晩春から初夏は本来気候の穏やかな季節ですが、北京や周辺地域の住民にとっては、空を舞う「5月の雪」、つまり年に一度のポプラや柳の綿毛が大発生する時期でもあります。生命力にあふれる都市の風景は、今や市民にとって息苦しく厄介なものに変わりました。特にアレルギー患者にとって、この時期の環境はまさに「地獄」そのものです。
大規模な綿毛は市街地を覆い尽くすだけでなく、周辺の高速道路をも危険に陥れています。最近SNSで拡散された動画では、北京とハルビンを結ぶ高速道路の一部が「綿毛の猛吹雪」に見舞われていました。道路脇の大量のポプラと今年の乾燥した気候が相まって、強風に舞う綿毛が白い霧のように空を覆っているのです。運転歴30年のベテラン運転手は「目を閉じて歩くようなものだ」と恐怖を語ります。標識が見えない上、ワイパーでもガラスにこびりついた分厚い綿毛を取り除けず、危険性は豪雨に匹敵します。安全確保のため交通警察が一部区間を封鎖し、多くの運転手が車内で数時間の足止めを余儀なくされました。
綿毛が大量に舞う路面には、巨大なリスクが潜んでいます。一つ目は交通事故の危険性です。視界不良による追突事故に加え、大量の綿毛がラジエーターに詰まると、エンジンのオーバーヒートやエンストを引き起こします。二つ目は深刻な火災リスクです。ポプラや柳の綿毛は油分を多く含み、火の気に触れると瞬時に燃え上がるため、道路上はまさに「火薬庫」と化します。さらに、綿毛はホコリや花粉を大量に吸着し、エアコンなどを通じて車内に侵入するため、乗員の呼吸器にも深刻な脅威となります。
北京市内にも同様に憂鬱な光景が広がっています。周辺地域に比べ、北京は飛散期間が長く、密度も高いのが特徴です。初春のポプラから初夏の柳まで、この「5月の雪」は2ヶ月半も猛威を振るいます。ある市民は「少し落ち着いたと思ったら、一陣の風でまた空が覆われ、家の網戸まで分厚い綿毛で塞がれた」と苦笑していました。大規模なイベントへの影響も深刻で、最近国家体育場で開催された人気バンドのコンサートでは、ボーカルがステージ上で何度も綿毛にむせ、咳き込む場面がありました。
見た目の不快感よりも恐ろしいのは、綿毛がもたらす深刻な健康被害です。北京では、ヒノキ科の樹木による花粉が有名なアレルギー源であることに加え、至る所に入り込むポプラや柳の綿毛が、数え切れないほどの人々を苦しめています。多くの市民がネット上で「連休が終わってまだ1日なのに、蕁麻疹が再発し、顔の皮がむけ、鼻炎にもなった」「数分外に出ただけで、顔全体が痒くてたまらない」と悲鳴を上げています。懸念されるのは、本来アレルギーを持っていなかった地方からの移住者や地元住民の多くが、長年にわたる綿毛の襲来により、徐々にアレルギー体質へと変わってしまっていることです。最近、北京の主要病院では皮膚科、呼吸器科、耳鼻咽喉科がどこも満員状態で、ある患者は受診した際、自分の前に300人近くの順番待ちがいたと語っていました。完治が難しいアレルギーに対し、医師からのアドバイスも「2年間、減感作療法の注射を打ち続ける」か、「常にマスクを手放さない」といったものしか残されていません。毎日薬で症状を抑えながら、アレルギーのせいで精神的にも疲弊しきっているのが、この季節の多くの北京市民の日常となっています。
避けることも完治も難しい被害に耐えかね、最終的に「北京からの脱出」を選ぶ市民もいます。すでに広州に定住したあるネットユーザーは「体が持たないなら早く離れるべきだ」と忠告します。彼女は9年間我慢した結果、アレルギーが悪化し、1年の3分の2を苦痛の中で過ごすようになり、他のアレルギーまで併発しました。しかし、南部に引っ越してからは嘘のように完治したといいます。同じく広州へ移住した別の女性も「人生で一度もアレルギーがなかったのに、北京で働いてから春のたびに顔がひどく腫れ、北京を離れてようやく健康を取り戻した」と語ります。健康のため、彼らはこの街で築いた仕事や生活を手放さざるを得なかったのです。
一方、北京を離れられない大多数の人々に残されているのは、ただ耐え忍ぶことと、終わりの見えない経済的負担です。外出時は完全防備が必須で、輸入物の空気清浄機が飛ぶように売れています。車の所有者は、毎年余分な維持費も負担しています。数千円から一万円ほどの費用をかけて専門業者でフロントグリルや吸気口を分解洗浄してもらわなければ、綿毛が詰まって車から煙が出るリスクに直面するからです。
年々繰り返される綿毛の災難に対し、人々の無力感は、次第に当局の環境対策に対する疑念へと変わってきています。多くの市民が不満を漏らしています。行政は毎年、緑化対策や綿毛の飛散防止に多額の資金を投じ、様々な方法を試みているといいますが、市民の率直な感想は「綿毛は年々ひどくなり、木も大きくなる一方で、考えるだけでも恐ろしい」というものです。莫大な対策費用も、空を舞う白い綿毛の前では、ただ「お金をドブに捨てた」ような空しさしか残していないように思えます。この繁華な大都市において、人々は生活や仕事のプレッシャーに直面するだけでなく、今やこの長く苦しい季節の中で、どうにかして息苦しさを乗り切る術を身につけなければならないのです。
(翻訳・吉原木子)
