5月13日の夜、トランプ大統領が北京に到着し、習近平国家主席との会談が行われました。トランプ氏の訪中は2期目に入って初めてであり、2017年以来およそ9年ぶりのことです。この注目を集める国賓訪問の際、同行取材を行っていた米FOXニュースのチームは、北京の街角で思いがけず中国の監視社会の現実を目の当たりにし、話題を呼んでいます。
5月13日から14日にかけて、FOXニュースの看板キャスターであるブレット・ベイヤー氏は、北京から『スペシャル・レポート』を放送しました。番組の中で同氏は、ジョージ・オーウェルの小説『1984年』の有名な言葉「ビッグブラザーがあなたを見ている」を引用し、中国の巨大な監視カメラ網の実態をアメリカの視聴者に向けてレポートしました。
ベイヤー氏は番組内で、取材チームが実際に体験した出来事を語っています。彼によれば、中国に滞在している間、人々の行動はすべて監視されているといいます。当時、チームは取材のためにタクシーをチャーターしていましたが、運転手が道端にわずか2分ほど車を停めたところ、すぐに運転手のスマートフォンにメッセージが届きました。それは、監視カメラに違反駐車が記録されたため、警察から約40ドル(約300人民元)の罰金が科せられたという通知でした。ベイヤー氏は「これが共産主義というものです。彼らは何でも知っています」と驚きを隠せない様子でした。
監視の密度の高さを伝えるため、番組の冒頭でベイヤー氏は北京の海淀地下鉄駅の外に立ち、次のようにレポートしました。「北京は至る所にカメラがあります。この交差点だけでも、少なくとも20個のカメラを確認できました。実際、今年1年だけで、北京では新たに1500個のカメラが設置されているのです」。彼は、このような厳格な監視の下では違反すればすぐに罰金を取られるため、誰も交通ルールを無視して道路を横断しようとはしないと指摘しています。
この体験を通して、ベイヤー氏はこの監視システムが構築された真の目的に疑問を投げかけました。中国側はこれらのカメラが「すべての人に安全を感じさせるため」のものであると説明しているようですが、ベイヤー氏は、真の目的は市民の行動を追跡し、社会的信用をスコア化することにあるのではないかと推測しています。「これらのカメラは四六時中、人々を監視しているのです」と同氏は語りました。
こうした印象は、データによっても裏付けられています。オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)が2025年12月に発表した報告書によれば、現在中国全土で約6億個の監視カメラが稼働しているとのことです。さらに同報告書は、北京が人工知能(AI)を活用した顔認識技術や移動追跡システムを既存の監視ネットワークへ急速に組み込んでいると指摘しています。また、上海市のある区の文書を引用し、AIカメラやドローンによる「自動発見とスマートな法執行」を可能にする計画についても触れています。
中国の監視システムを取り上げたこの番組は、予想外の反響を呼びました。中国中央テレビ(CCTV)系列の中国グローバルテレビジョンネットワーク(CGTN)で英語チャンネルを担当する記者が、TikTokの中国国内版である「抖音」に動画を投稿し、FOXニュースの撮影クルーが交通量の多い路上で撮影を行っていると批判しました。動画には、ベイヤー氏が車道を歩き、その周りを自転車などが通り過ぎる様子が映っていました。しかし、この批判的な動画は結果的に視聴者の関心を煽ることとなり、「ベイヤー氏が北京で何を報じたのか」を検索する人々が急増しました。これと同時に、中国国内のインターネット上では、この出来事を報じた記事が次々と削除されるという事態も起きています。
一方で、検閲の影響を受けないX(旧Twitter)上では、この「北京での体験」が多くの中国人ユーザーの間で大きな話題となりました。
ある著名な民主活動家は、「ついにアメリカのメディアも中国の厳しい監視を味わったようだ。アメリカの取材チームだからといって容赦はされない。仮にトランプ大統領本人が乗っていたとしても、罰金を取られただろう」と皮肉交じりに投稿しています。
他にも、自身の経験を踏まえたコメントが多く寄せられています。「カメラ20個なんて少ない方だ。1本の電柱にそれ以上ついていることもある」「FOXニュースは普段アメリカの自由な環境に慣れているから、中国の厳しさに驚いたのだろう」「罰金を取るシステムに関しては、中国は世界トップクラスだ」といった声が見られました。また、「地方政府の財政が厳しいから、罰金で収入を得ようとしているのではないか」と指摘する意見もあります。
さらに、この監視システムの背景にある社会的な意味について考察するユーザーもいました。「監視カメラを設置する本当の目的は、人民をモノのように扱い、独立した思考力を奪うことだ」という鋭い意見や、中には「これだけ膨大な数のカメラがありながら、一般市民の子供が迷子になった時には見つからないことが多いのは皮肉な話だ」という、切実なコメントも見受けられました。
(翻訳・吉原木子)
