近年、中国では水源汚染の問題に注目が集まっています。そんな中、水道業界の内部事情を明かす動画がネット上で拡散され、多くの人が「毎日口にしている水は本当に安全なのか」と改めて考え始めています。
3月31日、Xアカウント「夸克説(クォークせつ)」が1本のティックトック動画を転載しました。動画の中で、長年浄水業界に携わってきたエンジニアは、こう率直に語っています。
「中国の多くの浄水場で使われている従来型の処理方法では、もはや現在の汚染に対応しきれない。浄水場で行われている凝集、沈殿、ろ過、消毒という4つの工程は、100年前から続くやり方だ。もともとは泥や細菌のようなものを処理するためのもので、現在の工業排水や農業排水に含まれる重金属、農薬の残留物、有機化学物質など、水に溶け込んだ汚染物質を処理するのは難しい 」
重金属は沈殿せず、農薬の残留物はろ過だけでは取り除けません。工業由来の有機物も、塩素消毒をしたからといって消えるわけではありません。こうした水に溶け込んだ汚染物質は、蛇口をひねればそのままコップに入り、そして人の体に入っていきます。
同エンジニアは、シンプルでありながら鋭い問いも投げかけました。
「30年前の川と今の川とで、水質が同じはずはない。水源は変わっているのに、処理技術が進化していないのなら、私たちの家の蛇口から出る水を、30年前と同じように安心して飲めるのだろうか 」
この動画はたちまち大きな反響を呼び、ネットユーザーの間で議論が広がりました。
「つまり、浄水場から出てくる水自体が基準を満たしていないということではないか」
「杭州の汚水騒動のとき、多くの人が自分の地域の水質検査報告を調べていたが、基本的に大腸菌などが含まれていた。だから欧米のように水道水をそのまま飲めないんだ」
「幹部たちは食べる物も使う物も特別供給だ」
「私はもう何年も水道水を飲んでいない。蒸留して煮沸した純水しか飲まない。多くの地域では、水道水の重金属が深刻に基準超過している」
「沿海部にいるときは朝の尿にほとんど泡が立たないのに、実家に帰ると泡の量が異常に多い。病気になったのかと思うほどだ」
「水源汚染がこれほど深刻だから、ここ数年、中国でがん患者が増えているのも不思議ではない」
「今では中国国内の多くのマンション団地に、浄水器付きの給水機が設置されている。専用カードを買って、そのカードで水をくむ仕組みで、1本あたりは数元程度なので、市販の純水を買うよりは安い。でも品質が本当に純水より良いのかは分からない」
こうした不安の声は、中国のネットユーザーや業界関係者だけのものではありません。国際的な学術界でも、この問題は以前から注視されてきました。
フランス紙「ル・モンド」は、中国の水問題と食糧安全保障の専門家であるジュヌヴィエーヴ・ドネルロン=メイ氏の分析を紹介したことがあります。彼女は、中国が深刻な水危機に直面しており、その問題は一つではなく、いくつもの層にまたがっていると指摘しています。
まず挙げられるのは、水の量そのものの問題です。中国には世界人口のおよそ18%が集中している一方で、水資源は世界全体のわずか6%しかありません。さらに重要なのは、水資源の分布が極端に偏っていることです。中国北部には全国人口の25%が暮らし、GDPの27%を生み出しているにもかかわらず、水資源の総量は全国の4%しかありません。
水が足りないため、地下水への依存は避けられません。ドネルロン=メイ氏は、中国北部では工業用水の50%、農業用灌漑水の33%、都市生活用水の65%が地下水に頼っていると指摘しています。こうした過剰なくみ上げが数十年も続いた結果、華北平原の帯水層の水位は下がり続け、世界でも最も深刻な地下水の過剰採取地域の一つになっています。
次に深刻なのが、水質の問題です。彼女によれば、中国にある水資源の多くは、すでに高度に汚染されています。2016年には、中国政府自身が行った調査で、地下水の80%が汚染されていることが示されました。汚染物質には、重金属やヒ素などが含まれていました。
この数字は海外メディアが出したものではなく、政府内部の調査報告に基づくものです。
水そのものが少ないうえに、残された水も深刻に汚染されています。これが中国の水資源が抱える二重の苦境です。
もし工業排水や農業汚染が、ある意味で日常的な問題だとするなら、レアアース採掘による汚染は、さらに深く、さらに解決が難しい時限爆弾だといえます。
2025年7月、BBCの記者は中国の主要なレアアース採掘拠点である2つの地域を取材しました。1つは内モンゴル自治区包頭(パオトウ)市の白雲鄂博(バヤンオボー)鉱区、もう1つは江西省贛州のレアアース産地です。そこで記者たちが目にしたのは、人工湖にたまった放射性の泥でした。現地住民は、水源や土壌が深刻に汚染されていると訴えており、そうした汚染が地域で多発するがんや新生児の先天性異常と直接関係しているとみられています。
『レアアース・フロンティア』の著者であるジュリー・クリンガー教授は、鉱区周辺の住民は、中国当局の「まず汚して、あとで対策する」というやり方の犠牲者だと指摘しています。その影響はすでに取り返しがつかない段階にあるとも断言しました。
白雲鄂博の尾鉱ダムは1950年代に造られたもので、鉱山廃棄物を投棄するための人工湖です。全長は11キロに及び、今も放射性元素トリウムを含む灰色の汚泥で満たされています。研究者たちは、こうした有毒物質が地下水にゆっくりとしみ込み、黄河の方向へ移動していると警告しています。黄河は、中国北部で数億人もの人々を支える重要な水源です。
包頭の尾鉱池周辺では、2010年以前の数十年間にわたり、多くの村民が骨や関節の変形と診断されてきました。原因は、水中のフッ化物濃度が深刻に高かったためです。また、急性ヒ素中毒の症状を示した村民もいました。その後、政府は住民を移転させましたが、汚染そのものが消えたわけではありません。汚染は今も土地に残り、水の中にも残ったままです。
ここで驚くべき数字があります。レアアース金属を1トン採掘するたびに、およそ2000トンもの有毒廃棄物が生み出されるのです。
現在、中国は世界最大のレアアース生産国であり、世界需要のおよそ60%から70%を供給しています。スマートフォン、電気自動車、太陽光パネル、軍事装備。現代社会はレアアースへの依存を急速に強めています。しかし、その電池1つ、モーター1台の裏側では、数千トンもの有毒廃棄物が積み上がり、やがて水の中へとしみ込んでいきます。
今、中国政府は過去のレアアース開発ブームが環境に与えた傷を抑え込もうとしながら、海外での採掘事業も拡大しようとしています。しかし科学者たちは、すでに生じた生態系への損傷は、回復までに数十年、あるいはそれ以上かかる可能性があると警告しています。
汚染が地下水系に入り込んでしまえば、浄化にかかるコストは一気に跳ね上がります。こうした金属がどこで採掘されようと、適切な解決策がなければ、自然も人々の暮らしも危険にさらされ続けることになります。
中国の水質汚染の問題は、突き詰めれば制度そのものの問題です。国民の健康を長年軽視し、情報の透明性を抑え込み、責任を問う仕組みも十分に機能してこなかったのです。その代償を、最後に支払わされるのは、結局すべての人々なのです。
(翻訳・藍彧)
