中国経済の減速が続く中、国内の自動車ディーラーはかつてない冬の時代を迎えています。政府は今年、「買い替え促進」などの補助金政策で消費刺激を図っていますが、市場は期待通りに回復せず、深刻な低迷に陥っています。中国の上場ディーラーグループ8社が発表した2025年の決算報告によると、黒字を確保できたのは1社のみで、残り7社はすべて巨額の赤字に陥っています。中でも、業界最大手の中升グループは約2兆3350億円の売上高に対し、純損失が約390億6455万円に達しました。永達汽車は黒字から約70億500万円超の赤字に転落し、正通汽車の赤字規模はさらに約581億4150万円へと拡大しています。終わりの見えない熾烈な価格競争により各社の利益は大きく削られ、業界全体が悲鳴を上げています。

 
 このような業界全体の巨額な赤字と資金繰りの悪化は、販売現場に相次ぐ倒産や深刻な離職の波を引き起こしています。15年販売に携わった天津市の楊さん(仮名)は、ゼネラルマネージャーまで昇進しましたが、今年やむなく退職しました。過剰なサービスや顧客満足度を競い合った結果、赤字経営に陥り、今後は最低限のサービスすら維持できなくなると語ります。また、2026年後半には業界内でかつてない規模の離職ドミノが起きると懸念しています。
 
 現場の販売員たちも市場の冷え込みを肌で感じています。17年のキャリアを持つ陝西省の販売員、明陽さん(仮名)は、現在の市場環境は以前よりも大幅に悪化し、競争が激化する一方で顧客は6割も激減していると指摘します。また、国内の正規ディーラーが大規模な淘汰の波に飲み込まれるのは避けられないことだとみています。河南省鄭州市では、借金で生活費をまかないながら働く窮地に立たされた販売員もいます。給与の遅配が続く中、販売員は価格競争だけでなく生活の不安とも戦わなければなりません。一方、広西チワン族自治区桂林市ではさらに悲惨な状況が起きています。あるディーラーでは、他の取り扱いブランドの経営破綻によりグループの資金繰りが悪化し、オーナーが広西の複数都市で展開していた20以上の店舗がすべて営業停止となりました。さらにオーナー自身も資金を持ち逃げして失踪しています。経営陣が沈黙を貫く中、多くの従業員は未払い給与を抱えたまま突然職を失っています。
 
 この危機をもたらした最大の要因は、新車の深刻な仕入れ値割れ(逆ざや)です。これに対し中国自動車工業協会の報告書が厳しい現実を浮き彫りにしています。2025年の業界全体の新車販売総利益率はマイナス21.5%へと暴落し、高級車ブランドはさらにマイナス26.2%にまで落ち込みました。これは車1台を売るごとに、平均して車体価格の2割以上をディーラーが負担する赤字販売を意味します。全国のディーラーの実に55.7%が赤字状態にあり、黒字店舗は4分の1にも満たない状況です。8割を超える店舗が新車価格の逆ざやに直面し、そのうち半数以上の店舗でその幅が15%を超えています。専門家が指摘する通り、この逆ざやがディーラーの利益を完全に圧迫し、近年の相次ぐ店舗倒産の要因となっています。
 
 しかし、これほどの大幅値下げでも消費者の購買意欲を喚起できていません。2026年に入り、市場の冷え込みはますます顕著です。中国自動車工業協会が4月に発表したデータによると、今年第1四半期の国内自動車販売台数は482万3000台にとどまり、前年同期比で20.3%も大幅に減少しました。新エネルギー車の販売台数も200万6000台と、前年同期比で23.8%減少しています。かつて好調だった高級車市場も例外ではありません。トップブランドのメルセデス・ベンツを例に挙げると、今年第1四半期、アメリカおよびヨーロッパ市場ではそれぞれ20%、7%の販売増を達成したのに対し、中国市場での販売台数は27%も急減し、際立ったコントラストを見せています。
 
 何が消費者にここまで財布の紐を固く締めさせているのでしょうか。ベテラン販売員によれば、度を超えた値下げ競争は購買意欲を刺激するどころか、逆に消費者に強い様子見の心理を植え付けています。メーカーが原価割れを起こしていても、消費者は依然として割高感を持っており、さらなる値下がりを待ち、安易には購入しません。ある自動車系インフルエンサーは現在の状況を次のように言い表しています。昨年の減税措置終了で消費マインドは一気に崩壊しました。それに加えて新車が次々と投入され、無秩序な値引き合戦が繰り広げられた結果、値下がりすればするほど買い控えるという完全な悪循環に陥っているのです。ショールームには客の姿がなく、在庫ばかりが積み上がり、資金繰りは悪化する一方です。売っても赤字、売らなければさらに赤字という絶望的な状況です。
 
 結局のところ、自動車市場の不況はこの業界だけの問題ではありません。経済動向に詳しい専門家は、中国経済全体の減速や内需低迷といったマクロ環境と密接に関連すると分析しています。節約志向が社会のトレンドとなる中、雇用の悪化と収入減が重なり、消費への不安が広がっています。自動車は代表的な高額耐久消費財であるため、その市場動向は経済環境の変化に対して特に敏感に反応します。消費者が一様に防衛的な貯蓄に走り、支出を切り詰めている現状を鑑みると、自動車業界が本格的な回復に向かい、この長いトンネルを抜け出すまでには、まだかなりの時間を要するでしょう。

(翻訳・吉原木子)