台風の影響で中国の河北省の各地で大雨が続き、深刻な洪水被害が起きています。被害を拡大させないため、地元政府は廊坊市三河市の皇荘鎮という地域に、意図的に洪水を流し込む計画を立てました。しかし、この決定に地元の住民が強く反対しています。7月12日の夜、複数の村の住民たちが堤防の近くに集まり、工事を止めようとして、現場の政府関係者と衝突する事態になりました。

 ネット上に投稿された現地の動画には、その時の様子が映っています。12日の夜、川の堤防を崩して村に水を引き込むため、すでにショベルカーが現場に入っていました。村が水没するのを防ぐため、大勢の住民が工事現場を取り囲みました。動画の中では、一人の住民が「みんなでショベルカーをどかしてしまえ」と叫び、周りの人々がそれに同調しています。その後、住民と政府関係者の間でもみ合いになり、地面に倒れ込んで動かない男性の姿も確認できます。現場には多数の警察官も駆けつけ、一時的に非常に混乱した状況になりました。

 現在のところ、地元政府はこの件について公式な発表をしていません。しかし、住民たちがここまで強く反発する背景には、2023年に河北省の別の地域で起きた、補償をめぐるトラブルがあります。

 過去数年の間、河北省の覇州市や涿州市などの地域は、首都である北京などを水害から守るため、洪水を一時的に溜める「遊水地」としてたびたび利用されてきました。特に2023年8月に大雨が降った際、河北省では7つの地域に意図的な放水が行われました。これにより広い範囲の村や町が水没し、何万人もの住民が家や財産を失いました。当時、国営のテレビ局がこの被害を報道しましたが、「雨の影響で水に浸かった」とだけ伝え、政府の計画的な放水が原因であることには触れませんでした。

 被害の理由が「政府による放水」ではなく「自然災害(大雨)」とされてしまうと、住民は国からの特別な補償金を受け取れなくなる恐れがありました。そのため同年8月4日、覇州市の被災者たちが市役所の前に集まり、「放水が原因なのに、なぜ雨のせいにするのか」と書かれた横断幕を掲げて抗議活動を行いました。この時は、警察の機動隊と衝突する事態にもなっています。こうした住民からの強い抗議を受け、翌日、覇州市政府は被害が放水によるものであると公式に認め、補償を行うと約束しました。その後、問題となったテレビ局の報道も取り下げられています。

 今回の三河市での抗議活動は、こうした2023年の覇州市での出来事が直接的な原因となっています。住民たちは、一度村が水没してしまえば、自然災害として処理され、十分な補償が受けられなくなることを警戒しています。そのため、工事が始まる前に現場に集まり、自分たちの生活と財産を守るための行動を起こしました。

(翻訳・吉原木子)