生した港湾をめぐる紛争を挙げた。香港に拠点を置くCKハチソン・ホールディングスが関係するバルボア港およびクリストバル港の運営権について、パナマ最高裁判所が最近、同国の憲法に違反するとの判断を下した。両港はそれぞれパナマ運河の太平洋側と大西洋側の入口に位置しており、国際貿易にとって極めて重要な拠点となっている。 

中国当局はこの判決に迅速に反応し、パナマ船籍の船舶に制限を課した。スティーブンス氏は、この出来事は、各国が外国政府とつながりのある企業に重要港湾の管理を認めた場合、国家安全保障上のリスクやサプライチェーンの脆弱性を高める可能性があることを示していると述べた。 

 こうした状況を背景に、スティーブンス氏はIMO加盟国に対し、港湾や重要な海洋インフラを誰が管理しているのかに、より細心の注意を払うよう求めた。また、外国政府と関係のある企業が関与する港湾運営契約について、慎重に精査するよう促した。同氏は、透明性、法の支配、国家主権は国際貿易を妨げるものではなく、むしろ国際貿易が長期的に成功するための基盤を形成するものであると強調した。 

 さらにスティーブンス氏は、米国が今後も海上安全保障の強化や航行の自由の保護、国際海事規則の改善を目指す取り組みを推進していくと述べた。同氏は、安全な国際海運体制の構築を目指すIMOの取り組みに対する米国の支持を改めて表明し、航行の自由と世界的なサプライチェーンの安全を守るため、加盟国に協力するよう呼びかけた。

(翻訳・竹内優子)