4月3日、中国の民間宇宙企業である天兵科技が開発した大型液体運搬ロケット「天龍3号」が初打ち上げで失敗し、世論と資本市場の双方に大きな波紋を広げました。

 公開情報によると、ロケットは同日午後0時17分に打ち上げられましたが、上昇後まもなく飛行に異常が発生し、最終的に任務は中止となりました。このニュースは瞬く間にネット上の話題となり、資金が集まっていた商業宇宙関連銘柄もその日の午後にははっきりと値を下げ、関連株の多くが大きく下落しました。

 「天龍3号」は、中国の民間宇宙企業が中大型運搬ロケット分野で飛躍を目指すうえで、極めて重要な機体と見なされてきました。設計目標は、SpaceXのファルコン9を直接意識したものです。全長は約72メートル、直径は3.8メートル、打ち上げ重量は約600トンで、9基の液体酸素・ケロシンエンジンを搭載しています。高い推力と高頻度での打ち上げ能力を強く打ち出しているのも特徴です。主な任務は、中国の低軌道衛星インターネット構築を支えることで、とくに36基の衛星を一度に打ち上げる任務を担い、今後の大規模な低軌道衛星ネットワーク形成を支えることが期待されていました。

 実際、この機体で問題が起きたのは今回が初めてではありません。2024年には地上試験の際、本来なら打ち上がるはずのない状況でロケットが突然発射され、その後に墜落する事故が起きていました。今年の打ち上げ失敗によって、外部からは再び、その技術の完成度や信頼性に厳しい目が向けられています。急拡大の局面にある中国の民間宇宙企業にとって、こうした重要機種のつまずきは、一社だけの問題にとどまらず、業界全体の信頼にも大きな影を落とします。

 中国の民間宇宙企業が台頭し始めたのは、2014年に政府が打ち出した「軍民融合」政策がきっかけでした。この政策のもとで、民間資本が宇宙分野へ参入することが認められるようになりました。2015年に「国家民用空間インフラ中長期発展計画(2015〜2025年)」が打ち出されると、それまで長く政府主導だった宇宙開発の世界が、初めて本格的に民間企業へ開かれました。こうした政策支援と資金流入を背景に、藍箭航天、星際栄耀、零壱空間など、多くの民間宇宙企業が次々と設立されました。

 これらの企業の多くは、もともと体制内の宇宙開発部門にいた技術者たちによって立ち上げられたもので、当初は小型の固体ロケットを足がかりに、低コストで市場を切り開こうとしていました。2018年前後にはロケット打ち上げの失敗が相次ぎ、業界全体は、これまでの発展モデルでは宇宙分野で大きな成果を出すのは難しいと痛感することになります。2019年には星際栄耀が中国の民間企業として初めて人工衛星の軌道投入に成功しましたが、業界全体の歩みはなお鈍く、資金難に耐えきれず撤退を余儀なくされる企業も出ました。

 2020年代に入ると、ロケット開発の技術路線は、液体燃料と再使用型へと大きくシフトし始めました。藍箭航天の「朱雀2号」は、2023年に人工衛星の軌道投入に成功し、液体燃料技術における重要な突破口と見なされました。同時に、星河動力や天兵科技などの企業も、小型ロケット分野で徐々に成功実績を積み重ね、中国の民間宇宙企業によるロケット打ち上げ成功回数は目に見えて増えていきました。

 2025年には、中国の商業運搬ロケットの打ち上げ総回数が90回を超え、そのうち民間企業による打ち上げは23回に達しました。こうして、国有企業と民間企業が並行して発展する構図が形作られていきました。

 しかし、業界が急速に拡大する一方で、構造的な矛盾も次第に表面化していきます。最も大きな問題は、中大型ロケットの運搬能力が不足していることです。小型ロケットの打ち上げは増えているものの、10トンを超える輸送任務を担える安定した能力は、民間企業では長い間築けていませんでした。その結果、打ち上げ能力と衛星製造の間に明らかなずれが生まれています。衛星は多いのに、打ち上げるロケットが足りないというアンバランスは非常に目立っており、一部の衛星企業は自らロケット企業に出資したり、自前で立ち上げたりする動きまで見せています。

 こうした需要と供給の食い違いは、低軌道衛星インターネットの整備でとりわけ鮮明に表れています。中国版「スターリンク」と呼ばれる「千帆星座」計画は、まさにその状況の中で進められている中核プロジェクトです。この計画は、上海の関連研究機関が主導しており、段階的に衛星ネットワークを構築する構想です。2025年末までにおよそ648基の衛星を配備し、2027年までに1296基へ拡大して世界規模のカバーを実現し、最終的には15000基を超える巨大な衛星ネットワークの構築を目指しています。

 この計画は、単なる通信産業の高度化にとどまらず、軌道資源と周波数資源をめぐる争いとも深く結びついています。国際ルールでは、低軌道の位置や通信周波数帯には「早い者勝ち」の性格があり、先に配備を進めた側が優位に立つ構図になっています。だからこそ、速く、しかも安定して打ち上げられる能力が、衛星コンステレーション構築の決定的な支えになるのです。

 2026年3月30日、中科宇航が開発した「力箭2号」は初打ち上げを完了し、3基の衛星を無事に軌道へ投入しました。これは、深刻化していた打ち上げ能力不足をやわらげる重要な前進と受け止められました。

 しかし、「天龍3号」の打ち上げ失敗は、この流れに大きな影を落としました。もともとの計画では、この機体がより高密度の衛星打ち上げ任務を担うはずで、1回で最大36基もの衛星を搭載できる、衛星ネットワーク構築の中核的な存在と見られていました。「力箭2号」は打ち上げに成功しましたが、その輸送能力は「天龍3号」に大きく及ばず、まだ安定供給できる段階には入っていないため、「天龍3号」が担うはずだった打ち上げ需要を支えるには力不足です。

 中国の民間宇宙企業が揺れる中、米国の民間宇宙企業SpaceXは、改めてその成熟した技術力を見せつけました。日本時間4月7日午前、同社の「ファルコン9」ロケットが、カリフォルニア州のヴァンデンバーグ宇宙軍基地から打ち上げられ、25基の「スターリンク」衛星を近地球軌道へ送り込みました。これは、SpaceXにとって2026年に入ってから42回目の軌道投入任務となり、極めて高い打ち上げ頻度と安定性を改めて印象づけました。

 さらに注目を集めたのは、このロケットが任務を終えたあと、太平洋上の無人回収船への着艦に成功し、正確に回収されたことです。こうした再使用技術がすでに日常的に運用されていることで、打ち上げコストは大幅に下がり、SpaceXは世界の宇宙開発競争で明確な先行ポジションを築いています。

 それに比べると、中国の民間宇宙企業も打ち上げ回数や技術面の挑戦では前進を見せているものの、高頻度での打ち上げ能力、ロケット回収技術、そしてシステム全体の安定性という点では、なお大きな差があります。「天龍3号」の失敗と、「ファルコン9」が打ち上げ後に安定して回収された事実を並べて見ると、その差はさらに際立ちます。そしてそれは同時に、中国の民間宇宙企業が置かれている厳しい現実も浮き彫りにしています。

(翻訳・藍彧)