経済が低迷を続ける今日、北京・上海・広州・深センなどの大都市でさえ苦戦を強いられている一方で、中小都市はすでに深刻な不況に陥っています。
債務と土地 高レバレッジモデルの終焉
中国の地方経済がここ30年で広がってきた道筋を突き詰めると、土地区画と借金をテコにした成長でした。1994年の分税制改革で、税収の大きな取り分は中央政府に集まりましたが、地方政府は教育や医療、インフラ、社会保障など多くの支出を引き受け続けました。収入と支出のズレが長く埋まらないなか、各地は土地を売って企業を呼び込み、不動産を回し、インフラを積み上げるという路線へ傾いていきます。
このモデルは2000年代に入って急速に膨らみました。地方政府の土地使用権の売却収入は、2000年には約3600億円(600億元)に届かない規模でしたが、2021年にはピークの約197.6兆円(8.7万億元)まで跳ね上がり、地方財政の柱になりました。地方政府はまず工業用地を低価格で売却して工業団地を建設し、その後不動産開発を通じて地価を引き上げることで、「土地で収益を生み出す」循環を回す、という形です。
しかし、この循環は住宅価格と地価が上がり続けることが前提でした。2021年以降、不動産市場が急速に冷え込み、デベロッパーの土地取得意欲は一気に落ちます。2025年1月から11月の全国の売地収入は約65.9兆円(2.9万億元)で、前年同期比で10.7%減となり、2021年のピークの3分の1まで縮みました。
上海財経大学金融学院の姚洋院長は、2025年8月7日に澎湃新聞の取材を受けた際、「地方政府の収入で、不動産に代わる産業はまだない」と指摘しました。ここに、いまの地方財政の根っこが出ています。代わりのエンジンがないのに、古いエンジンはもう回らないのです。
土地の売却に頼ってきた都市ほど、冷え込みを先に感じます。公務員の成果給が削られ、市政プロジェクトは延期され、場合によっては中止に追い込まれます。インフラ投資も目に見えて縮みます。かつて不動産は地方経済を支え上げましたが、いまは逆に、その急所を締めつける存在になっています。
都市投資会社、隠れた債務と極端な歳入創出
土地財政が最盛期だった頃、多くの地方政府は都市投資会社を通じて大規模な借金を重ねて拡張してきました。都市投資会社は名目上は企業ですが、実際には地方政府の信用が後ろ盾になっているため、銀行から融資を受けやすく、さらに債券発行で資金を集め、政府の支出を支える役割も担ってきました。
しかし、こうした借金は中央から正式な地方債とは認められず、長いあいだ「隠れ債務」と呼ばれてきました。2024年末時点で、全国の地方の隠れ債務残高は約240兆円(10.5万億元)に達するとされています。地価が高かった頃は、新たに売った土地の収入で返済を回せましたが、いまは売地収入が急減し、多くの地方政府は利息の支払いだけでも苦しくなっています。
債務の重圧のなかで、一部の地域では目を疑うような「非常手段の増収」に動き始めました。
2021年10月から12月にかけて、河北省霸州市では15の郷鎮の罰金・没収収入が15億円(6718万元)に達しました。
2022年には、陝西省榆林市で個人商店がセロリ2.5 kg(5斤)を売ったとして、約150万円(6.6万元)の罰金を科されました。
2025年7月には、山東省臨沂市で飲食店が何気なく投稿した短い動画が違法広告と認定され、1000万円(45万元)の罰金を科されました。
これらは単なる例外ではなく、地方財政が「飢えに目がくらむ」状況の縮図であり、地方政府の視線が、小規模事業者や一般市民へ目を向き始めています。
中央政府もリスクを感じ取っています。2025年11月、中国財政部は突如として「債務管理司」を設置し、国内債務と対外債務の管理を統括し、地方の隠れ債務の監視と解消を強める役割を担わせました。金融界では、中央が地方の財政と債務の統制を強め、システム的なリスクの噴き出しを防ごうとしている動きだと広く受け止められています。
不動産の終焉 雇用の連鎖が崩れていく
不動産の縮小が打撃を与えるのは、政府の財政収入だけではなく、より深刻なのは雇用です。ここ20年、中国では不動産を中心に、巨大な雇用の連鎖がつくられてきました。上流には鉄鋼、セメント、建材、塗料、化学工業があり、下流には内装工事、家具、家電、物件管理、物流、小売りまで広くつながっています。
ところが不動産が失速すると、この連鎖は一気に弱り、全体が崩れるように落ちていきます。2021年から2024年にかけて、建設業の出稼ぎ労働者は約1300万人減り、不動産分野の直接雇用は600万人減りました。建設業全体の雇用も1000万人減り、建材や製造業の雇用は1200万人減少しました。さらに関連するサービス業でも400万人の雇用が減ったとされています。
これは、数千万世帯の収入が押し下げられ、消費する力が落ちたことを意味します。その結果、中小都市の商業環境はさらに苦しくなります。街の店は閉店が増え、夜に明かりがつく店舗は目に見えて減っていきます。かつて不動産に支えられていた地方経済は、いま静かに冷え込み、停滞の色を濃くしています。
人が去り、街が空になる
財政の引き締めと産業の衰退、その二つに同時に押しつぶされる形で、中小都市はいま「人口収縮時代」に入っています。
まず、最も動かないのは公務員の層です。公務員の仕事は地域に根ざしていて、基本的に地元に残る人が多いです。だからこそ、公務員からの需要を取れる飲食店やホテル、会議・イベント関連の会社は、なんとか持ちこたえられます。しかし、街全体の勢いは明らかに落ちています。
次に、もう少し状況が複雑なのが、準公務員とも言える教師と医師の層です。人口流出と出生率の低下が重なると、町や村の学校では全校生徒が40人にも満たないのに、教師の定員は100人以上というケースが出てきます。県の病院でも外来が減り、難しい手術は大都市へ流れ、産科はとくに閑散としています。医師がSNSの身近なつながりで「妊婦さんを紹介してほしい」と呼びかけるほどだ、という話まで出ています。
こうなると、人材の構造は逆向きの淘汰が進みます。能力があり、向上心のある若い医師や教師は大都市へ移っていきます。残る人は安定やゆとりを優先し、仕事の負担は軽くなる一方で、前に進もうとする力は弱くなりやすいです。
これは悪循環を生み出します。優秀な人材流出し、サービスの質が下がり、魅力が薄れ、人口流出が加速します。
地方政府も、手を打たないわけではありません。中西部の一部の省では、人口が5万人に満たない県城の統合を試験的に始め、公務員についても「退職3人に対して新規採用1人」あるいは「出ることはあっても入れない」といった形で、ゆっくり縮めるやり方が取られています。機関や職を一気に切るのではなく、10年から20年かけて段階的に整理していく構えが見えます。
しかし、一般市民にとって、人生に20年が何度もあるわけではありません。去るか留まるか、正解はなく、違うのは代償の形だけです。けれど一つだけははっきりしています。土地財政の波が引いたあと、中国の中小都市の運命は、いま静かに書き換えられています。
(翻訳・藍彧)
