2026年に入り、中国の自動車市場は予想を上回る深刻な冷え込みに直面しており、1月と2月の販売台数は大幅に減少しました。長引く景気低迷と将来の収入不安から、消費者は財布の紐を固く締め、様子見の姿勢を強めています。年初にテスラ主導で実質的な値下げブームが起きたものの、市場の反応は依然として冷ややかです。中でも新エネルギー車(NEV)最大手のBYDは、2月の販売台数が前年同期比で4割も激減し、過去6年間で最大の落ち込みを記録しました。業界全体に焦燥感が広がっています。

 販売不振の背景には、膨大な在庫圧力と政策環境の激変があります。公表データによると、2025年末時点で中国の自動車在庫は過去最高の365万台を突破し、そのうちNEVが3分の2を占めています。さらに、2つの重要な政策が自動車メーカーに追い打ちをかけています。一つは、本年1月よりNEV取得税の全額免除政策が半額徴収へと正式に移行し、購入コストが直接的に上昇したことです。もう一つは、バッテリーの新国家基準が施行され、衝突後2時間以内の発火や爆発が厳格に禁じられたことです。業界事情に詳しい王氏によりますと、この新基準は在庫一掃の猶予を与えるため1年以上前に発表されていましたが、市場には未対応の旧基準車がまだ200万台以上残っています。今年7月1日までに売り切らなければ廃棄処分となるため、この極端な在庫処分のプレッシャーがメーカーを窮地に追い込み、資金繰りが悪化したディーラーの倒産や夜逃げを引き起こし、買い控えをさらに煽っています。

 在庫一掃という生き残りをかけた状況下において、自動車メーカーとディーラーはなりふり構わぬ販促キャンペーンを展開していますが、その裏には多くの罠が潜んでいます。当局が表立った値下げを制限しているため、各社はローンなどの金融手段を通じて実質的な値引きを行うしかありません。例えば、テスラが導入した長期低金利ローンに、多くの国産車も次々と追随しました。しかし、あるディーラーが率直に語るように、ワンプライスや無金利といった言葉は巧妙な数字のトリックに過ぎません。実態を見ると、消費者はしばしば様々な名目の隠れた費用に直面します。その筆頭が、実質的なサービスが皆無のまま約6万円から10万円も請求されるローン手数料です。次に、相場より2割から3割高い店舗での任意保険加入が義務付けられていることがほとんどです。さらに悪質なのは、高額な下取り補助金を謳いながら、指定ディーラーの査定士が意図的に旧車の価値を低く見積もり、本来消費者に還元されるべき補助金をこっそりと店舗の利益として回収してしまう点です。うまい話には裏があるという言葉通り、消費者は得をしたと思い込んでいても、実際には幾重にも張り巡らされた罠に陥っています。

 価格競争と販促の罠に加えて、国産の新エネルギー車で頻発する安全上の欠陥や品質問題も、消費者が購入を手控える大きな要因となっています。近年、BYDや理想汽車、シャオミの「SU7」など複数のブランドで、衝突直後に炎上したり、ドアがロックされて脱出できなくなったりする惨劇が次々と明るみに出ています。また、技術が未成熟な高度運転支援システムによる意図しない急ブレーキや追突も度々引き起こされています。販売店経営者の楽氏はこの状況に心を痛めており、一部のメーカーには企業としての最低限のモラルすら欠如していると批判します。利益の最大化を追求するあまり、極端に強度の低いサスペンションやペラペラの衝突防止用鋼材を採用するなど、車両の安全性を軽視しているというのです。そして、頻発する安全事故に直面した際、一部のメーカーが最初にとる行動は、問題を解決することではなく、法務チームを動員してSNSなどでの批判を力で封じ込め、真相を隠蔽しようとすることなのです。

 さらに深刻なのは、購入後のアフターサービスにも罠が張り巡らされている点です。複数の告発によると、多くの国産電気自動車は一定の走行距離に達すると、オーナーに正規ディーラーでの高額な点検整備を強制します。民間の修理工場なら約4000円から6000円程度で済む整備が、正規ディーラーでは約4万円から6万円も請求されることが珍しくありません。整備を拒否した場合、自動車メーカーは車両のGPSと遠隔監視機能を利用し、強制的にシステムをロックして使用不能にしてしまうことさえあります。過去には、ロック解除を手伝った民間整備士がメーカーから位置情報追跡を利用して訴えられ、懲役半年の実刑判決を受けた事例もありました。なお、その際のロック解除費用は数万円から数十万円に上りました。さらに、この件を告発した個人メディアも次々と起訴され、巨額の損害賠償を請求される事態まで起きています。これは単純な経済的紛争の枠を超え、社会に対する深刻な問いを投げかけています。スマートカー時代において、消費者が大金を払って購入したものは、果たして完全な自己所有物なのでしょうか。それとも、メーカーにデータで支配される電子的な足枷に過ぎないのでしょうか。

 このように、販売台数の大幅な減少は表面的な現象に過ぎません。2026年は中国の自動車市場にとって、間違いなく凄惨な大淘汰の年となるでしょう。高止まりする在庫、政策の引き締め、罠だらけのマーケティング、安全上の重大な欠陥、そしてスマート化技術を悪用したデータ独占と不当なアフターサービス。これらが複雑に絡み合い、現在の市場の混乱を生み出しています。幾重もの危機と消費者の信頼喪失に直面する中で、自動車メーカーが車造りの本質に立ち返り、消費者の権利を確実に保護できなければ、今の厳しい冬はさらに寒さを増し、最終的には市場から無情に淘汰されていく運命にあります。

(翻訳・吉原木子)