中国各地のショッピングモールや大型商業施設が、これまでにない厳しい局面を迎えています。上場小売企業の第3四半期決算では、伝統的小売企業20社の利益が急落。今年に入り、北京の老舗百貨・王府井をはじめ、各地で長年続いた百貨店が相次いで店舗を閉鎖しています。SNSには“空っぽの商業施設”を映す動画が次々と投稿され、開業当時の人混みと比較してその落差の大きさを物語っています。

 経済専門メディア「新経銷」が24社の小売上場企業の財務データを分析したところ、売上高と利益がともに増加した企業はわずか2社でした。20社の伝統的小売企業の合計利益は約172億円(7.78億元)にとどまり、前年の約1540億円(69.8億元)から約9割減少しています。老舗百貨からスーパー、スナック菓子チェーン店まで、幅広い業種が厳しい状況に置かれています。

 閉店の動きは全国に広がっています。王府井は今年第1〜第3四半期の売上高・利益ともに大きく落ち込み、業績悪化の中で店舗閉鎖を続けています。北京や深圳、杭州、蘭州など、多くの都市で20〜30年以上続いた百貨店がこの半年の間に次々と閉店しました。日本でもお馴染みの商業施設イオンモールの、北京豊台店も、今年9月末に閉店に追い込まれました。

 さらに、この様な閉店は、商業不動産空室率の上昇に直結しています。「2025中国商業不動産白書」によれば、主要都市のショッピングセンター空室率は14.2%に達し、三線都市では22%を超える案件もあり、警戒ラインとされる6%を大きく上回っています。

 SNSでは、「商業施設」「 活気がない」「 人影がまばら」といったキーワードで検索すると、ここ数日だけでも数十件の“ガラガラ商業施設”動画が見つかります。深圳、杭州、西安、成都、南寧など地域を問わず、客がほとんどいない館内、大量の閉店、暗い通路といった共通の光景が映し出されています。

 たとえば、深圳の宝飾品市場ではかつて平日の午後でも人が押し寄せていましたが、今では人影がまばらです。南昌の大型商業施設では昼食時でも「店内に一人もいない」との投稿があり、複数の飲食店がすでに撤退。杭州の高級複合施設でも空き店舗が目立ち、成都の皮革産業市場では「全国どこも同じ。実店舗は本当に厳しく、人を雇う余裕もない。店主が一人で切り盛りしている」といった声も寄せられています。

 南寧の大型商業施設では開業からわずか3年にもかかわらず、週末の午後でも人影はまばらで、1階アトリウムは空っぽ、2階は半数以上が閉店、上層階はほぼ全店が営業を停止。西安でもかつて西北地域で最も栄えた商圏が活気を失い、地方の商圏では賃料が以前の十分の一以下にまで下落したとの報告もあります。

 では、なぜ老舗商業施設がこれほど相次いで姿を消しているのでしょうか。一部の専門家は、主に三つの要因を挙げています。

 第一に、経済減速による消費力の低下です。IT大手のリストラ、金融業界の縮小、外資企業の撤退などにより、多くの人々の財布の紐が固くなり、北京では消耗品小売総額が11カ月連続で前年割れとなりました。高価格帯の消費がまず削られ、王府井のような高級業界が直撃を受けています。

 第二に、EC業界の急速な台頭です。オンライン化によって価格が完全に透明になり、消費者はより安い代替品を簡単に見つけられます。タオバオの即配、京東の高速配送などスピードと利便性を武器にした新しい小売販売が市場を奪っています。

 第三に、ショッピングセンターの過剰供給です。2024年時点で全国には3万㎡を超える商業施設が6,700件以上存在し、2025年上半期にも120件以上の開業が予定されています。上海は「8万人に1つの大型モール」という開業で、東京の「20万人に1つ」を大きく上回っています。

 経済の低迷、オンライン販売の拡大、そして過度な施設建設という三重苦の中で、伝統的な商業施設は競争力を失い、「閉店ラッシュ」「空室ラッシュ」という形で影響を及ぼしています。かつて、都市の繁栄を象徴した商業施設が次々と姿を消す中、新たな商業モデルが将来の市場を支えられるのか、注目が集まっています。

(翻訳・吉原木子)