中国当局が「環境保護」を大義名分に各地で推進している「石炭からガスへ」の転換プロジェクト。その強引な実施が今、多くの農村家庭、とりわけ子供たちが都市へ出稼ぎに行き、故郷に取り残された高齢者たちを、生存の危機に追い込んでいます。

 首都・北京を取り囲む河北省では、冬季の暖房燃料を石炭から天然ガスへ切り替えることが事実上強制されました。その結果、農民たちは高騰するガス代を支払えず、かといって安価な石炭や薪を使うことも禁じられ、極寒の中でただ耐えるしかない状況に置かれています。ネット上に流出した複数の動画からは、現地の村人たちの悲痛な声とともに、「暖房をつける金がない」という理由だけで多くの高齢者が冬を越せず命を落としている現実が浮かび上がります。

 最近、あるネットユーザーが関連動画を多数転載し、「2026年にもなって、中国で人が凍え死ぬとは」と衝撃をもって伝えました。河北省が農民に石炭を放棄させる過程では、常軌を逸した手段が横行しているといいます。告発動画によれば、現地当局はドローンを投入して24時間体制で村の上空を監視し、さらに近隣住民による通報を奨励する「相互監視」制度まで導入しています。煙突から煙が一筋でも上がれば、即座に執行官が駆けつけ、約1万〜4万円の罰金が科されるだけでなく、暖房器具は没収され、高齢者の家の生命線である「かまど」さえセメントで強制的に封鎖されてしまいます。

 当局は「天然ガス設置には補助金が出る」と宣伝していましたが、実際の設置・維持コストは首都・北京よりも割高です。かつて農村では、ひと冬の石炭代は数百元で済みました。しかし天然ガスに切り替えた後は、わずか1ヶ月で約4万〜6万円も請求されるケースが珍しくありません。これは農村家庭にとって天文学的な数字です。動画には、室温が氷点下となり、布団が壁に凍りついている様子が映し出されています。冬が来るたび、静かに命が失われていく。こうした光景は、当局が掲げる「全面的な貧困脱却、全人民の幸福」というスローガンとは、あまりにもかけ離れています。

 「ガスが高いなら使わなければいい、厚着をすればいい」といった無責任な声もありますが、現地の村人たちはそれが不可能だと訴えます。村の上空には常に監視ドローンが旋回し、煙を出せば即摘発されるからです。通報報奨金制度によって、長年の付き合いがある村人同士が互いに監視し合う関係へと変えられました。100世帯以上ある村の中で、実際にガス暖房を使えているのは10世帯にも満たず、その多くは乳幼児がいる家庭だけです。その他の家庭は、氷点下の夜をただ耐え忍んでいます。

 ある村人は、こうした窮状をネット動画で告発し、「多くの高齢者が寒さに耐えきれず亡くなった」と訴えました。しかし投稿から10分もしないうちに当局から電話があり、即時削除を命じられたといいます。「情報は完全に封鎖されています。信じられないなら河北の農村に来てみてください。夜の寒さがどれほどか、身をもって知ればいい」

 さらに衝撃的なのは、煮炊きのための火さえ「環境汚染」として禁じられ、かまどが破壊・封鎖される映像です。ある高齢者の家では、湿気と寒さで布団が壁やベッドに凍りつき、引き剥がすとバリバリと音を立てていました。ある男性は、高速で回転するICカード式ガスメーターを指差し、自嘲気味に語ります。「このペースでは冬を越すのに21万円以上かかる。俺たちのような農民に払えるわけがない。あくどい手口はすべて庶民に向けられている。この辺りでどれだけの老人が凍え死んだか、役人たちは気にしたことがあるのか」

 公開資料によると、2017年以降、大気汚染改善、主に北京の空気をきれいにする目的で、京津冀(北京・天津・河北)エリアにおいて強力な脱石炭プロジェクトが進められました。北京に隣接する河北省の多くの地域が「石炭使用禁止区域」に指定されています。河南放送局のメディア「大象新聞」の試算では、石炭使用時、河北省農村家庭のひと冬の暖房費は約4万〜6万円でしたが、天然ガス転換後は約10万円からと、2〜3倍に跳ね上がりました。

 これは農家の年収の30%から50%を占める水準です。2024年の河北省農村住民の一人当たり可処分所得は約44万円。一方、農村高齢者が受け取る公的年金は極めて低く、2025年に調整された最低基準は月額約3200円にすぎません。「月額3200円の年金で暮らす老人に、ひと冬10万円の暖房費を払え」。これが突きつけられた現実です。

 河北省の冬は過酷で、1月初旬の最高気温は1℃〜5℃、最低気温はマイナス3℃〜8℃にまで下がります。この環境で暖房を奪われることは、高齢者にとって事実上の死刑宣告に等しいと言えるでしょう。

 厳冬の中、ガスメーターの数字が跳ね上がるのを恐れ、震える手でバルブを閉じる老人たち。彼らの頭上に広がる青空は、確かに以前より澄んでいるのかもしれません。しかしその代償として失われたのは、彼らの命をつなぐ部屋の温度でした。暖房という生存の最低条件が、身の丈に合わない「贅沢品」へと強制的に変えられたとき、セメントで封鎖されたかまどを前にしては、「環境保護」という大義名分も、あまりに虚しく響きます。

(翻訳・吉原木子)