先ごろ、雲南省昭通市魯甸県(ろでんけん)にある貧困対策の集団移住区で、警察と住民による大規模な衝突が発生しました。発端となったのは、地元当局と管理会社が突如として駐車料金の強制徴収に踏み切ったことでした。5月7日、日頃から不満を募らせていた千人以上の住民が集団で抗議の声を上げ、現場は一時騒然となりました。怒った群衆が警察の特装車両を長時間包囲する事態にまで発展しています。事態のエスカレートを受け、地方政府は最終的に妥協を余儀なくされ、駐車料金の徴収を一時停止すると発表しました。この騒動は、単なるトラブルにとどまらず、中国政府が掲げる「貧困脱却のモデル事業」の背後に潜む、住民生活の深い傷跡を浮き彫りにしています。
現場となった移住区は、周辺の5つの貧困県から約4万人もの住民を受け入れてきた大規模な移住拠点です。標高が高く交通の不便な山間部に住んでいた人々を、都市部へ一斉に移住させたのです。しかし、政府の華々しい宣伝とは裏腹に、多くの住民は移住先で新たな生活苦に直面しています。生活の糧であった農地を失った元農民たちは、専門的なスキルも安定した職業もないため、日雇い労働や生活保障に頼って日々をしのぐのが実情です。その一方で、水道光熱費や管理費といった都市部ならではの生活コストはかさむばかりで、どれほど切り詰めても毎年の固定支出は最低でも1万元(約21万円)以上に達するといいます。
「移住後の生活は以前よりもかえって苦しくなった」と語る住民は少なくありません。農村では少なくとも食べ物に困ることはなく、自給自足に近い生活ができていましたが、かつての村や家屋はすでに取り壊され、彼らに帰る場所は残されていません。生活基盤が不安定な中、当局と管理会社は今年5月、敷地内の車両に対し月額360元(約7,500円)の駐車料金を徴収すると突如発表しました。雨漏りなどの居住環境の問題が長年放置されてきたにもかかわらず、明確な法的根拠も示さずに一方的に料金を徴収しようとしたことで、住民の長年の不満に火がついたのです。
ある住民がSNSに投稿した訴えには、悲痛な叫びが込められています。「ただでさえ仕事が見つからないのに、親の介護や子育てを抱え、生活だけで手一杯です。実家を強制的に取り壊した時は救急車まで待機させていたのに、今は生きる道すら残してくれません。安定した仕事もないのに、どうやって払えというのでしょうか」
この強引な決定は、たちまち連日の抗議活動を引き起こしました。5月6日に住民がレッカー車の前に立ちはだかり警察による強制撤去を阻止すると、翌7日昼には対立が全面的に激化。千人以上の住民がゲート付近に集結し、動員された機動隊員らと激しい衝突が発生しました。警察官に殴られ負傷した住民が出たことで怒った群衆は、警察車両を包囲し現場からの逃走を阻止しました。事態を重く見た地元政府は同日午後、管理会社のゲート撤去、駐車料金と管理費の徴収一時停止、そして特別作業班の設立という3つの約束を公表し、抗議活動はひとまずの勝利を収めました。
しかし、今回の衝突は決して珍しいケースではありません。近年、中国では「適正な管理」を名目に、実質的には住民から不当に資金を巻き上げるような事例が各地で頻発しています。経済的に余裕のない家庭が搾取され、最終的に実力行使による抗議へと追い詰められているのです。ネット上では「一ヶ所に集中して移住させること自体が、効率よく搾取するための手段にすぎないのではないか」と揶揄する声すら上がっており、権力に対する草の根の抗議活動は各地で散発的に起きています。
例えば今年3月、湖北省武漢市の巨大な新興住宅地でも、管理会社の強制的な料金徴収に抵抗する住民たちが一斉に声を上げました。入居開始以来無料だった駐車料金を、管理会社が住民の合意なしに月額30元(約630円)徴収すると一方的に発表したのです。これに反発した住民たちは行動を起こし、3月24日夜に高齢者たちが率先して料金ゲートを実力行使で撤去。これを機に数千人規模の住民が次々と周辺の区画に押し寄せ、ゲートをことごとく破壊しました。4月中旬になっても強引に徴収を続けていた別のエリアでも、数百人が同様にゲートを押し倒しました。現場では「武漢市民、立ち上がれ」との歓声が湧き、ネット上でも「末端の利権構造を打ち砕いた」と称賛の声が相次ぎました。また、広東省広州市の増城区でも以前、駐車料金所の設置に反対する抗議と施設破壊騒動が発生し、地方政府が料金徴収の撤回に追い込まれています。
これら一連の出来事は、現在の中国社会が抱える危うい側面を如実に浮き彫りにしています。不透明な政策や行き過ぎた負担増に直面し、経済的に弱い立場に置かれた人々の忍耐は、すでに限界に達しつつあるようです。生活が極度に追い詰められた結果、住民たちが集団で立ち上がり、実力行使も辞さない強硬な手段に出るケースが目立ち始めています。「団結すれば当局も独断専行はできない」。これらの事例は、集団の力で不当な決定を覆し、自らの生活と権利を守ろうとする中国の民衆のしたたかな姿を、客観的に物語っていると言えるでしょう。
(翻訳・吉原木子)
