近年、経済環境が悪化する中で、一部の人々が失業や賃金未払いの苦境に立たされています。未払い賃金の支払いを求めても解決に至らず、自暴自棄になって社会への報復として極端な手段に走り、公共の安全を脅かす事件が頻発しています。最近広く注目を集めた海南省海口市の火災、山西省の二広高速道路における重大な交通事故、そして浙江省嘉興市で発生した道路への釘撒き事件の背後にも、こうした社会不安の影が潜んでいます。

 2月23日の夜、海南省海口市龍華区解放西路の建物で火災が発生しました。その後、消防隊の必死の消火活動により火は消し止められ、公式発表では死傷者は出ていないとされていますが、現場は非常に惨憺たる状況でした。目撃した市民によると、建物の屋上から炎が上がり、黒煙が周囲に広がり、強い焦げ臭さが漂っていたといいます。当日の夜、周辺道路では厳重な交通規制が敷かれ、通行車両は迂回を余儀なくされました。

 事件後の、インターネット上では、この火災は地元の清掃員に対する長期的な賃金未払いと関連があるのではないかという憶測が飛び交いました。ネット上で拡散された動画には、火災現場の近くで複数の清掃員が「もう3ヶ月以上も給料をもらっていない」と涙ながらに訴える姿が映し出されていました。

 同様に、1月25日にG55二広高速道路の山西省楡社区間で発生した多重衝突事故も、社会への報復という人為的な要素が絡んでいると噂されています。当時の現場は目を覆うばかりの悲惨な状況でした。少なくとも35台の車両が次々と衝突し、多数の乗用車や大型トラックが路肩に横転し、道路上にはおびただしい数の破片が散乱していました。大型トラックの下敷きになって完全に押し潰された乗用車があったほか、一部の車両は激しく炎上し、現場には黒煙が立ち込めていました。

 その後、山西省の交通警察は事故による負傷者は3名のみでいずれも軽傷であると発表し、公式メディアも冬の雨や雪、路面凍結といった悪天候が主な原因であると示唆しました。

 しかし、現場の凄惨な状況を目にした多くのネットユーザーは公式発表に疑問を呈し、関係当局に対して、路面状況が危険だとわかっていながらなぜ速やかに道路を封鎖しなかったのかと詰め寄りました。さらに、あるネットブロガーは、この重大事故の実際の死傷者数は公式発表をはるかに上回っており、惨事を引き起こした直接の原因は、賃金未払いに恨みを抱いた何者かが社会への報復として故意に高速道路にエンジンオイルを撒いたことであると暴露しました。

 この情報は世論の激しい憤りを引き起こしました。多くのネットユーザーが「恨みがあるなら当事者に言うべきだ。高速道路にオイルを撒くなど言語道断であり、社会の底辺層同士で傷つけ合う行為だ」と心を痛め、このような現象は一部の地域における社会秩序の崩壊と、社会的弱者の生活の困窮を反映していると指摘しています。

 類似した極端な腹いせ行為は浙江省嘉興市でも起きています。昨年12月30日夜、嘉興市亜太南路と余歩路の交差点付近に大量のネジ釘がばら撒かれ、約100台の自動車がパンクしました。ドライバーはやむを得ず車を降りて釘を拾い、夜7時から10時頃まで深刻な渋滞が発生しました。

 交通警察はトラックからの不注意な落下と説明しましたが、事情に詳しい人物の暴露によれば、実はかつて嘉興市内で出稼ぎ労働をしていた男性による意図的な犯行でした。彼は工場から約9万円(4000元)以上の賃金を未払いにされ、労働争議でもたらい回しにされていため、怒りのあまり釘を撒いて鬱憤を晴らしたのです。男性は逮捕されましたが、家族によれば、すでに秘密裏に懲役8年の実刑判決を受け、裁判中は家族の傍聴や弁護士の依頼さえ許されなかったといいます。

 嘉興市の事件は決して特異なケースではなく社会的弱者が合法的に権利を主張する際の大きな壁を浮き彫りにしています。正規の法的手段に訴えることは、往々にして重い代償を意味します。第一の壁は膨大な時間です。労働争議や労働訴訟には数ヶ月以上かかり、その間も家族を養う必要があります。第二に、高額な弁護士費用と厳しい立証責任が、資金力のない労働者をさらに追い詰めます。さらに致命的なのは、労働基準監督署などの行政機関に介入を求めても、形式的な対応に阻まれ部署間でたらい回しにされることが多い点です。こうした社会制度的な救済の機能不全は彼らの忍耐と希望を失わせ、「どこに助けを求めても無駄だ」という深い絶望状態へと陥らせ、最終的に一部の人々を感情の暴走や極端な行動へと追いやっていくのです。

 痛ましいのは、社会的なセーフティネットが機能不全に陥り感情が崩壊した際、無差別に社会へ報復しがちな点です。高速道路にオイルを撒き、幹線道路に釘を撒き散らす行為は、「弱者がさらに弱い者へ刃を向ける」悲劇的な構図を示しています。

 社会学や心理学の観点から見ると、この「社会的弱者同士の傷つけ合い」は、経済格差と貧困、秩序の低下と殺伐とした空気を深く反映しています。弱者が生きることを模索する中、人々の寄り添う心は希薄化しています。加害者は不公平に直面した時、社会全体から見捨てられたと感じ、それが先入観による病的な偏った考え方を生み出し、無関係な普通の人々を、仮想上の敵とみなすようになります。自らは搾取する権力に対抗する力を持たないため、最も無防備な一般大衆に対して残酷な手段に出るのです。こうした極端な報復は、自身の窮状を解決できないばかりか、多くの無実の市民を危険に巻き込み、最終的には社会全体への信頼が失われ、誰もが危険に怯える悪循環に陥るという、負のスパイラルを作って行くのです。

(翻訳・吉原木子)