中国では出稼ぎ労働者の失業が広がり、貧困に逆戻りする動きが深刻化しています。旧正月までまだ3カ月ありますが、中国当局はすでに大規模な出稼ぎ労働者(農民工)の帰郷ラッシュに備え、特別対策の準備を始めています。特に、農民工が帰郷後に大規模滞留し、再び貧困に陥る事態を防ぐよう指示しています。都市で働き口を失った農民工たちが、いま何を訴えているのでしょうか。経済後退と失業の波が、中国社会に新たな不安をもたらしています。

農民工の滞留と貧困を警戒

 11月13日、中国農業農村部は雲南省で「全国農村職人育成及び貧困脱却人口の就労『二つの安定と一つの防止』会議」を開催しました。「二つの安定と一つの防止」とは「貧困脱却人口の就労規模を安定させること、貧困脱却人口の就労収入を安定させること、失業による大規模な貧困再発を防止すること」を指します。会議では各地域に対し、農民工の帰郷・再流出を促す就業支援の特別行動を継続し、「大規模な帰郷・滞留」の発生を防止するよう求めました。

 公式統計によると、2024年の中国全体の農民工はおよそ3億人、そのうち約1億8千万人が他地域へ出稼ぎに行っています。湖南省衡陽県の状況は代表的です。地元メディアの報道によれば、2025年の旧正月前後には18万3千人の農民工が帰郷するとみられ、そのうちすでに4万人以上が「もう出稼ぎには行かない」と回答しています。沿海地域では求人が減少し、賃金も低下しているため、出稼ぎすることが「割に合わない」と感じているのです。2026年の旧正月後には、帰郷したまま留まる状況がさらに深刻化する可能性があると指摘されています。

 海外中国人権弁護士連盟の責任者である呉紹平(ウー・シャオピン)氏は海外中国語メディアに対し、「中国の農民工という現象が存在すること自体が、中国共産党による農村と農民への制度的収奪の結果だ」と指摘しました。都市と農村の格差があるため、農民は都市へ出て働き、収入を増やすほかありませんでした。

 1990年代後半以降、中国の経済成長に伴い大量の農村人口が都市へ出稼ぎに出ました。しかし中国共産党は、彼らに都市で生活するための社会保障を提供しませんでした。都市の戸籍や子どもの教育環境も確保されず、彼らの多くが都市に定住できませんでした。

 呉紹平氏は次のように述べています。「いま経済が行き詰まり、消費も振るわず、投資も停滞し、輸出も打撃を受けている。その結果、都市部の工場が大量に閉鎖や破たんに追い込まれ、現在の大規模な失業者を生み出している。この失業者の多くが農民工だ。都市で仕事が見つからず、結局は故郷に戻るしかなく、これが現在の大規模な帰郷ラッシュとなっているのだ」

中国共産党の体制下では農民工問題は解決策なし

 米国の財閥系不動産投資会社の社長である蒋品超(ジャン・ピンチャオ)氏は、海外中国語メディアの大紀元に対し、この「帰郷ラッシュ」を引き起こした直接の原因は、外資の撤退によって都市部の雇用が消失したことだと指摘します。「経済全体が縮小し、人々は都市で生きていけなくなり、農村へ帰るしかなくなっている」のだと言います。

 蒋品超氏はさらに「中国共産党が実行できる有効な対策などあり得ない。すべて上級部門に見せるためのパフォーマンスにすぎない」と語りました。
 「そもそも農村には仕事がなく、多くの人が都市に仕事を求めて流入したわけだ。都市には仕事があったからお金を稼げた。しかし今、そのはずの都市でさえ仕事が見つからない。そんな中で農村に戻って、どうやって仕事が見つけるというのだろうか。仕事がない場所で仕事を探すなんて、笑い話にしかならない」

 呉紹平氏も、中国共産党は「スローガンを掲げる」だけで実効性が乏しいと批判しています。
 「農村の雇用を拡大するには資金投入が必要だ。例えば技能訓練には必ず資金が必要だろう?職業技能を訓練して技能を身につけたとしても、それを発揮・活用できる場所が必要だ。しかし、農村に技能を活かせる企業や職場があるのだろうか」

 呉紹平氏は、根本的な問題は中国共産党による農村と農民への制度的な搾取が解消されていない点にあると指摘します。農民が農作業で得られる収入はあまりにも低く、場合によっては赤字になります。医療や年金制度でも、農民に対して構造的な差別が存在しているのです。

追い詰められた農民工は、やがて蜂起する可能性も!

 蒋品超氏は、中国が抱える最大の問題は農村問題と農民問題だと指摘しています。なぜなら、農村人口が依然として中国全体の多数を占めているためです。蒋氏は、もし習近平氏と中国共産党がずっと政権を維持し続ければ、中国の農村では「明末の農民反乱指導者である李自成のような蜂起や、秦末に始まった陳勝・呉広のような大規模な農民反乱が再び起きる可能性が高い」と述べています。「彼らには仕事がなく、生きる術がなれば、死ぬしかない。都市には仕事がなく、農村には耕す田畑もない。つまり追い詰められていけば、生きるためにどうするか。蜂起するしかない。これは大げさではない。すでに兆候が出始めている」

 呉紹平氏は、中国共産党が旧正月の3カ月以上前にこの会議を開き、農民工の帰郷問題に対応しようとしたのは、農民工が将来的政権へ抵抗する存在になり得ると気づいたためではないかと分析します。

 現在の農民工は都市で働く中で技能を身につけ、視野も広がり、「ある意味で新時代の農民」になっていると言います。
「彼らは、中国共産党や現代社会の問題に対し、新たな認識を持ち始めている。そして現在の自分たちの運命や苦境が、中国共産党による搾取、中国共産党の腐敗した仕組み、そして邪悪な体制に由来することを理解しつつある。そうなれば、蜂起の可能性は否定できない」

 「もし彼らが蜂起すれば、農民には二つの特徴がある。一つは非常に団結力があること。もう一つは非常に勇敢であること。江油事件にせよ、海南で起きた農民の抗議活動にせよ、すでに中国共産党は新時代の農民の抵抗意識とその力を目撃している」

 さらに呉氏は、「農民工が蜂起した場合、瞬く間に全国に燃え広がり、中国共産党の支配を揺るがす可能性がある。中国共産党自身も危機が迫っていると感じているはずだ」と述べました。

(翻訳・藍彧)