全国各地で、外国資本による土地や不動産の取得がこれまでにない規模で広がっています。水源地、森林、住宅地、さらには都市部のマンションまで、外資の購入が急増し、内閣府はついに申告義務の大幅強化に踏み切りました。いったい今、日本で何が起きているのでしょうか。急拡大する外資買収の実態と、その背景にある社会的な不安を追います。

重要エリアで外国資本の土地購入が急増

 内閣府が2025年12月16日に発表した最新統計によると、2024年度までに外国人や外国法人が日本の「重要区域(防衛施設周辺や国境離島など)」で取得した土地・建物は合計3498件に達しました。内訳は土地が1744件、建物が1754件です。国・地域別で見ると、中国関連の取得が1674件と全体の約半数を占め、最も多くなっています。

 重要区域の対象が市街地にも広がったことで、今回の調査では対象となる事例が11万3827件に拡大し、前年比で約6.7倍という大幅な増加となりました。内閣府は、外国資本による土地取得が安全保障上の敏感地域だけでなく、国全体へと広がっている傾向を示すものだと分析しています。

中国人は重要な買い手

 不動産市場では、外国人購入者は長年にわたり無視できない存在でした。特に中国や中華圏からの買い手は、近年の不動産市場における主要なプレーヤーとなっています。

 不動産業界の調査によれば、東京など大都市圏の物件市場で中国人購入者が占める割合は非常に高くなっています。

 ある業界データでは、東京都内の不動産仲介会社の顧客のうち、中国人が約40%を占めるとされています。

 さらに、千代田区、港区、渋谷区といった都心の高額エリアでは、新築マンション購入者の20〜40%が外国人で、その多くがアジア、特に中国や中華圏からの買い手だと見られています。

 全国レベルでは外国人購入者の割合は10%未満とされていますが、主要都市の高級住宅市場に限定すると、その比率は大幅に跳ね上がります。

 複数の調査で、中国人投資家の日本不動産に対する関心は長期間にわたり高水準を維持していることが示されています。中国人投資家を対象にしたあるアンケートでは、旅行制限が解除されれば日本に渡航し物件を見たいと答えた人が約89%に達し、東京都、北海道、大阪、京都が最も人気のあるエリアとなっています。

東京湾岸のタワーマンションを購入する中国人投資家

 東京湾岸エリアのある高層マンションでは、多くのフロアの住戸が中国人の所有になっています。現地の不動産仲介会社によると、この物件では全体の4分の1以上が中国人投資家による購入で占められているとのことです。購入者の中には日本で長く働く専門職の人もいれば、子どもの教育のために移住した家庭、あるいは資産分散を目的とした投資家もいます。都心に近く、交通の利便性が高いことに加え、生活環境が整っていることから、このエリアの物件はここ数年で価格が上昇し続けています。

 購入後は、安定した家賃収入を得るために貸し出す投資家もいれば、休暇や将来のリタイア後の居住用として確保する人もいます。日本政府が申告義務を強化したとはいえ、正当な権利を持つ所有者にとっては、取引を制限するものではなく、透明性を高める措置にとどまっています。

北海道リゾート物件への投資ブーム

 北海道のリゾート地、札幌近郊や人気スキー場周辺では、中国人投資家が別荘や小規模なホテルタイプの物件を購入する動きが広がっています。中国東北部出身の王さんは、北海道に別荘を購入した一人です。家族で休暇に利用するほか、地元の短期賃貸プラットフォームを通じて観光客に貸し出すことで、安定した収益を得られているといいます。北海道では人口流入が続き、観光産業も好調なため、こうしたリゾート物件が投資対象として注目されるようになっています。

 王さんは「日本の不動産所有権制度は明確で、物件を持つ安心感が高い。それに、中国と比べると賃貸収益が安定していることも、日本を選んだ大きな理由だ」と話しています。

申告と透明性を一段と強化

 政府は12月16日、2026年度から外国法人や外国人が日本国内で土地や不動産を取得する際の申告義務を大幅に強化すると正式に発表しました。水源地や森林、住宅地といった重要エリアが海外資本に買われることへの不安が国内で広がる中、市場の透明性向上や国土保全、不動産取引の公平性を確保することが狙いです。

 国土交通省と財務省が公表した内容によると、新制度は複数の側面から外国資本による不動産取得の透明性を高めるものとなっています。

 まず、外国法人の申告範囲を大きく拡大します。2026年4月以降、外国法人が日本国内で大規模な土地を購入する際には、会社の設立根拠だけでなく、実際の支配者や資本の出どころについても申告する必要があります。取締役や株主の過半数が同一国籍の場合も申告対象になります。従来の制度では法人設立時に簡単な情報を記載するだけで、資本の実態を把握するのは困難でした。

 次に、外国人による住宅購入の申告義務も広がります。財務省は外国為替及び外国貿易法を改正し、2026年4月以降は、投資目的か居住目的かを問わず、外国人が住宅を購入した場合、取引後20日以内に政府へ申告することを義務づけます。これまで申告が必要だったのは投資目的の購入に限られていましたが、居住を名目に購入しながら実際には住んでいないケースも多く、現行制度が実態把握に結びついていませんでした。

 さらに、不動産登記制度に「国籍欄」が新設されます。外国人が物件を取得する際、国籍を記載するとともに、パスポートなどの証明書類の提出が求められます。これらの情報は政府の内部データベースに登録され、デジタル庁が一元的に管理する方針です。

新規制下の不動産市場の将来展望

 今回、外国人・外国法人に対して不動産取引時の申告義務を強化したのは、近年の海外資本の動きと社会の関心の高まりに対応したものです。新制度によって政府は外国資本の流入状況をより正確に把握できるようになり、市場を開かれた状態に保ちながらも、監視の透明性を高める狙いがあります。

 中国人購入者にとっては、手続きや申告の負担が増えるとはいえ、日本の不動産の魅力そのものが損なわれるわけではありません。権利関係が明確で安定した所有環境、賃貸収益性、良質な生活水準といった要素は、今後も中国人投資家を引きつけ続ける大きな理由であり続けると見られています。

(翻訳・藍彧)