11月27日未明、中国各地の鉄道で施工作業員が列車にはねられる重大事故が続けて発生し、鉄道の安全管理に対する懸念が一気に高まりました。最も深刻だったのは、雲南省昆明市の洛羊鎮駅で起きた事故です。地震計を装備した試験列車が駅構内線路のカーブを通過中、線路上にいた作業員と衝突し、11人が死亡、2人が負傷しました。
新華社によると、事故は午前0時35分頃に発生しました。55537次試験列車が通常どおりカーブ区間を通過した際、線路内にいた多数の作業員がはねられました。紅星新聞の初期報道では、この区間では午前0時50分から4時まで線路交換作業が予定されていたものの、作業員側が命令を受けないまま前倒し,線路内に立ち入った可能性があると伝えられています。
負傷者を受け入れた昆明医科大学第一附属病院によれば、負傷した2人のうち1人は重傷でICUに搬送され、もう1人は胸椎と顎顔面部の骨折が確認されたものの、頭蓋内出血は見られず、命に別状はないということです。
中国のSNS上では、「本来なら避けられたはずの人災だ」と批判する声が広がりました。深夜の駅構内は原則無人であるにもかかわらず、試験列車が通常速度で走行する際、そこにいるはずのない11人が線路上にいたことが問題視されています。「誤って入り込んだのではなく、許可を得ないまま作業に入ったのではないか」「施工許可、事故防止対策、列車見張員などの資格取得の義務付け、作業時間の管理など、鉄道の安全を守る仕組みが機能していない」といった指摘も相次いでいます。鉄道工事は本来、厳格な監督体制と事故防止対策が必要ですが、制度が現場で形式化されていて、深夜に重大事故を引き起こしたとの見方が強まっています。
さらに、昆明の事故が発生するわずか数分前には、四川省でも同様の惨事が起きていました。極目新聞によると、午前0時27分頃、宝成線の徳陽地域を走行していた21016次列車が線路内で点検をしていた2人の作業員をはね、2人ともその場で死亡しました。いずれも派遣契約の作業員で、事故原因は調査中とされています。短時間のうちに2件の致命的な事故が相次ぎ、合わせて13人が死亡、2人が負傷したことで、鉄道システム全体の安全管理体制が改めて問われています。
このような事故は今回が初めてではありません。近年、中国では列車と作業員の衝突事故が繰り返し発生しています。2024年6月には黒竜江省ジャムス市で、貨物列車が線路に侵入した作業員と接触し、6人が死亡。2021年6月には、蘭新線で、k596次列車が作業員をはね、9人が死亡しました。2020年11月の陝西省靖神鉄路では、点検や修繕を行う為の複数の作業員がはねられ、4人が死亡しました。遺族は「現場に管理者がおらず、事故の後の連絡もなかった」と訴えています。2008年には北京発青島行きの列車が無資格の下請け作業員をはね、18人が死亡する惨事も発生しました。こうした事例は、同じ事故が周期的に繰り返されてきた現実を示しています。
専門家によれば、中国の鉄道では特定の時間帯に線路を封鎖し集中点検を行う「天窓修」と呼ばれる制度が採用されているものの、実際には「駅内の連絡係」と「列車見張り員」による二重防護に大きく依存しており、連携不足や手順の省略があれば重大事故につながりかねません。さらに、点検.修繕作業の多くが派遣作業員に委ねられていることもあり、緊急時の判断力やコミュニケーション能力に限界があるうえ、工期短縮のために安全作業手順が圧縮されるケースも指摘されています。
こうした構造的な課題を背景に、鉄道の安全管理を人手中心の「安全確保」から、技術によって補完する「安全確保」へと転換すべきだという声が強まっています。線路侵入自動検知システムや作業員のリアルタイム監視、スマート警報などの技術を導入することで、人為的ミスを最小限に抑えることが出来るとされています。安全確保に対する制度の抜本的な見直しが求められています。
(翻訳・吉原木子)
