深夜の街頭監視カメラ映像には、1台の救急車が、横断歩道で信号待ちをしていたフードデリバリー配達員に向かって突然突っ込んでいく様子が映っていました。数秒後には、もう1台の救急車も画面に現れます。

 この動画がネットに投稿されると、瞬く間に拡散し、コメント欄には疑問と恐怖の声があふれました。「なぜ最初から2台も来たのか?」「救急車は人を狙って突っ込んだのではないか」と疑念が広がり、この動画は世論の嵐の引き金となりました。

 この事件の当事者は、34歳の配達員、欧超超です。杭州日報などの報道によると、彼は生前、浙江省義烏市でフードデリバリーの仕事をしていました。1月15日未明、心肺停止の状態で緊急搬送され、その後、杭州市にある浙江大学医学部附属第一医院で救命措置を受けました。1月16日には脳死と診断され、1月20日に臓器提供が行われ、7つの臓器と2枚の角膜が提供されたとされています。公式の説明では、これは命をつなぐ美談として語られました。手術室の外では姉が涙ながらに別れを告げ、両親は深い悲しみの中で臓器提供を決断し、「最後の配達」が9人の患者に希望を届けた、という流れです。

 ところが、ネット上の世論はまったく違う方向に動いています。疑問の焦点は主に2つあります。1つは、事故の経緯と心肺停止に至るまでの時間の流れが本当に合っているのかという点。もう1つは、これほど短時間で7つもの臓器について適合確認と移植準備を終えることが、現実的にどれほどあり得るのかという点です。

 Xで拡散されているある動画では、1人の医師がこう話しています。

 「臓器移植の前提は、臓器が元の体から取り出される時点で、生きた状態にあることである。聞き間違いではない。臓器は、血液が流れ、心臓がまだ動いている段階で胸を開かなければならない。角膜や骨、皮膚を除けば、肝臓、心臓、脾臓、肺、腎臓といった臓器は、人が死亡したあとでは使えない。つまり、臓器移植の前提は、その人の心臓がまだ動いていることである」

 この見方に立てば、浙江大学医学部附属第一医院が説明した、1月15日深夜に配達員が心停止したという話は、そもそも成り立たないことになります。もしその時点で本当に心臓が止まっていたのなら、全身の臓器は血流を失って壊死に向かうはずです。そうであれば、1月20日に7つもの臓器移植手術を完了したという説明は、いったいどうやって成立するのでしょうか。

 さらに、ある分析ではこう指摘されています。

 「提供条件を満たすすべての人の中で、7つの臓器が実際に適合し、提供まで成立する確率は、およそ0.001%未満とされる。通常であれば、医学上の『奇跡』、あるいは国家レベルで極めて効率的な医療配分システムが動いた結果とみなされる」

 そのため、一部のネットユーザーの関心は、なぜここまで早く進んだのか、提供者はあらかじめ絞り込まれていたのではないか、という点へと移っています。中には、「これほど内臓の状態が良いのに、なぜまだ若いのに突然死したのか」と疑問を投げかける声もあります。さらに、救急車があまりにも都合よく、しかも正確なタイミングで現れたことに対して、不自然さを指摘する意見も出ています。

 近年、中国では救急車を使った拉致のような事件が相次いで伝えられています。1月18日には、深セン市で若い女性が救急車によって無理やり連れ去られたとされる出来事が話題になりました。動画には、医療スタッフの服を着た男女2人と、黒服の男3人が、1人の若い女性をストレッチャーに押さえつける様子が映っています。女性は黒服の男を足で蹴って抵抗し、「死にたくない」と叫びながら、「つらすぎる」と訴えていました。

 この女性は、手足に力が入らないようにも見え、すでに何らかの薬を打たれていた可能性もあります。ただ、意識そのものははっきりしており、自分が危険な状況にあることを理解していたからこそ、必死に抵抗していたとも受け取れます。そばでは別の女性が電話をかけており、助けを求めていたようですが、1人では5人の連れ去り役を止めることはできませんでした。通行人の中には、その医療スタッフを名乗る人たちに対して、本当に警察に通報したのかと問いただし、無理やり人を連れて行こうとしていると非難する声も上がっていました。

 2025年5月には、X上で別の動画も拡散されました。そこには、河南省禹州市で1人の女性が、救急隊員の服を着た複数の人物に手錠をかけられたうえで、無理やりストレッチャーに乗せられ、そのまま連れ去られる様子が映っていました。

 その間、女性は大声で叫びながら通行人に助けを求めていました。しかし、その声を聞いた通行人は足を止めて見物したり、スマホで撮影したりするだけで、実際に助けに駆けつける人は誰もいなかったとされています。

 2025年6月には、広西チワン族自治区貴港市の旧貴港西バスターミナル付近で、16歳の少女が車にはねられたあと、4人によって無理やりストレッチャーに縛りつけられ、救急車に乗せられたという話も出ています。そして翌日、その少女の遺体は殯儀館に運ばれたとされています。

 さらに衝撃的なのは、その少女を連れ去った黒服の男の1人が、6月18日に臓器移植のグリーンチャネルを通った男性とよく似ていると、ネット上で指摘されている点です。服装や髪形、体格まで似ているとして、ネットユーザーの間では、この男はすでに何度も同じような案件に関わってきたのではないか、という憶測まで広がっています。

 もう1つ、強い衝撃を与えている事例として、「250701プロジェクト連絡」というグループの存在が暴露された件があります。流出したスクリーンショットには、若い女性が路上でドリアンを買っている写真が、そのグループ内に投稿されていました。やり取りの中には、「体脂肪率は高くない?」「DNAの拒絶反応チェックOK(つまり免疫検査に合格)」「今、吉林大学に肝臓と腎臓のレシピエントがいる」といった文言が確認され、さらに「買い終わるのを待って、マンションの棟内で確保し、そのまま救急車で強制的に連れ戻せ」といった指示まで書かれていました。

 このやり取りを見る限り、「プロジェクト連絡」とは、臓器移植を必要とする側と、供給する側をつなぐ仕組みを意味しているようにも受け取れます。そして「吉林大学にレシピエントがいる」という表現は、吉林大学の関連附属病院に、移植を待つ患者がいることを指しているのではないかと広く受け止められています。

 さらに衝撃を広げたのが、2025年12月27日に浙江省温州市の錦像マンションから流出した動画です。室内では1人の女性が「助けて、死にたくない」と叫び、部屋の外には警察と医療関係者のような服装をした人物たちが現れ、建物の下には救急車が止まっていました。最後には、その女性は3人の男に抱えられるようにして建物の外へ連れ出され、そのまま救急車に乗せられていきました。動画の全容はまだ明らかになっていませんが、映像そのものが与える衝撃はあまりにも大きく、街中だけでなく、自宅ですらもう安全とは言えないのかという不安を強くかき立てています。

 これらの事件を結びつけて見ると、中国には政府という後ろ盾を持つ巨大な臓器略奪ネットワークが存在しているのではないか、という疑いが浮かび上がります。救急車はもはや人命救助の象徴ではなく、合法的に「供体を搬送するための道具」に変わってしまったのではないか。警察もまた、国民の安全を守る存在ではなく、生きたまま臓器を奪う行為を支える側に回っているのではないか。そんな見方が広がっています。

 いわゆる「ビッグデータ監視」や「天網プロジェクト」も、国民の安全を守るためのものではなく、より正確に「臓器提供者」を選び出し、居場所を突き止めるために使われているのではないか、という疑念まで浮上しています。

 国家という巨大な仕組みそのものが、人を守る側ではなく、むしろ狙う側に回ってしまったとしたら、普通の国民一人ひとりは、まな板の上の鯉にすぎない存在になってしまいます。

(翻訳・藍彧)