アメリカとイスラエルがイランを軍事攻撃したことで、世界のエネルギー輸送で最重要の要衝とされるホルムズ海峡が一気に緊迫しました。海峡周辺では複数のタンカーが襲撃を受け、大手石油会社や保険会社が次々と航路から撤退し、船舶の往来は大幅に減少しています。海外エネルギーへの依存度が高い中国にとって、この混乱は、一部の観測筋が「2本のパイプラインが同時に断たれるようなもの」と表現するほどの重大リスクとして受け止められています。

 2月28日、アメリカとイスラエルはイランに対し共同の軍事作戦を実施しました。これを受けて、イランは、ホルムズ海峡を全面的に管理下に置くと発表し、この海域を通過する船舶はすべて標的になり得ると警告しています。さらにイラン革命防衛隊は、この周辺海域はすでに戦時状態に入ったとも主張しました。

 海運データ会社Kplerによると、通過を試みる船が少数残ってはいるものの、多くの大手石油会社と保険会社は、この海域での運航をすでに停止しています。戦争リスク保険の費用も、過去6年で最高水準にまで跳ね上がっています。

 ホルムズ海峡は、イランとオマーンの間に位置し、ペルシャ湾からインド洋へ抜ける唯一の出口です。最も狭いところでも幅は約39キロしかありませんが、ここを通る石油の輸送量は、世界の海上石油取引の2割以上を占めます。さらに液化天然ガスの輸送も世界全体の約5分の1がこの海峡に集中しています。つまり、ここで航行が滞れば、影響は一国にとどまらず、世界のエネルギー市場全体が揺さぶられることになります。

 市場はすでに、この緊張を値動きで映し始めています。このニュースが出ると、欧州や中東の指標として見られるブレント原油は一時、1バレルあたり約12900円(82ドル)を突破し、7か月ぶりの高値を付けました。アメリカのWTI原油も同じ流れで上昇しています。エネルギー取引の関係者の間では、衝突が長引けば、原油価格はさらに上昇する可能性があるという見方が広がっています。

 悪化していく中東情勢を前に、中国政府の対応は慎重そのものです。ブルームバーグは3月3日、中国政府が複数のルートを通じて水面下でイランに圧力をかけ、ホルムズ海峡を通るタンカーやLNG輸送船への攻撃を避けるよう求めていると報じました。中国のエネルギー供給の安全を守るためだというわけです。

 また、中国当局はイランに対し、カタールなどの天然ガス輸出を妨げないよう求めているとも伝えています。カタールは、中国のLNG輸入のおよそ3割を担う重要な供給国だからです。

 一方で、中国外交部の報道官である毛寧氏は3月3日と4日の定例記者会見で、ホルムズ海峡の航路の安全確保を各方面に繰り返し呼びかけ、世界のエネルギー供給に影響を与えかねない軍事行動は避けるべきだと強調しました。

 中国は中東のエネルギーに極めて強く依存しています。複数のエネルギー研究機関のデータによると、中国の石油需要のおよそ74%は輸入に頼っていて、その多くが中東から入ってきます。ホルムズ海峡はまた、中国の石油輸入のほぼ半分を運ぶルートでもあります。同海峡の航行が長期間止まれば、中国のエネルギー供給は直接、大きな打撃を受けることになります。

 中国は戦略備蓄として石油のストックを整えていますが、規模には限りがあります。複数の研究機関の試算では、中国の石油戦略備蓄で持ちこたえられるのは約2〜3か月程度と見られています。専門家は、石油は交通だけでなく、石油化学産業の重要な原料でもあると指摘します。プラスチック、化学繊維、肥料などの産業は石油への依存度が高く、供給が滞れば、工業生産にも物価にも連鎖的な影響が出かねません。

 中東向けの海上輸送の現場で長年働いてきた中国人の物流関係者は、テンセントニュースに対し、ホルムズ海峡は「事実上すでに封鎖されている」と話しました。もともと湾岸諸国へ送る予定だった貨物は、出港そのものを止めざるを得なくなり、すでに出発した船も近くの港で待機するか、いっそ引き返すケースが出ているということです。

 同関係者は、自分は中東向けの貨物輸送と物流の仕事を約20年続けてきたが、「ここまで緊張した状況は見たことがない。2021年のスエズ運河の座礁事故よりも深刻になるかもしれない」と話します。当時は運河がふさがっても、アフリカ南端の喜望峰回りで迂回できました。コストは上がっても、ルートそのものは残っていたわけです。ところがホルムズ海峡の場合は、エネルギー供給そのものに直結します。石油が外に運び出せなくなれば、影響の範囲は一気に広がります。

 緊張が高まる中、米政府は比較的強硬な手を打ちました。3月4日、トランプ大統領は、アメリカ国際開発金融公社を通じて、ペルシャ湾を通過する海運に対し、政治リスク保険と保証を提供すると発表しました。さらに米海軍も、タンカーを護衛する準備を進め、エネルギー輸送の確保に乗り出す構えです。

 中東情勢の変化が、中国のエネルギー戦略に与える衝撃はとりわけ大きいという見方もあります。近年、中国はベネズエラとイランに対し、エネルギーやインフラ分野で巨額の投資を行い、いわゆるエネルギーのパートナー関係によって長期供給を確保しようとしてきました。中国企業のベネズエラでの投資規模は約15兆9000億円(1060億ドル)に達し、イランでもエネルギーとインフラの協力プロジェクトが約15兆円以上(1000億ドル超)に上るとされています。

 ところが、ベネズエラの政局が変わり、イラン情勢も揺れている今、そうした投資の先行きには不透明感が漂っています。分析の一部では、もしイランで大きな政治変動が起きれば、中国が現地で進めてきた一帯一路の関連事業やエネルギー協力は、契約の再交渉を迫られたり、最悪の場合は中断に追い込まれたりする可能性があると指摘されています。

 さらに、イラン問題はそれだけで終わりません。より広い地政学的な連鎖反応を引き起こす可能性があります。仮にアメリカが中東で戦略的な優位を握れば、外交や軍事のリソースを、これまで以上にアジア太平洋へ振り向けられる恐れがあります。アナリストは、そうなれば中国当局は台湾海峡や南シナ海で、より強い戦略的圧力を受けることになると見ています。

 中国にとって、エネルギー安全保障はとても厄介な問題です。中国は世界でも最大級のエネルギー輸入国である一方、工業と製造業の規模が巨大で、エネルギー価格の変動に極端に弱い体質でもあります。国際原油価格が上がり続ければ、国内の生産コストが押し上げられるだけでなく、インフレを通じて経済の安定そのものを揺さぶりかねません。

 だからこそ、今回の中東の緊張の中で、中国当局は短期的には供給が途切れるかもしれない不確実性に備えつつ、長期的には自国のエネルギー戦略そのもののリスクを見直さざるを得なくなっています。世界の政治が駆け引きで動く中、どうやって安定したエネルギー源を確保するのか。いま、中国の政策担当者に突きつけられている大きな課題です。

(翻訳・藍彧)