3月7日午前、イラン革命防衛隊は、ホルムズ海峡付近でマルタ船籍の石油・化学品輸送船「プリマ号」を攻撃したと発表しました。
中東情勢が一気に緊迫したことで、世界で最も重要なエネルギー輸送の要所であるホルムズ海峡が、再び国際社会の注目を集めています。現在、ホルムズ海峡の航行はほぼ止まった状態となっており、多くのタンカーや貨物船がペルシャ湾内で足止めされています。今この海峡を通過している船は、1日平均わずか8隻ほどです。通常であれば、1日におよそ150隻がこの海峡を行き交っています。
衛星地図を見ると、イラン政府が海峡封鎖を宣言したあと、ホルムズ海峡周辺では、それまで海峡をびっしり行き交っていた船の姿が一気にまばらになったことが分かります。
報道によると、緊張が高まる中で、中国政府は関係各国に対し、ホルムズ海峡の航行の安全を確保するよう呼びかけるとともに、関連航路を通る船舶の保護を求めました。
鳳凰網の報道によりますと、ブルームバーグは3月5日、自動船舶識別装置(AIS)の信号上で「中国所有(China Owner)」と表示された貨物船が、ホルムズ海峡を通過したと伝えました。鳳凰網の調査では、この船の名前は「アイアン・メイデン(Iron Maiden)」で、運航しているのは上海の海運会社だとされています。この船は3月4日にホルムズ海峡を通過したあと、目的地が「不明」と表示されていました。
しかし、これまでにホルムズ海峡を通過できた中国船は、わずか2隻にとどまっています。3月6日時点では、中国船籍、または中国企業が実質的に支配している船およそ55隻が、なおペルシャ湾内に足止めされたままです。つまり実際には、中国のこの海峡経由の物流は、すでに途絶えた状態にあるのです。
中国にとって、ホルムズ海峡の戦略的な意味はきわめて大きいものがあります。中国は世界最大の原油輸入国であり、その中でも湾岸地域は最も重要なエネルギー供給源です。統計によれば、2025年には1日あたりおよそ540万バレルの原油がホルムズ海峡を通って中国の港へ運ばれており、これは中国の原油輸入全体の約半分を占めています。
これはつまり、ひとたび海峡が長期間にわたって封鎖されれば、中国のエネルギー供給網がはっきりとした圧力にさらされることを意味します。中国はここ数年、ロシアや中央アジアから陸路パイプラインで石油や天然ガスを増やすなど、調達先の分散を進めてきましたが、それでも湾岸地域からの大量供給を完全に置き換えることはできません。最悪の事態になれば、中国は市場を安定させるために戦略石油備蓄に頼らざるを得なくなります。国際エネルギー機関の推計では、中国は現在、戦略備蓄と民間在庫を合わせて約9億バレルの石油を保有しています。とはいえ、この備蓄で全国需要をおよそ100日分まかなえたとしても、長期化するリスクそのものを根本から消せるわけではありません。
ホルムズ海峡の封鎖によって、すでにガソリンや天然ガスの価格が上がり始めており、中国の物流業界はその直撃を受けています。
燃料価格の上昇でコストが膨らみ、一部の運送会社は運賃の値上げを知らせる通知を出さざるを得なくなっています。
ある運送会社の社長はこう話しています。
「天然ガス車はもう厳しい。たった1時間のうちに、天然ガスの価格が1立方メートルあたり約70円(3.5元)から約152円(7.6元)まで跳ね上がった。もともと利益がほとんどなく、食べていくだけで精一杯だった物流業界にとって、これは大打撃だ。全国の天然ガス車は、もう走るのをやめて休むしかない」
エネルギー供給の揺らぎは、中国の工業システムにもじわじわと打撃を与えています。世界の製造業の中心である中国では、化学工業やプラスチック産業などが、石油とその関連製品に強く依存しています。たとえば石油化学業界では、中国沿海部に多くの製油所や化学工場が集中しており、これらの企業は通常、中東産の原油を主要な原料として使っています。
今回、ホルムズ海峡の航行が妨げられたことで中国が受けている悪影響は、原料の供給不安、コストの急上昇、物流の停滞という三重の打撃となって表れています。その影響は、化学産業チェーンの上流から、すでに下流企業へと広がり始めています。イランは世界第2位のメタノール生産国であるため、中国国内では今後メタノールの供給不足が懸念されています。供給が止まるかもしれないという見方が強まれば、メタノール価格はさらに上がる可能性があります。メタノールは、現代のプラスチック産業を支える最も基本的で重要な原料の一つであるため、その値上がりは、あらゆるプラスチック製品の価格上昇につながっていきます。
3月4日には、メタノールを原料とするエポキシ樹脂の市場価格が全体的に上昇しました。液体エポキシ樹脂は1トンあたり約4000円(200元)上がり、固体エポキシ樹脂は1トンあたり約7000円(350元)値上がりしました。そのほかの重要な化学原料も、それぞれ異なる幅で価格が上がっています。
今の中国は景気の冷え込みが続いており、そんな中で化学原料まで値上がりしたことで、もともと苦しい状況にあった中国企業はさらに追い詰められています。
ある化学メーカーの経営者は、こう話しています。
「化学原料の値上がりに対応するため、当社は本日の会議を経て、次のように決定した。第一に、3月30日までにすべての仕入れ先への代金を清算する。第二に、3月31日までに全従業員の給与を支払う。第三に、4月1日から全従業員に旧正月明け初めての帰省休暇を与え、往復の交通費はすべて会社が負担する。会社がいつ操業を再開するかは、会社が決めることではない。ホルムズ海峡がいつ再び通航できるようになるかで決まるのだ」
原油価格の上昇は、中国の鉄鋼業界にも波及しています。3月6日の夜には、中国の原料炭価格が4.5%上昇しました。原油と原料炭は一見すると別のエネルギー資源ですが、今年3月のような極端な市場環境では、その連動性がはっきり強まっています。原油価格の上昇が原料炭の値上がりを招いている背景には、採掘コストや輸送コストの上昇があるとみられます。
その一方で、ホルムズ海峡の封鎖は、中国の対外貿易にもマイナスの影響を及ぼす可能性があります。中国は世界最大の貿易大国であり、膨大な量の輸出入貨物を海運に頼っています。ペルシャ湾はエネルギーの輸出拠点であるだけでなく、中国と中東、ヨーロッパ、アフリカを結ぶ重要な海上ルートの結節点でもあります。もし海運会社が安全リスクを理由に便数を減らしたり、航路を変更したりすれば、輸送コストは大きく跳ね上がることになります。
中国にとって、ホルムズ海峡は単なるエネルギーの通り道ではありません。中国の巨大な工業システムと貿易ネットワークを支える、極めて重要な大動脈でもあるのです。
(翻訳・藍彧)
