最近、湖北省の襄陽市や宜昌市にある複数の精神科病院で、公立・民間を問わず衝撃的な不正の実態がメディアによって暴露され、社会に大きな波紋を広げています。2025年12月、『新京報』の記者が潜入取材を行ったところ、これらの医療機関が医療保険基金を不正に受給するため、心身ともに健康な一般人を公然と勧誘し、精神病患者になりすませて入院させていた事実が明らかになりました。利益追求の結果、本来人命を救うべき病院が、利益至上主義の搾取ツールへと成り下がり、病室は個人の自由を拘束する「監獄」と化しています。
記者は介護職員の求人に応募するふりをして、湖北省襄陽市の宏安精神病医院と宜昌市の夷陵康寧精神病医院に潜入しました。そこで目にしたのは、多くの入院患者に精神異常が見られないという異様な光景でした。中には老後の世話を求めて入院する高齢者だけでなく、病院内の介護職員や警備員までもが入院手続きを行い、書類上、「精神病患者」に仕立て上げられていたのです。これらをスムーズに収容するため、医師は精神疾患の症状を捏造することさえ積極的に提案していました。また宜昌市では、医療保険の監査の目を逃れるため、病院が定期的にこれらの「偽患者」を一時的に退院したことにし、監査官を欺く隠蔽工作を行っていたといいます。
無理やり精神病患者というレッテルを貼られた人々は、ひとたび入院すれば、病院にとって巨額の利益をもたらす「金のなる木」となります。記者が襄陽市で取材した10軒以上の精神科病院のほぼすべてが、入院医療費の無料化を約束していました。さらに、極めて少額の生活費を納めるだけでよいとし、中には1日約300円(15元)の食費さえ免除するところもありました。唯一の条件は「長く入院し続けること」です。病院は患者情報を悪用し、心理療法や行動療法などの高額な診療項目を架空請求して、国の医療保険基金を不正に受給していました。例えば、襄陽宏安医院のある患者の場合、90日間の入院費用は約27万円(1万2000元)以上に達していましたが、実際に処方された薬代はわずか 約1万1000円(500元)余りで、残りの 約13万5000円(6000元)以上は実態のない架空の治療費でした。
「患者が多ければ多いほど利益が上がる」という歪んだ構造によって、病院内部には強固な利益チェーンが形成されています。医療スタッフの証言によると、新しい患者を一人紹介するごとに、紹介者は 約9000円(400元)から 約2万3000円(1000元)のリベートを受け取ることができるといいます。継続的な利益を確保するため、病院は患者の勧誘に知恵を絞るだけでなく、患者の退院をあらゆる手段で妨害していました。多くの患者はすでに回復しているか、そもそも病気ではないにもかかわらず、長期滞在を強いられています。中には8年から9年も閉じ込められている者もおり、退院は叶わぬ夢となっていました。
さらに衝撃的なのは、病院内部の管理実態です。無理やり引き留めた患者たちをコントロールするため、医療スタッフは暴力を振るうことも厭いませんでした。記者は、患者が平手打ちや蹴りを入れられたり、さらにはホースで鞭打たれるなどの虐待を受けたりする場面を何度も目撃しました。宜昌市の夷陵康寧精神病医院では、言うことを聞かない患者がベッドに縛り付けられ、身動きが取れない状態にされており、その最長記録は丸三日間に及びました。5年間入院しているある患者は、「ここでの生活は監獄と同じで、尊厳のかけらもない」と断言しています。このような絶望的な環境下で、患者が自殺するという悲劇さえ発生しました。病院側は口を閉ざしていますが、「拷問のような扱いに耐えられず自ら命を絶った」という情報は、患者たちの間ではすでに公然の秘密となっていたのです。
事件が広がるにつれ、この惨状の背景にある、より深い問題も浮上しています。医療保険詐欺に加え、多くの国内外のメディアやネットユーザーは、中国の多くの精神科病院が、実際には当局による「治安維持活動」に協力する道具となっていると指摘しています。多くの人権活動家や陳情者、反体制派の人々が、健康であるにもかかわらず強制的に収容され、長期にわたる身体的自由の制限と人権迫害に直面しています。官製メディアはこの話題について深く沈黙していますが、民間の世論はすでに湧き上がっています。
2026年2月4日、湖北省の紀律検査委員会・監察委員会、衛生健康委員会、公安庁、医療保障局などの部門が合同調査チームを結成し、現地入りしました。しかし、大衆の怒りはそれだけでは収まりません。ネット上には監督不行き届きに対する疑問が溢れ、ネットユーザーたちは、カルテの偽造から白昼堂々の保険金詐欺、さらには健常者を「精神病扱い」にする行為に至るまで、これら一連の手口は監督部門の黙認や職務怠慢がなければ到底長くは続けられないと憤っています。さらにある評論家は、「病院を監獄に変え、生きた人間を取引の駒にするような行いは、社会全体を巨大な生き地獄に変えてしまったも同然だ」と厳しく批判しています。
(翻訳・吉原木子)
