中国浙江省杭州市に本部を置く金融プラットフォーム「浙江金融資産取引センター(通称・浙金センター)」で、大規模な資金トラブルが発生していたことが明らかになりました。影響を受けた資金規模は約 4,420 億円(約 200 億元) に上るとされています。

 この事件を受けて、全国各地から多くの投資家が杭州に集まり、同センター本部前で抗議活動を続けています。現地では「返金せよ」「借金は返すべきだ」といった声が相次ぎ、治安維持のため多数の警察官が動員されました。現場では一部で投資家と警備側とのもみ合いも発生し、混乱する場面が確認されています。

 浙金センターは、年利およそ 4%の比較的低リスクとされる金融商品を中心に販売していました。過去には「国資系が出資・管理する機関」であることを強調しており、その点が投資家の信頼を集める大きな要因となっていました。

 異変が最初に表面化したのは、2025 年 11 月 27 日でした。複数の投資家が満期を迎えた商品を換金しようとしたところ、出金ボタンが無効化され、「一時的に償還できない」と表示されました。当初はシステム障害と受け止められていましたが、その後、過去の取引履歴まで確認できなくなり、不安が急速に広がりました。

 12 月 5 日以降、投資家らは続々と杭州に集まりました。投資額は数十万元から数百万元に及び、中には 1 口座で 約 1 億 7,680 万円(約 800 万元) を投じていたケースもあったとされています。

 こうした中、浙金センターの実質的な親会社とされる祥源グループの沈保山・執行総裁が説明に立ち、グループ全体で約 1 兆 3,260 億円(約 600 億元) の資産を有する一方、負債は 約 8,840 億円(約 400 億元) を超えており、すでに資金繰りが行き詰まっていることを認めました。

 さらに 12 月 7 日夜、祥源グループ傘下の上場企業 3 社(祥源文旅、海昌海洋公園、交建股份)は相次いで公告を発表し、「浙金センターの問題は自社とは無関係であり、責任を負わない」とする立場を明確にしました。この対応は、投資家の反発を一層強める結果となりました。

 翌 8 日、浙江省地方金融管理当局は調査に着手したと発表しましたが、12 日、13 日になっても抗議活動は収束していません。現場では感情を抑えきれない投資家の姿が続いています。

 公開資料によりますと、浙江金融資産取引センターは 2013 年に設立され、当初は浙江省の財政当局や寧波市国資委系企業、証券会社、銀行などが株主として名を連ねていました。こうした「国資背景」は、同センターの信用の根拠として広く認識されてきました。

 しかし、2019 年以降、国有系株主は段階的に撤退しました。2024 年に金融資産取引業務の資格が取り消された時点で、国資はすでに完全に姿を消していました。その後、経営を引き継いだのは 2018 年設立の「杭州民置投資有限公司」で、主な事業は食品販売であり、金融業との直接的な関連性は乏しいとされています。

 同社は祥源グループとともに観光関連会社を共同保有しており、浙金センターはその後、祥源系プロジェクトを裏付けとする金融商品を大量に販売しました。投資家向けには年 4~5%の利回りが提示されていましたが、実際の資金調達コストは 8~9%に達していたとされ、構造的に持続が困難な状態であったことがうかがえます。

 今回の浙金センターの破綻は、「国資背景」という看板が必ずしも実質的な安全性を保証するものではないという現実を改めて浮き彫りにしました。約 4,420 億円(約 200 億元) 規模の資金が宙に浮いたことで、数万人規模の家庭が直接的な影響を受けています。

 インターネット上では、金融監督体制への不信やリスク説明の不十分さを指摘する声が相次いでおり、中国の金融システム全体に対する信頼低下を懸念する意見も出ています。

(翻訳・吉原木子)