ここ数日、中国各地のガソリンスタンドでは、正式な値上げが実施される数時間前から、人々が一斉に押し寄せ、ガソリンスタンドの外には長い列ができ、一部の都市では一晩中並び続けるような異様な状況まで起きています。
3月22日の夜にネットユーザーが投稿した動画では、海南省のあるガソリンスタンドで車の列が2時間以上続いていました。人々は値上げ前に満タンにしようとして集まり、あるブロガーは、今2時間並べば約1700円(80元)以上節約できると話していました。この現実的な計算が、行列を生んだ直接の理由になっていました。
別の動画では、3月23日の午後になると、待ち時間がすでに5時間以上に延びたという声も出ていました。ガソリンスタンドは人であふれ、現場はまるで奪い合いのような雰囲気になっていました。
広西チワン族自治区の梧州(ごしゅう)では、大型の燃料用タンクをガソリンスタンドまで持ち込み、一度にできるだけ多くの燃料をため込もうとする人まで現れ、周囲の注目を集めました。撮影した人も、まるでガソリンスタンドごと家に持ち帰るつもりなのかと冗談交じりに語っていました。こうした極端な行動の裏には、燃料価格がこのまま上がり続けるのではないかという人々の強い不安があります。
動画を投稿したネットユーザーの中には、中国で最もひどいのは中国石油と中国石化だと不満をあらわにする人もいました。国際(原油)価格が上がればすぐに値上げし、その理由として国際(原油)市況の影響を受けたと説明する一方で、国際(原油)価格が下がっても値下げはしません。そのときは国際情勢とは事情が違うと言い換えるだけで、結局こちらには何が本当なのか分からない、と怒りをぶつけていました。
運輸業に携わる個人事業者たちは、さらに厳しい現実に直面しています。ある動画では、港に多くの船が停まったまま動かない様子が映っており、投稿者は、燃料代は上がり続けているのに運賃はまったく上がらず、もう海に出るのをためらう船主が増えていると語っていました。コメント欄には、上海の一部の海運航路では、すでに運航停止が始まっているという声まで出ています。
その一方で、比較的冷静な反応を見せる車のオーナーもいました。あるブロガーは、ガソリンスタンドでは日本車の姿がほとんど見当たらないと述べています。その理由は燃費の良さにあり、満タンで800キロから1000キロ走れるため、人によっては1か月、あるいは2か月に1回しか給油しないからだと説明していました。
しかし、3月24日午前0時にガソリン価格が正式に引き上げられると、ガソリンスタンドの光景は一変しました。各地のネットユーザーが投稿した動画を見ると、それまで人であふれていたスタンドは一気に閑散とし、がらんとした状態になっていました。ある撮影者は、その空っぽのガソリンスタンドを前に、驚いたか、予想外だったかと皮肉交じりに語っていました。
ガソリンスタンドのスタッフも、こちらが頑張らないわけではないが、こういう状況ではどうにもならないと、あきらめ気味に話していました。
マクロ的な視点で見ると、ガソリン価格の上昇による連鎖反応は、すでに急速に表れ始めています。「大河報」の報道によれば、最近、中国の複数の航空会社が国際線の燃油サーチャージを大幅に引き上げており、上昇幅は全体として50%を超え、一部の路線では2倍にまで達しています。たとえば吉祥航空は、3月20日から中国発タイ行き路線の燃油サーチャージを最大約11000円(550元)に引き上げると発表しました。これは従来の2倍にあたります。この変化は、燃料価格の上昇がそのまま消費者側へ転嫁され始めていることを示す、分かりやすい例と見られています。
時事評論家の江峰氏は、自身の番組の中で、ガソリン価格の上昇が中国経済に与える打撃は、単に移動コストが増えるだけでは済まないと分析しています。影響は産業チェーンに沿って次々に広がり、目に見えにくいインフレを引き起こすというのです。
江峰氏は例として、毎月1万キロ以上を走り、もともとの利益も薄い長距離トラック運転手を挙げました。もし毎月の燃料費が約6万円(3000元)増えれば、それはほぼ1か月ただ働きしたのと変わらないといいます。そして物流コストが5%から10%上がれば、スーパーで売られる生鮮食品や野菜、果物の価格は、すぐに押し上げられることになります。
さらに言えば、石油は交通輸送を支える基礎エネルギーであるだけでなく、化学工業にとっても重要な原料です。江峰氏は、石油化学原料の供給が逼迫したり、価格が上昇したりすれば、尿素などの農業資材の価格も上がり、それによって農業の生産コストが押し上げられ、最終的には食料価格の上昇につながると指摘しています。同時に、化学繊維の衣類や日用品など、石油由来の原料に大きく依存している商品の価格も次々に上がっていきます。こうしてエネルギー価格の上昇が引き金となり、全国に広がるコスト上昇の連鎖が形作られていくのです。
中国政府は、今回の燃料価格上昇について、中東情勢の緊迫化によって国際原油市場が変動したことが原因だと説明しています。中国は世界最大の原油輸入国であり、石油のおよそ70%を輸入に頼っています。そのうちかなりの割合が、重要な海上ルートであるホルムズ海峡を通過しています。公開資料によれば、2024年に中国が輸入した原油のうち、およそ40%がこの海峡を経由して輸送されたとされています。この数字だけを見ると、中国政府の説明にも一定の根拠があるように見えます。
しかし、一部のアナリストは、実際の構図はそれほど単純ではないと見ています。「大紀元」が3月13日に報じた内容によると、中東情勢が緊張を続ける中でも、中国では目立った原油供給の途絶は起きておらず、それどころか灰色ルートを通じて、イラン産原油を継続的に確保している可能性があるとされています。報道では、業界関係者の話として、中国とイランは衝突が本格化する前の段階で、緊急時のエネルギー輸送ルートについてすでに手配を整えていたと伝えています。そのルートは、オマーン湾に面したジャースク港を利用し、ホルムズ海峡を避けながら原油を中国沿岸部へ直接運ぶというものです。
この報道によれば、ジャースク港は全長およそ1000キロのパイプラインによって、イラン内陸部の油田とオマーン湾を結んでいます。そのため、タンカーは封鎖リスクのある海峡航路を通らずに輸送を行うことができます。さらに、海運データ分析会社Kpler(ケプラー)の統計では、最近のイラン産原油の輸出量は減るどころか、むしろ日量210万バレルまで増えており、そのかなりの部分が中国市場へ向かっているとみられています。また、一部のタンカーは自動識別装置を切ったり、海上で積み替えを行ったりして所在を隠しながら輸送しており、外部からは影の船団と呼ばれています。
こうした状況を踏まえ、江峰氏は、中国国内の燃料価格の上昇は、必ずしも供給不足だけで起きているわけではなく、むしろ政府の政策判断が深く関わっている可能性が高いと見ています。彼によれば、中国当局は国際情勢の緊張をうまく利用し、国際価格に合わせるという名目でエネルギー価格を引き上げ、その結果として財政収入を増やそうとしているというのです。江峰氏はこの流れを、地政学的な危機を口実にして、中国の国民全体から広く財源を吸い上げるやり方だと表現しています。
時事評論家の陳静氏は、国民がこれまでと同じ量のガソリンや同じ量の食品を買うために、以前より多くの人民元を支払わなければならなくなっているとすれば、それは単なる物価上昇では済まないと指摘しています。そこにあるのは、人民元の購買力そのものが急速に落ち込んでいる現実だというのです。陳静氏は、その意味で今回のガソリン価格急騰は、ひとつの重大な経済シグナルを発していると見ています。つまり、人民元の国内における実質的な価値下落が、すでに本格的に始まったことを示しているということです。
(翻訳・藍彧)
