12月17日夜、中国・北京の外周を走る高速道路で、一本の長いトンネルが突如として爆発現場と化しました。

 事故が発生したのは、北京を取り囲む首都圏環状高速道路G95に位置する都衙トンネルです。全長は約2320メートルに及び、北京を取り囲む「大外環」とも呼ばれるG95の中でも、交通量の多い重要な区間とされています。

 当時、トンネル内は一般車両と大型貨物車が混在し、交通量が多い状態でした。ネット上で拡散されている情報によりますと、トンネル内を走行していた天然ガスを積載したタンクローリーが追突事故を起こし、その後に出火、続いて爆発が発生したとされています。

 密閉されたトンネル空間の中で爆風は逃げ場を失い、内部を反復して伝わりました。その結果、トンネルの一部構造が損壊し、局所的な崩落が生じ、数十台の車両が巻き込まれたとみられています。

 複数の目撃者は当時の状況について、「ほとんど前触れがなかった」「一気に火が広がった」と証言しています。別のネットユーザーは、この状況を「火を点けられた砲身の中にいるようだった」と表現しました。車両は後退する余地がなく、煙と炎に包まれた状況下で、人が避難することは極めて困難だったといいます。

 ネット上では、この事故により10人が死亡し、29人が負傷したとの情報が流れていますが、これらの数字について当局から正式な発表は出ていません。現時点でも、具体的な死傷者数は公表されていない状況が続いています。

 事故後に流出した複数の映像には、トンネル内部の深刻な被害状況が映し出されています。数十メートルにわたって車両の残骸が散乱し、多くの車は原形をとどめず、歪んだ金属の塊となっていました。大型トラックは骨組みだけを残して焼け落ち、小型車両の中には爆風で横転し、車輪を上に向けたまま重なり合っているものも確認できます。トンネル天井には崩落の痕跡が見られ、路面一帯は焼損した破片で覆われていました。

 映像を見る限り、完全な形を保っている車両はほとんど確認できません。

 河北省在住を名乗る複数のネットユーザーは、事故当時、トンネル内には少なくとも数十台の車があったと証言しています。「人はほとんど逃げられなかった」「火勢が激しく、煙が濃くて方向が分からなかった」といった声も投稿されています。中には、「37歳の親友がトンネル内で命を落とした。遺体は確認できず、骨の一部しか回収できなかった」と書き込むものもありました。

 また、「事故現場の近くに住んでいるが、直ちに現場周辺から離れるよう指示された」「現時点では29人負傷、10人死亡という話が出ている」とする書き込みも見られます。別のユーザーは、「村から電話があり、友人が亡くなったことを知らされた」「多くの車が爆発し、トンネルは崩れ、火は二日間燃え続けた」「反対車線のトンネル内も煙で満ちていた」と述べています。

 事故映像を転載したあるネットユーザーは、この出来事が2012年に北京で発生した豪雨災害を想起させると語りました。当時、浸水したトンネル内で多くの人が命を落としましたが、その後、詳細な状況が十分に公表されなかったことを振り返っています。

 12月18日、中国の動画投稿プラットフォームで活動するブロガー「行者游中国」は、「G95首都圏環状線の都衙トンネルは、今も煙を上げている」とする映像を公開しました。同ブロガーは、動画の削除を求められたものの、これを拒否したとコメントしています。

 一部のネットユーザーは、事故関連の映像を拡散した後、河北省の警察関係者を名乗る人物から削除を求める電話を受けたと証言しています。削除を拒否したところ、罵倒を受けたとする投稿もあります。

 紅星新聞によりますと、12月17日夜、保定市から張家口市へ向かう予定だった女性ドライバーは、19時30分頃、都衙トンネル付近で激しい渋滞に巻き込まれました。車両は完全に停止し、その最中に爆発音のような大きな音を聞き、トンネル方向から煙が立ち上るのを目撃したといいます。その後、警察車両、救急車、障害物除去車両が現場に到着したと証言しています。

 また、澎湃新聞は、河北省のネットユーザーが「野三坡高速トンネル事故」とする映像を微博で転載したところ、12月18日昼、自らを「河北高速交警保定支隊野三坡大隊」と名乗る人物から電話を受け、映像の削除を求められたと報じています。

 そのユーザーが警察番号や氏名の提示を求めたところ、相手は「執法ではないため提示する必要はない」と説明しました。さらに個人情報の入手経路を問われると、通話は一方的に終了したとされています。

 12月19日午後の時点でも、都衙トンネルは通行止めの状態が続いていました。河北省淶水県都衙村の村委会関係者は、「事故は12月17日夜7時から8時頃に発生した」と述べています。淶水県の病院関係者も、「事故による負傷者を受け入れた事実がある」と明らかにしました。

 事故原因について、地元のネットユーザーの中には、「加圧された天然ガスを積んだセミトレーラーだった可能性がある」と指摘する声もあります。

 事故後、中国国内のネット上では、情報公開の在り方を巡る議論が続いています。「深夜でなければ映像を見ることすらできなかった」「検索しても情報が出てこない」といった声のほか、「公式発表が極めて限定的だ」と指摘する投稿も見られました。

 X上では、「人命を重視する社会であれば、これほどの事故が起きれば国全体で追悼が行われるはずだ」「トンネルが崩落し長時間封鎖されたにもかかわらず、公式な説明はほとんどない」「秩序維持が優先され、事実の公開が後回しにされているように見える」といった意見も投稿されています。

(翻訳・吉原木子)