中東で衝突が起きたあと、複数のクルーズ船が湾岸地域で足止めされています。ドバイなどに停泊していた6隻のクルーズ船では、乗客およそ1万人が船内にとどまったままとなり、下船できない状態が続いています。

 本来は2月28日にドバイを出港する予定だったクルーズ船「MSCエウリビア」も、ドバイ港で足止めされることになりました。この船には約5000人の観光客が乗っており、そのうちおよそ200人が中国人観光客だとされています。北京時間の3月5日の時点でも、これらの観光客はなお中国へ戻ることができていません。乗客の話によると、船内の生活や食事は今のところ大きな問題はないものの、ツアー客には高齢者が多く、一部では薬が足りなくなる事態も起き始めています。

 北京時間の3月5日、やむを得ずドバイに足止めされている中国人女性観光客の1人は、「今は航空券がまったく取れず、約200万円(10万元)を出しても帰国便のチケットは手に入らない」と話しました。

 2月末、アメリカとイスラエルがイランに軍事攻撃を行い、その後イランも地域内の標的に報復攻撃を実施しました。これを受けて、湾岸地域の複数の国が領空の閉鎖や飛行制限を発表しました。ドバイ、アブダビ、ドーハといった主要な航空ハブでは大量の便が欠航となり、多くの国際旅行者が現地で足止めされています。

 データによると、わずか数日間で中東関連のフライト数万便に影響が及び、そのうち2万便以上が欠航になりました。これはコロナ禍後、世界の航空業界で最も深刻な運航混乱の一つとなっています。

 多くの中国人観光客にとって問題は、すでに予約していた便が欠航になったことだけではありません。帰国ルートそのものが一気に減り、航空券がほぼ取れなくなったことが、さらに深刻な問題になっています。

 フライト追跡プラットフォームのデータによると、3月初めの1週間だけで、中東関連の便およそ1万6000便が欠航となりました。さらに、中国と中東の間でもともと予定されていた925便のうち、230便が取り消されたとされています。これにより、本来はドバイやドーハを経由して中国へ戻るはずだった多くの旅行者が、ドバイなどで足止めされることになりました。

 上海の陳さんは、家族とともにドバイで乗り継ぎをしていた際、予定していた便が突然取り消されたといいます。彼女は、空港が閉鎖されたあと、ひたすら便の変更を試みるしかなかったと話しています。しかし、空域が再開されなければ、このまま待ち続けるしかない状況だといいます。

 足止めされた多くの中国人観光客が口をそろえているのが、いちばん苦しいのは航空券の確保だという点です。運航便が急減したことで、わずかに残っている便もすぐに満席となり、航空券の価格も一気に跳ね上がりました。

 もともとは数千元だった航空券が、数万元まで高騰してもなお手に入らないという声も出ています。中には、トルコや東南アジアなど別の国を経由し、遠回りして中国へ戻らざるを得ない旅行者もいます。

 SNS上では、足止めされた人たちが次々に動画や助けを求める投稿を出しています。航空券予約サイトで何度も便の情報を更新しても、ずっと「空席なし」と表示されるだけだという声もあります。さらに、一部の第三者プラットフォームでは、通常時をはるかに上回る高額航空券や、いわゆる転売チケットまで出回っているとの指摘も出ています。広州出身の観光客は、最終的に約60万円(3万元)の航空券を買い、イスタンブールを経由して帰国するしかなかったと話しています。

 2月28日には、中国語の航空券予約サイトで、なんと数千万円台に達する超高額航空券まで表示されていました。現在のところ、実際にその価格で購入した人がいたかどうかは確認されていません。

 その一方で、一部の空港では安全上の不安も高まっています。報道によると、衝突が激化する中、湾岸地域の複数の空港で爆発音や防空警報が伝えられ、ターミナルの近くで煙や火災が確認されたケースもありました。こうした状況が、欠航の拡大と旅行者の足止めをさらに深刻にしています。

 北京時間の3月7日、ドバイで足止めされている中国人観光客の1人が動画を投稿し、こう語りました。
 「防空警報が鳴った。私たちは、さっき飛行機から降ろされたばかりだ。今朝4時に出発し、車で1時間かけて空港に来て、手続きに2時間、保安検査に2時間かかった。やっと飛行機に乗れたのに、座って10分もしないうちに全員が降ろされた。空港の近くで爆発があったらしい。今もここで大勢の人が搭乗を待っている」

 足止めされる旅行者が増え続ける中、各国政府や航空会社も、臨時便を手配して退避支援に動き始めています。一部の航空会社は、限られた規模ではあるものの、自国民や足止めされた乗客を優先的に帰国させる特別便の運航を発表しました。エミレーツ航空、エティハド航空、フライドバイなども、少しずつ運航を再開していますが、全体の輸送力は平常時を大きく下回ったままです。

 アラブ首長国連邦(UAE)の民間航空当局も、現地に足止めされた旅行者に対し、宿泊、食事、便の変更などの支援を行うと発表しました。報道によると、UAE国内だけでも、2万人を超える旅行者が今回の運航混乱の影響を受けています。

 実際のところ、この突然の航空混乱は中国人観光客だけの問題ではありません。中東の複数の国が領空を閉鎖したことで、世界中で数十万人規模の旅行者に影響が広がっています。AP通信によると、衝突の発生後、多数の国際便が欠航または迂回を余儀なくされ、数十万人の旅行者が足止めされるか、予定の変更を迫られました。

 国によって、足止めされた人数にはかなり差があります。たとえば、一部メディアは、宗教巡礼のためにサウジアラビアを訪れていたインドネシア国民およそ5万8000人が現地にとどまっていると伝えています。

 一方、ドイツ人観光客も約3万人が、中東から出られない状況に置かれていると報じられています。フランスやイギリスなどヨーロッパ各国でも、多くの旅行者がドバイや周辺地域で足止めされており、一部の政府は緊急退避計画の発動に踏み切っています。

 航空業界の関係者によると、今回の混乱がここまで広い範囲に及んだのは、湾岸地域が長年にわたり、世界の航空ネットワークの重要な中継拠点となってきたからです。ヨーロッパとアジアを行き来する多くの便がこの地域で乗り継ぎを行っており、ひとたび空域が閉鎖されれば、その影響は一気に世界へ広がります。

 コロナ禍後、中国からヨーロッパへ向かう直行便は大幅に減りました。そのため、多くの中国人旅行者はドバイやドーハを経由してヨーロッパへ向かうしかなくなっていました。最近、これほど多くの中国人観光客がドバイなどで足止めされる事態になった背景には、こうした事情もあります。

 3月8日のドバイ国際空港では、3つのターミナルがほぼ通常どおりの運営に戻り、数分おきに航空機が離着陸していたとされています。

 各国が運航再開と退避支援を急いでいるものの、航空の専門家は、完全な正常化にはなお時間がかかるとみています。便の再調整は非常に複雑で、安全上のリスクもまだ完全には消えていないため、運航の回復はゆっくりしたものになる可能性があります。

 ドバイ空港の待合ロビーでは、今も多くの旅行者が新たなフライト情報を待ち続けています。

 多くの一般の観光客にとって、今回の突然の足止めは、一生忘れられない出来事として心に残るのかもしれません。

(翻訳・藍彧)