中国人観光客が黄河の壺口(フーコウ)瀑布(ばくふ)の外で、「お母さん、会いに来たよ」と大声で叫ぶ動画がネット上で一気に拡散しました。本来は「母なる川」に向けたユーモアのある呼びかけにすぎなかったのに、景勝地側が「名誉権の侵害だ」として通報したことで、世論の怒りに火がつきました。

 発端となったのは、ネットユーザーが投稿した「節約旅行で壺口瀑布へ」という動画です。彼は景勝地の外に立ち、激しく流れる黄河に向かってこう叫びました。

 動画の位置情報によると、撮影場所は山西省の壺口瀑布景勝地の外でした。投稿後、景勝地側はプラットフォームに対し、この動画は「悪意ある攻撃であり、中傷であり、事実をねじ曲げたものだ」と通報しました。さらに「壺口瀑布は当社が開発した観光地である」とまで書いていたのです。

 この一文が、ネット上の怒りを一気に爆発させました。

 「黄河はお前たちが掘ったのか」

 「滝がどうしてお前たちの開発したものになるんだ」

 「入場料が約2200円(100元)もするのは事実だろう。彼は人を罵ったわけでもなく、ただ二言三言(にごんさんごん)叫んだだけだ」

 さらに、多くのネットユーザーは、「自然の景観を囲い込んで入場料を取る」こと自体に矛先を向けています。

 「黄河は中国のすべての人々にとっての母なる川だ。それを囲い込んで入場料を取るなんて、中国国民全体に対する皮肉ではないのか」

 報道によると、今年の3月17日午前11時、このネットユーザーが「母なる川」に向かって叫んだ元の動画は、すでに約12万件近い反応を集めていました。山西省の黄河壺口瀑布景勝地の公式ティックトックのコメント欄や配信ルームも、多くのネットユーザーの批判であふれました。これに対し、山西省黄河壺口瀑布景勝地の職員は、「通報したのは私たちではない」と説明し、動画の撮影場所についても「実際には陝西省側の黄河壺口瀑布景勝地だ」と述べました。

 公開資料によると、壺口瀑布は中国の黄河中流に位置する、国家5A級の非常に有名な景勝地で、中国で2番目に大きい滝とされています。上流の黄河の川幅は300メートルありますが、500メートルにも満たない短い区間の中で、幅20メートルから30メートルほどに一気に狭められます。20メートル以上の切り立った崖から激しく流れ落ち、「千里を流れる黄河の水が一つの壺に注ぎ込まれるようだ」と形容される壮大な景観をつくり出しています。

 また、九寨溝(きゅうさいこう)風景名勝区を訪れた観光客が、現地の料金システムに不満を漏らす動画を投稿し、こちらもネット上で大きな話題になりました。

 公開資料によると、九寨溝景区では入場券と観光バス料金が別々に徴収される仕組みが採られており、繁忙期の入場券は約4200円(190元)で、観光バスは約2000円(90元)となっています。観光客は、九寨溝の「入場券プラス観光バス」という徴収方式について不満を訴え、ネット上では「自然の景観までセット販売のようにして料金を取っているのではないか」と疑問の声も上がりました。

 動画の中で観光客は、「入場料だけで約2200円(100元)以上するのに、中に入ったらさらに観光バス代まで払わなければならない。しかも、バスに乗らなければ奥まで行けない。これって、実質的な強制購入じゃないのか」と話しています。この内容はその後、SNS上で急速に広がっていきました。

 多くのネットユーザーは、九寨溝のこうした料金システムを「行き過ぎた商業化」と結びつけて見ています。

 「自然景勝地は名目上は保護と言いながら、実際にはあれこれ名目をつけて何重にも料金を取っている」

 「入場券に車代、さらにロープウェー代まで、次から次へと金を払わされる」

 「いまの観光地は、入口そのものをわざと遠い場所に設けていて、シャトルバスに乗らなければ中に入れないところが本当に多い」

 ティックトックでは、新疆ウイグル自治区のカナスを訪れた観光客が、自分の体験を語った動画も投稿していました。

 「カナスは、私がこれまで行った中でいちばん体験の悪い観光地だった。本来ならシャトルバス1本で目的地まで行けるはずなのに、わざわざ区間ごとに分けて乗らされる。もうこれで3回目の観光バスだ。入場券を買ったうえで、さらに乗車券まで強制的に買わされるだけでも十分なのに、今度はカナス湖を見に行くのに、また新たにもう一回チケットを買えと言われる。まさにチケットの上にまたチケットだ。カナスの景色そのものは本当に素晴らしい。でも、正直もう楽しむ気分にはなれなかった。入場券と乗車券で済むと聞いていたのに、ぐるぐる回されたあげく、また約440円(20元)を追加で払えと言われる。20元がものすごい大金だと言いたいわけではない。ただ、こういうやり方が本当に嫌な気持ちにさせるのだ。どれだけ景色がよくても、こんな気分では落ち着いて見ることなどできない」

 カナスは中国新疆ウイグル自治区北部のアルタイ山脈中部に位置し、カザフスタン、ロシア、モンゴルの国境地帯にも近い場所にあります。中国では有名な国家5A級観光地で、「この世の浄土」「神の裏庭」とも呼ばれています。湖、森林、草原、雪山、渓谷が一体となった原始的な自然景観で知られています。

 カナス景区は面積が非常に広く、見どころも各地に分散しているため、本来ある程度の交通接続が必要なのは事実です。しかし、ネット上では多くの観光客が、「料金を取ること自体が問題なのではない。取り方が細かすぎるし、多すぎるんだ」「自然の景観が一つの商品パッケージのように切り分けられ、何段階にも分けて売られている」「これは保護なんかじゃない。自然の景観を細かく切り分けて売っているだけだ」などという声が上がっています。

 ネット上の議論では、黄河の壺口瀑布や新疆のカナスだけでなく、ほかの多くの観光地についても、ネットユーザーから不満や批判の声が上がっています。

 青海湖では、一部の湖岸が企業に請け負われ、柵や有料の入場口が設けられているといいます。これに対し、ネットユーザーからは、「青海湖はお前たちが掘ったのか。数百キロもある湖を全部囲って金を取るのか」「湖はみんなのもののはずなのに、どうしてどこへ行っても入場料が必要なんだ」といった不満が出ています。

 「青海湖は、私がこれまで行った中でいちばん不快だった場所だ。道路に料金所を設けて金を取り、あれほど大きな湖まで囲って入場料を取る。囲って金を取るだけでもひどいのに、駐車料金まで取られる。まるで人工の湖か何かみたいじゃないか」

 ネット上で観光客が景勝地に不満をぶつけるこうした騒動は、表面的にはそれぞれ違って見えても、根本にある問題は共通しています。

 まず一つ目は、自然の景観を囲い込んでしまっていいのかという点です。ネットユーザーから最も多く上がっている疑問は、「山はもともと自然のものだし、道だって最初からそこにあったものなのに、どうして何でもかんでも有料になるのか」というものです。「自然の景観は、誰か一企業の私有財産ではない」という声も少なくありません。

 二つ目は、料金設定が本当に透明で妥当なのかという問題です。

 三つ目は、景勝地の管理と商業化の境界線はいったいどこにあるのかということです。景勝地側はよく「環境保護のため」「人の流れをコントロールするため」と説明しますが、それに対してネットユーザーは、「保護が必要なのは理解できる。でも、どうして保護を理由にするほど料金がどんどん高くなるのか」「問題は保護そのものではなく、行き過ぎた商業化ではないのか」と問い返しています。

 数多くの議論の中で、何度も繰り返し引用されている言葉があります。

 「料金を取ること自体が悪いわけじゃない。ただ、山や湖が丸ごと囲い込まれて、入場券を売るための商品みたいに見えてしまうのは違う」

 この言葉には、多くの観光客が抱いている本音がそのまま表れています。景勝地に維持費がかかることは、誰もが理解しています。交通整理や移動手段の確保が必要なことも分かっています。しかし、自然の景観そのものが「私物化」され、「商品」として細かく切り分けられていくことには、納得できない人が多いのです。

 ネットユーザーたちは最後にこうまとめています。

 「料金を取るなら、せめて納得できる形にしてほしい」

 「保護を掲げるのはいい。でも、それを言い訳にしてはいけない」

 「自然の景観はすべての人のものであって、何重にも囲い込まれるべきではない」

(翻訳・藍彧)