2024年4月中旬から下旬にかけて、中国の北から南まで広い範囲が、まるで巨大な気象の渦に巻き込まれたかのような状況に陥りました。極端な天候が、前例のない激しい勢いで、ほぼ同時に各地で発生したのです。

 北方の北京・天津・河北省地域では空を覆い尽くす黄砂が発生し、西南の内陸部では雷雨とひょうが猛威を振るい、さらに華南では大規模な洪水が広がりました。こうした異常気象は、社会の正常な機能にも、人々の日常生活にも、目に見える大きな打撃を与えています。

 4月19日、北京の空は、重く押しつぶすような黄褐色に覆われました。中国北西部の乾燥地帯から飛来した砂じんが、強い北西気流に押し流される形で南下し、華北平原を一気にのみ込んだからです。

 強風が吹き続ける中、街の道路はあっという間に土ぼこりに覆われました。高層ビルの輪郭は砂の幕の向こうでぼやけ、視界は急激に悪化しました。空も地上も暗くかすみ、昼間なのに薄暗く感じるような光景に、多くの市民が強い不安を覚えました。SNSには現場を映した動画が次々と投稿され、そこに映っていたのは、ほとんど土色一色の空と、激しく揺れ続ける街路樹ばかりでした。その映像は、まるで終末の世界のような強烈な印象を与えるものでした。

 北京市生態環境監測センターのデータによると、今回の砂じんは強度の面でも極めて異例だったとされています。砂じんが北京に到達する前、風上にあたる内モンゴル自治区ウランチャブ市では、19日午前6時の時点でPM10のピーク濃度が、驚くべきことに1立方メートルあたり4000マイクログラムを突破しました。続いて河北省張家口市でも、午前9時のPM10濃度が1立方メートルあたり1664マイクログラムに達しました。この巨大な砂じん帯は、午後1時ごろには北京全域を覆い、市内のPM10濃度を短時間で急上昇させました。

 同日午後、北京市内ではところどころで雨まで降りました。雨粒は空中の砂じんと混ざり合い、泥のしずくとなって地面に落下しました。その結果、屋外に止めてあった車や道路の表面は泥で汚れ、空気の中には重たい土のにおいが濃く漂いました。ただ視界が悪くなるだけではなく、街全体が泥と砂に包まれていくような感覚に襲われたのです。

 北方の住民が黄砂の中でもがいていたその一方で、西南部の重慶市でも、恐怖を感じるような雷鳴の夜が訪れていました。19日午後6時ごろ、重慶市中心部では、それまで明るかった空がわずか数分のうちに黒い雲に完全に飲み込まれ、その直後、耳をつんざくような激しい雷鳴が響き渡りました。

 重慶市気象台の観測によると、19日午後6時から翌日午前4時までの、わずか8時間の間に、重慶地域で記録された落雷回数は合計8068回にのぼりました。これは、雷雨が最も集中した時間帯には、平均すると1分間に十数回もの稲妻が夜空を引き裂いていたことを意味します。そこへ猛烈な豪雨が加わり、1時間あたりの降雨量も驚異的なレベルに達しました。

 突然の豪雨によって、都市の排水システムには大きな負担がかかり、重慶市内のあちこちの低地では深刻な冠水が発生しました。重慶育才中学の周辺では、地形の起伏が大きいこともあり、激しく流れ込んだ雨水が一か所に集まり、まるで街の中に滝が現れたかのような都市型の激流が生まれました。中心市街地の複数の場所では、水が車のタイヤをのみ込むほどにたまりました。

 SNSでは、市民から「深い場所なら船が出せそうだ」と驚きを込めた声まで上がりました。それほどまでに浸水は深刻で、当日の夜から翌日の昼にかけて、市内の交通は明らかな影響を受けました。道路の通行は乱れ、多くの人の移動に支障が出たのです。

 こうした不安定で激しい対流性の天候は、貴州省ではさらに別のかたちで猛威を振るいました。それが、極めて破壊力の大きいひょう災害です。19日午後の時点では、貴州省の各地で気温はまだ25度前後を保っていました。ところが、午後4時から5時にかけて、天候は急変しました。

 六盤水市(ろくばんすいし)では、密集したひょうが、まるで豪雨のような勢いで一気に降り注ぎ、その状態が1時間以上も続いたといいます。現地住民の話では、ひょうの大きさは全体的に卵ほどもあり、高速で落下してくる氷の塊は凄まじい破壊力を持っていました。その衝撃で、多くの農家では屋根瓦が直接打ち抜かれ、屋外に止めてあった車のフロントガラスも次々と粉々に砕けました。

 ひょうはごく短時間で地面を埋め尽くしました。わずか30分ほどの間に、六盤水市の道路や畑には厚さ30センチにもなるひょうの層が積もり、一面がまるで真冬の雪景色のような白さに変わったのです。目の前の景色だけを見れば、春ではなく冬に逆戻りしたかのように見えたはずです。

 しかし、地元の農民にとって、その白い景色は美しいものではなく、まさに壊滅的な被害そのものでした。収穫期を迎えようとしていた小麦や菜種、さらにようやく育ち始めていたトウモロコシやタバコは、激しいひょうに繰り返したたかれ、広い範囲で茎が折れ、畑は見るも無残な状態になりました。農家にとっては、長い時間をかけて育ててきた作物が、一度の異常気象で踏みにじられたも同然の打撃だったのです。

 中国南方の広い地域では、こうした極端な雨そのものが、すでに1か月以上も続いています。気象データによると、3月15日から4月19日までの期間、貴州省から華南一帯にかけての累積降水量は、平年の同時期に比べて5割増しから倍近くに達し、一部地域ではそれ以上となりました。江西省上饒市、湖南省新邵市、貴州省銅仁市などでは、降水量が、それぞれの地域で気象記録が残るようになって以来、同じ時期としては過去最高を更新しています。

 そして4月21日前後になると、華南の洪水被害はさらに深刻さを増していきました。広東省の北江流域では、極めてまれな規模の大洪水が発生し、公式発表によれば、北江本流では「100年に1度」級とされる特大洪水が起きる可能性があるとされました。

 広東省の韶関市(しょうかんし)や清遠市(せいえんし)などでは、勢いを増した川の水が堤防を越えて市街地へ流れ込みました。その結果、停電が発生し、交通網もまひし、11万人を超える住民が緊急避難を余儀なくされました。現時点で、広東省では洪水による行方不明者や死亡者もすでに出ており、救助隊は強い雨と風の中で、懸命の捜索救助を続けています。

 このように、中国の南北で同時進行する異常気象に直面し、各地の当局は重大気象災害レベル4の緊急対応を相次いで発動しました。現在もなお、中国南部の各省では激しい雨が続いており、山津波や土砂崩れといった二次災害への警戒と対応の圧力は、依然として非常に大きいままです。

 黄砂に襲われた都市、ひょうに屋根を打ち抜かれた農家、水に取り囲まれた町。その一つひとつの数字も、一つひとつの動画も、自然災害の前で追い詰められていく無数の普通の人々の現実を映し出しています。今回のような異例の極端な天候は、すでに単なる気象ニュースではなく、社会全体に深い不安と重い問いを投げかける出来事になっています。

 ネット上では、こうした異常現象をめぐる議論が次々と広がっています。気候変動によって、これほど激しい異常気象がこれから常態化していくのではないかと不安を抱く人もいれば、これは自然界が人間社会に向けて発している警告ではないかと考える人もいます。また、終わりの見えない黄砂に苦しみ、まるで人間の地獄のような環境から少しでも離れたい、せめてきれいな空気を吸いたいと、やり場のない無力感を吐き出すネットユーザーの声も相次いでいます。

(翻訳・藍彧)