4月14日未明、広東省深セン市にあるBYD坪山(へいざん)拠点で大規模な火災が発生しました。同社のグローバル研究開発本部が置かれる坪山拠点は、シンボルである六角形のビルをはじめ、多くの重要研究機関が集結する、BYDの新エネルギー事業の「中枢」とも言える場所です。火災発生のニュースが報じられると、中国のSNS(Weibo)では「BYD火災」などの関連ワードが急速にトレンド入りし、各界から大きな注目を集めました。

 目撃者やネットユーザーが提供した動画によると、火元となった建物は平屋建ての機械式立体駐車場で、炎が底面から急速に上へと燃え広がり、現場では火柱と黒煙が立ち込めていました。近隣の住宅街に住む李(り)さんは、次のように振り返っています。「午前3時頃、激しい爆発音で目が覚めました。窓を開けると、BYD拠点の方向の空が真っ赤に染まっており、立体駐車場全体が炎に包まれていました。物が燃えるパチパチという音が絶え間なく響き、鼻を突くような異臭が風に乗って漂ってきました」。また、午前6時頃に現場を通りかかったという市民の王(おう)さんは、「その時間帯でも、現場の黒煙が空を覆い、辺りには焦げた匂いが充満していました。消防車が次々と駆けつけており、火の手の激しさがうかがえました」と語っています。

 火災発生を受け、BYD側は直ちに避難措置を講じました。従業員の張(ちょう)さんによると、午前2時50分には敷地内で緊急避難通知が出され、従業員らは速やかに安全なエリアへ避難したといいます。張さんは、「火元となった立体駐車場は20号工場のすぐ隣にありますが、試験車両や廃棄車両を専門に保管する場所であり、量産車の生産ラインとは離れています」と話しています。

 火災発生後、深セン市坪山区の消防当局などが直ちに現場へ駆けつけ、多数の消防車と消防隊員を動員して消火活動に当たりました。午前2時台に発生した火災は、午前8時26分になってようやく完全に鎮火され、消火活動は約6時間にも及びました。

 消火にこれほどの時間を要した背景には、新エネルギー車に搭載されているバッテリー火災特有の難しさがあります。火元となった立体駐車場には、駆動用バッテリーを搭載した試験車両や廃棄車両が大量に停められていました。リチウムイオンバッテリーは一度発火して「熱暴走」を起こすと、瞬時に大量の高温可燃性ガスを放出するだけでなく、内部の化学反応によって自ら酸素を発生させます。そのため、空気を遮断する従来の消火方法(粉末や泡消火剤など)は効果が薄いとされています。消防隊員は再燃を防ぐため、バッテリー内部の反応が完全に停止するまで、大量の水を使い、長時間にわたって継続的に放水して冷却し続ける必要があります。さらに、立体駐車場内は車両が密集して積み重なっているため、1台の車両から発せられた高温が周囲の車両に引火しやすく、「ドミノ倒し」のように連鎖的な延焼を引き起こします。これが火の回りを早め、消火活動をさらに困難なものにしました。

 安全確保のため、消火活動中は現場周辺で一時的な交通規制が敷かれました。また、近隣の学校2校も教職員と児童・生徒に対して一時登校を見合わせるよう通知し、周辺に人が密集するのを防ぎました。幸いにも、この火災による死傷者は確認されていません。環境モニタリングデータによると、現場周辺で有害ガスの基準値超過は確認されておらず、近隣住民の健康への影響も報告されていません。鎮火後、交通規制は順次解除されました。

 その後の調べで、出火原因と被害状況が次第に明らかになってきました。当局の初期調査によると、今回の火災は外部施工業者による不適切な作業が原因とみられています。発表によりますと、外部業者が20号工場の遊休設備を撤去する際、必要な防火対策を怠ったことで設備周辺の断熱材に引火し、隣接する立体駐車場へと急速に燃え広がったとされています。安全管理上の重大な過失による事故と見られています。関係者によると、被害を受けた駐車場内には、セダンやSUVなど複数の新エネルギー車の試験車両、品質検査の不合格車両、廃棄車両など計1,000台以上が停められていました。暫定的な見積もりでは、今回の火災による車両の直接的な被害額は1,000万元(約2億1,000万円)を超えると見られています。

 駆動用バッテリーの安全性に対する世間の懸念に対し、BYDはメディアに向けて正式な見解を発表しました。出火現場は試験車両および廃棄車両専用の立体駐車場であり、量産車や同社独自の「ブレードバッテリー」の生産ラインとは一切関係がないことを強調しています。事故の影響を受け、BYD坪山拠点の20号工場および周辺エリアは一時生産を停止し、関連車両の研究開発やテスト作業も一時中断されています。同社は現在、残りの試験車両を別の場所へ移動させるため、代替スペースの確保を急いでいます。

 今回の事故を受け、BYDは直ちに社内向けに安全管理の徹底を求める通知を出しました。同社傘下のすべての生産拠点および研究開発施設において、消防設備と施工管理プロセスを全面的に点検するとともに、外部業者が関わるすべての施工プロジェクトを一時停止しました。同時に、専門的な安全研修を実施し、火気を使用する作業、設備の撤去、倉庫管理などの各プロセスにおける安全管理体制を重点的に強化する方針です。

 世界的な新エネルギー車メーカーであるだけに、今回のBYD拠点で発生した大規模な火災は高い注目を集めました。しかし、幸いにも企業の中心的な生産体制には波及しておらず、同社の短期的な経営への影響は限定的と見られています。現在、現場の片付けや被害状況の確認、および安全対策の改善作業が順次進められています。BYDは今回の事故を重く受け止め、管理体制を見直し、類似事故の再発防止に努めていくとしています。

(翻訳・吉原木子)