中国の農村では、静かでありながら致命的な環境危機が、地底の暗流のように猛烈な勢いで拡大しています。その現実を、今年4月、ある環境系ブロガーがカメラで暴きました。
河北省保定市の畑で、彼が記録したのは、思わず息をのむような光景でした。本来なら命を育むはずの地下水が、ポンプから噴き出した瞬間、まるで濃い紅茶のような深い赤色をしていたのです。これは自然現象などではありません。毒性を帯びた化学廃水、そのままの色でした。
村人たちは、その赤い水を前にして、もはや怒りすら失ったような表情を見せています。彼らは、「この水で育てた小麦は、自分たちでは絶対に食べない。しかし生活のためには、その作物を市場に流すしかない」と語ります。
4月19日に公開されたこの現地調査の動画は、SNS上で一気に拡散され、「地下水汚染」という、これまで数字の裏に隠れていた問題を一気に表舞台へと引きずり出しました。
しかし、保定市の「赤い水」は決して特別な例ではありません。これは中国農村の水汚染の、ほんの一部にすぎないのです。視点を広げ、中国全体の水環境を見てみると、その状況は想像以上に深刻です。
長江、黄河、珠江、松花江、遼河、海河、淮河――いわゆる中国の七大水系。その流域にある農村部の水質は、広い範囲で深刻なレベルにまで悪化しています。
北部では、海河流域の一部の支流が長年にわたり水質等級5類以下の最悪レベルにあります。これは、もはや生態機能をほぼ失い、農業用水としてすら使えない状態を意味します。
一方、南部も例外ではありません。かつて豊かな水と食に恵まれた地域でも、状況は急速に悪化しています。「江南の宝石」と呼ばれてきた太湖では、夏になるたびに藍藻が大量発生し、その影は今も消えていません。湖底に沈んだ重金属や化学物質が、ゆっくりと、しかし確実に周辺の浅い地下水を汚染し続けています。
さらに雲南省の滇池(てんち)では、水質は長年にわたり最悪レベルの寸前をさまよい続けています。
こうした水汚染の最大の原因の一つが、制御を失った工業排水です。
ここは重慶市綦江区の羊叉河です。3月11日、環境ブロガーが伝えたところによると、長年にわたる鉱業の影響で水質は深刻に汚染され、かつて透明だった川は赤く変色し、生き物の姿は完全に消えました。周囲の農作物にも被害が広がっていますが、地元政府は事実上何も対応していないといいます。
さらに4月26日、湖北省仙桃市では、町内の汚水処理場から排出された水がそのまま川へ流れ込む様子が撮影されました。川の水は黒く染まり、表面には大量の白い泡が浮かんでいます。
河北省では、陳萍さん(女性)が、外部にはほとんど知られていない衝撃的な実態を明かしました。それが「深井排水」と呼ばれる手口です。
環境規制を逃れるため、多くの化学工場やメッキ工場、染色工場は、目に見える川へ排水するのをやめ、より隠れた、そしてはるかに危険な方法を選ぶようになりました。
それは、高圧ポンプを使い、未処理の工業廃水を数百メートルの深さまで送り込み、地下の帯水層に直接押し込むというやり方です。
そこに含まれるのは、強酸、強アルカリ、重金属、さらには発がん性物質など、極めて危険な化学物質です。
陳さんによれば、地元のサビ取り工場から出る廃酸は、一切処理されることなく地下へと消えていきます。その後、村の水塔がその汚染された地下水をくみ上げ、住民の生活用水として使われているのです。
地下水は流れが非常に遅く、一度汚染されれば回復には何十年、場合によっては百年以上かかります。つまりこれは、ほぼ取り返しのつかない汚染です。
工場経営者と地方政府の癒着によって、農村の地下は巨大な毒の貯蔵庫へと変わりつつあります。
さらに問題を深刻にしているのが、農村のインフラ崩壊と、管理体制の機能不全です。
広東省東莞市の例は、その象徴ともいえます。中国でも有数の経済発展地域でありながら、農村の水環境は依然として深刻な状態にあります。
村民の燕軍さんはこう語ります。「政府は長年、雨水と汚水を分けるシステムを整備していると宣伝してきた。しかし実際には、道路の下にパイプを埋めただけで、その先にまともな処理施設は存在しない。その結果、浄化槽の汚水と、家庭で使われる洗剤などを含んだ排水はすべて混ざり合い、そのまま村の養魚池へ流れ込んでいる」
燕さんの甥は、去年その池を借りて養殖を始め、全財産を投じました。しかし水質が突然悪化し、一晩で池の魚はすべて死んでしまったのです。
こうした出来事は決して珍しいものではありません。中国の多くの農村で、汚水処理施設は放置され、使われないまま朽ちていく、いわば形だけの存在になっています。
こうした深刻な現実がある一方で、中国政府は表向きには環境対策に強い姿勢を示し、多くの政策文書を発表しています。しかし実際には、環境対策は利益を生まない「コスト」であり、GDPの数字こそが官僚の評価を左右する現実があります。
そのため、農村の環境問題は後回しにされがちです。
現場では、環境監査はまるで「いたちごっこ」です。調査が来る前には工場が操業を止め、調査が終われば再び排水を始める。そんな状況が繰り返されています。
この長年の汚染が、最終的に人々の健康という形で重くのしかかっています。
中国の多くの地域で、かつては高齢で亡くなるのが普通だった農村で、近年はがんの発症年齢が明らかに若くなっています。食道がん、胃がん、肝臓がんなど、水質と関係の深い病気が、汚染された村で広がっているのです。
こうした地域は「がん村」と呼ばれ、淮河流域や海河流域を中心に各地に点在しています。
村人たちにできる抵抗は限られています。数十円程度のペットボトル水を買うか、それもできなければ、ただ黙って受け入れるしかないのです。
工場から排出される大量の黄色い廃水によって、中国国内の淡水資源はほぼ全面的に汚染されつつあります。その汚染水は最終的に海へと流れ込みます。
重金属や有害な化学物質が海に広がれば、沿岸の生態系を破壊するだけでなく、やがては周辺国にも影響を及ぼす可能性があります。
(翻訳・藍彧)
