中国の国会に相当する「両会」が開幕した3月4日夜、山東省済寧市の小南門付近にあるガスステーションで大規模な爆発が発生しました。轟音とともに現場には巨大な火柱が立ち上り、黒煙が立ち込めました。その破壊力は周辺の店舗にも波及し、連鎖的な爆発を引き起こしました。突然の恐ろしい光景に、地元の市民は「頭が真っ白になり、ミサイルが飛んできたのかと思った」と恐怖を口にしています。

 事故後の当局の対応は、世間から直ちに強い疑念を抱かれています。現在に至るまで出火原因や死傷者の公式発表はなく、翌5日には大量のブルーシートで100メートル以上に及ぶ被害現場を厳重に封鎖しました。こうした物理的な現場の隠ぺいと並行し、インターネット上でも厳格な情報統制が進められています。至近距離で撮影された鮮明な動画は投稿後わずか数分で削除され、関連する議論やコメントも次々と消し去られているといいます。

 済寧市政府の「説明より先にまず隠ぺいする」対応の背景には、特殊な政治事情があります。3月4日は「両会」の開幕日であり、年間で最も重要な政治行事を迎えた各地方政府には、「社会の安定維持」という至上命題が突きつけられています。安全確保と世論統制のプレッシャーの下で、地方幹部の最優先課題は市民の不安を和らげることではなく、不都合な事実を力ずくで揉み消すことになってしまうのです。徹夜で張られたブルーシートは市民の視線を遮断するだけでなく、権力が構築した目に見える「防護壁」だと言えます。焼け跡が見えず、動画も検索できなければ、災難は起こらなかったことになり、役人の保身が図られるかのようです。

 当局の強硬な隠ぺい工作に対し、ネットユーザーからは非難の声が沸き起こっています。「すべて違法建築ではないか。一体誰の責任なんだ」と憤る声や、「死傷者ゼロでも連絡が取れない人がいるはずだ」「シートで囲えば火事がなかったことになるのか」と呆れる声が上がっています。海外のソーシャルメディアでも、体制維持のためのこれらの「壁」は、真相を締め出して民衆を騙すだけでなく、災害の惨状や不正な取引までも「平穏無事」という幻想で包み込もうとしていると皮肉られています。

 済寧での事件の数日前には、湖南省湘潭市でも死傷者を伴う爆発が起きています。公式発表では、3月1日夜に店舗のプロパンガスボンベが爆発し1人が死亡、5人が負傷した「偶発的なガス漏れ」とされています。しかし、海外の中国時事インフルエンサーに寄せられた情報によると、この事件は地元幹部の家族を狙った意図的な報復行為の疑いがあります。深刻な社会矛盾や治安悪化への懸念を隠ぺいするため、当局が単なる事故として発表したと見られているのです。

 偶発的な事故であれ人為的な事件であれ、近年、中国全土の各地でガス爆発事故が頻発しており、市民の安全を常に脅かす深刻な問題となっています。過去数年を振り返っても、類似の惨劇は枚挙にいとまがありません。記憶に新しい2024年には、遼寧省大石橋市や河南省南陽市でガス漏れによる引火爆発やガス管の破損による激しい爆発が相次いで発生し、計数十人が負傷しました。また、2023年6月には寧夏回族自治区銀川市の焼肉店でLPガスの漏洩による爆発が起き、31人の命を奪うという近年稀に見る大惨事となりました。

 強権的に人々の口を封じ込めることは、時に川の氾濫を力ずくでせき止めるよりも危険な結果を招きます。頻発する爆発事故は、情報封鎖といううわべを取り繕う壁を引き裂いただけでなく、中国の末端社会における公共安全管理の背後にある、穴だらけで構造的な深い病理を浮き彫りにしています。ネットユーザーが怒りを込めて指摘した「違法建築」は、まさにこの病理の縮図と言えます。第一に、過去数十年にわたる急激な都市化の過程で、多くの古い市街地や都市部に取り残された旧市街のガス管網は著しく老朽化し、配管のレイアウトも無秩序であり、これが爆発の根本的な火種となっています。第二に、経済の冷え込みが続く中、少なくない小規模な飲食店が経営コストを削減するため、使用期限切れで未検査の粗悪なガスボンベを違法に使用したり、ガス設備を無断で改造したり、さらには義務付けられている警報装置を設置していなかったりするケースが後を絶ちません。

 さらに致命的な要因は、安全管理を監督する行政システムの機能不全にあります。現場レベルの消防や安全検査は形骸化していることが多く、権力を利用した不正な利益追求や癒着の温床にすらなっています。日常の「安全点検」は書類上だけの形式的な手続きに成り下がり、重大な事故が発生して中央指導部の逆鱗に触れた時にのみ、地方政府は一時的な「一斉取り締まりキャンペーン」を行います。しかし、ほとぼりが冷めれば、隠れた危険は再び放置されたままになるのです。

 2020年に浙江省温嶺市で20人の命を奪ったタンクローリー爆発から、今回の済寧の街中に立ち上った巨大な火柱に至るまで、この一連の痛ましい犠牲の裏には、決して忘れてはならない血の教訓が刻まれています。巨大な爆発音が鳴り響くたびに、ブルーシートで焼け跡を隠ぺいしたり、ネット上で躍起になって動画を削除したりするばかりでは意味がありません。いかにして行政システムの欠陥に正面から向き合い、長期的な責任追及と監督の仕組みを構築し、市民に安全で透明な生活環境を提供していくか。それこそが、当局が情報統制の「壁」で覆い隠すことのできない、真に問われている課題なのです。

(翻訳・吉原木子)