このほど、中国のSNS上で拡散された1本の動画が波紋を広げています。動画はもともとティックトックに投稿され、その後削除されましたが、すでに海外のSNSへ転載されています。
3月28日、Xのアカウント「李老師不是你老師(李先生はあなたの先生ではない)」はこの動画を投稿し、中国軍のある軍事演習で、歩兵戦闘車(IFV)が発射した発煙弾が、前方で演習を視察していた軍幹部の集団に誤って命中し、現場が騒然となったと伝えました。
動画を見ると、走行中の歩兵戦闘車が前方に砲口を向けており、車体には複数の発煙弾が並んで搭載されています。遠くの小高い土の盛り上がりには、数十人が弧を描くように立っており、現場で演習を視察していた「観察員」だとされています。演習の最中、1発の発煙弾が突然発射され、煙を引きながらその土手に向かって一直線に飛び、人が密集している場所で炸裂しました。次の瞬間、現場は一面煙に包まれ、整然と並んでいた人々は一斉に散り散りになって逃げ出しました。動画の中では、車内にいたとみられる人物が「早く行け」「しまった」と叫ぶような声も確認できます。
公開資料によれば、歩兵戦闘車は現代の陸軍における重要装備の一つで、高い機動力による兵員輸送と火力支援の両方を担います。通常は20ミリから40ミリ級の機関砲や対戦車ミサイルを備え、戦車と連携して戦う中核装備とされています。いわゆる「歩戦協同」を支える重要な車両です。一方、発煙弾は主に戦場で視界を遮り、部隊の移動を隠すために使われるもので、殺傷を目的とした兵器ではありません。ただし、至近距離で人体に当たれば負傷する可能性はあります。今回の件について、死傷者に関する公式発表はまだないものの、動画に映ったあまりにも正確すぎる直撃は、演習の安全管理に対する新たな疑問を呼んでいます。
注目すべきなのは、現時点ではこの動画が撮影された具体的な日時や場所は確認されておらず、中国当局も正式な認定を行っていないことです。しかし、最近の中国軍が各種の軍事演習や訓練を相次いで実施しているのは事実です。中国の官製メディアによると、3月中旬には中国とベトナムが第10回国境防衛交流活動を行い、あわせてトンキン湾での合同パトロールも終えました。それ以前には、中国とシンガポールが「合作2025」と呼ばれる陸軍合同訓練を実施しています。さらに2025年末には、中国の東部戦区が台湾周辺で大規模な合同演習も展開しました。こうした流れの中で、この動画が出回ったことで、外部ではさまざまな連想が広がっています。
ネットユーザーからは、次のようなコメントが寄せられました。
「ずいぶん正確に狙っている」
「もう少しで一度に最も多くの将官を仕留めた人物になるところだった」
「幹部たちの逃げ方のほうが演習本番より真剣だ」
「強軍思想を徹底し、腐敗勢力を正確に打撃したのだ」
「これは誤操作には見えない。むしろ狙って撃ったように見える」
一方で、より専門的な視点から分析する声もあります。そうした意見では、問題は操作した兵士個人にあったのではなく、演習全体の運営や配置にあった可能性が高いとされています。とくに、あの土の盛り上がった場所は、普段の訓練では標的として使われていた可能性があり、兵士たちはいつも通りの手順で操作していただけではないか、その一方で軍幹部の側が本来立つべきではない場所に立っていたのではないか、という疑問も出ています。
海外のSNS・Xでは、さらに激しい議論が起きています。あるネットユーザーは中国軍の「戦績」を皮肉まじりに並べ、「対外戦績はゼロ、対内戦績は輝かしい」と対比する一覧を投稿しました。その中でもとくに目を引いたのが、「中央軍事委員会の副主席・委員5人を拘束」というくだりでした。
また、ネット上で広まっている別の内容を引き合いに出し、ある部隊の兵士が食事のひどさに不満を漏らしていたとする声もあります。そうした話は、中国軍の後方支援や補給体制に深刻な問題があるのではないかという見方につながっています。
, 発煙弾誤射, 歩兵戦闘車, さらに、過去の演習で行われた「見せるための演出」に言及する、事情を知る人物とみられる声もあります。たとえば2009年、当時の中国共産党総書記だった胡錦濤が青島で海軍を視察した際、対艦ミサイルの実演が行われたとされます。そのとき胡錦濤が双眼鏡で見ていて、「ミサイルがまだ命中していないのに、なぜ標的艦が先に爆発したのか」と違和感を示したとも伝えられています。胡錦濤の視察に同行していた当時の軍事委員会副主席・郭伯雄(かくはくゆう)は、ミサイルが外れる事態を恐れ、あらかじめ標的艦に爆薬を仕掛けていたと説明せざるを得なかった、という話です。
実際、中国軍では近年、このような「失敗」や物議を醸す出来事が初めて明るみに出たわけではありません。これまでにも、訓練中に味方を誤って負傷させた事例や、装備の誤操作による事故、さらには艦艇同士の衝突といったケースがネット上でたびたび取り沙汰されてきました。加えて、軍内部の粛清も続いており、汚職問題で調査を受けた高級将官の中には、かつて中央軍事委員会副主席を務めた人物まで含まれています。こうした一連の出来事が重なったことで、中国軍の管理体制そのものに対する外部の疑念はいっそう強まっています。
中国軍は、何十年も実戦を経験していない軍であるにもかかわらず、軍事予算が増えれば増えるほど腐敗も深刻になり、地方で見られる腐敗体質が軍内部ではさらに拡大していると言われています。実際、中国の官製メディアでさえ、軍の最大の敵は腐敗だと認めています。2015年には、新華社が、軍では入党や昇進にまで相場があり、小隊級から師団級までそれぞれ「値段」が違うと報じました。かつては、ある軍区司令官が当時の中央軍事委員会副主席・徐才厚(じょさいこう)に約4億円(2000万元)の賄賂を渡したとも伝えられています。徐才厚本人が逮捕された後には、自宅から数十億円規模にのぼる現金が見つかり、あまりの額の多さに、札を数えるための機械が何台も壊れたとまで言われました。
退役軍人の蔡氏は海外メディアに対し、軍の腐敗はあまりにもひどいと語っています。その理由として、部隊はそもそも地方の監督が及ばず、軍事法廷も実際にはほとんど機能していないため、人間関係さえうまく築いていれば何があっても問題にならないと指摘しました。蔡氏は、ある連隊長の例も挙げています。その部隊では、営舎建設の予算として約6億円(3000万元)が下りたものの、その連隊長は実際には約2億円(1000万元)しか使わず、残りの約4億円(2000万元)を自分の懐に入れたというのです。蔡氏は、「こんなのは本当に簡単な話だ。出世したい者は、必ず上に金を渡さなければならない。連隊級の幹部なら、どんな形でも最低でも約1000万円(50万元)からだ。今なら少なくとも約4000万円(200万元)は必要だろう」と語りました。
しかし、それほどの金を着服したこの連隊長が処罰されることはありませんでした。それどころか、師団に異動して副参謀長となり、階級もそのままだったといいます。「数億円も着服したからといって、それがどうしたという話だ。2005年前後なら、数十億円なんてとんでもない額だった。だが、あいつの義父は将軍だった。それで結局、この件もうやむやのまま終わった」
(翻訳・藍彧)
